抱っこしている最中や高い場所から落ちた、足を滑らせたなどで、骨折したり関節を痛めてしまうケースがチワワには意外と多い。今回はチワワで気をつけておきたい骨と関節に関する病気について、詳しく紹介していこう。
1.膝蓋骨内方脱臼
2.撓骨・尺骨の骨折
3.下顎の骨折
4.前十字靭帯断裂
5.レッグカルベペルテス病
6.環椎軸椎脱臼
7.その他の脱臼
8.その他の骨折
9.骨折・脱臼を予防するためにできること
10.骨折を起こしやすくなる病気もあるので注意
チワワにもっとも多いのは
膝蓋骨内方脱臼
■どんな症状?
本来なら大腿骨の滑車溝にのっているはずの膝蓋骨が、何らかの原因で滑車溝から内側へと外れてしまう状態のこと。程度により症状に違いがあり、跛行が見られたり、がに股気味だったりなどの様子が見られる。
膝蓋骨ってどこ?
膝蓋骨とは膝のお皿のこと。通常四本の靭帯に支えられる形で、膝蓋骨は大腿骨の滑車溝にのっている。膝を曲げたり伸ばしたりした時には膝蓋骨も一緒に動くようになっている。
■外方脱臼との違い
膝蓋骨が膝の内側へ外れてしまうのが内方脱臼であり、外側に外れるのが外方脱臼。チワワは犬種的に内方脱臼が多いといわれている。だが、外傷などが原因で外方脱臼を起こす場合もあるので気をつけておきたい。
■膝蓋骨内方脱臼のグレード
膝蓋骨脱臼はその状態がどのくらいのものなのかによって、以下のような1~4の段階のグレードに分けられている。
・グレード1
手で膝蓋骨の部分を押してみると、膝蓋骨が脱臼するが、手を離すと膝蓋骨は大腿骨の滑車溝の正常な位置に戻る。
・グレード2
膝を曲げたり、手で押すと膝蓋骨が滑車溝から脱臼するが、膝を伸ばしたり、手で押せば膝蓋骨は元の位置に戻る。
・グレード3
常に膝蓋骨が脱臼したままだが、手で押すと元の位置に戻る。だが、その手を離すと再び膝蓋骨が脱臼する。
・グレード4
常に膝蓋骨が脱臼したままで、その部分を手で押しても、元の位置には戻らない。重度の場合は膝が曲がったままとなり、がに股になる。
■先天性と外傷性がある
チワワは先天性が多く、生まれつき滑車溝がない、溝が変形しているなどの異常、靭帯や大腿骨、脛骨の異常などが原因となる。外傷性は事故や足が滑らせたことなどで膝に無理な力がかかり、後天的に引き起こされる。
■膝蓋骨内方脱臼の治療は?
動物病院で触診してもらえば膝蓋骨脱臼かわかる。治療は症状のグレードや原因で違ってくる。手術が必要となるのはグレード2以上だが、グレード1でもほぼ2に近い状態で、骨の成長期である生後11ヶ月以内ならば手術する場合もある。膝蓋骨脱臼の状態が続くと、前十字靭帯や半月板損傷にもつながる。治療について獣医師とよく相談をしよう。
骨が細いからこそ注意!
撓骨・尺骨の骨折
■どんな症状
簡単に言えば、前腕(肘から前足首までの間の骨)の骨折。ソファなどから飛び降りた、足元がつまづいた、滑ったなどの強い衝撃で折れやすい。特に生後7~8ヶ月頃の元気な子犬は、はしゃぎすぎて起こりやすいので注意しておきたい。
■撓骨・尺骨ってどこ?
前足首から肘の部分に位置する2本の骨が撓骨と尺骨。撓骨は2kg以下のチワワであれば幅が4㎜程、尺骨はもっと細くて2㎜弱程。厚みはどちらも1~2㎜程だ。
■撓骨・尺骨の骨折の治療は?
骨折の治療は、基本的には手術を行う。犬の大きさや骨の折れ方、骨折した部分の長さなどを考慮しながら、いくつかある手術の方法を選択していく。骨が細いのでギブスによる外固定法は非常に難しい。
シニアになると多い
下顎の骨折
どんな症状?
歯周病や噛みつきが原因で下顎を骨折してしまうケース。高齢で歯周病が悪化している犬は注意を。程度にもよるが、折れたところから顎が垂れ下がる。片方だけだと見た目にはわかりにくい場合も。痛みと噛み合わせが悪いため、食事がしにくくなる。
■下顎ってどこ?
口の下側の部分。上でも述べているが、折れた場所や程度によっては、見た目だけではわからないこともあり、レントゲンで発見されるケースも少なくない。
■下顎の骨折の治療は?
他の骨折と同様に、治療には手術を行うことになる。骨折の程度や位置を考慮しながら、それに合わせた手術方法を獣医師と話し合って選択していく。下顎の骨折は、歯周病にさせないことが予防に大きくつながる。歯の健康管理をしっかり行うことが大切。
膝蓋骨内方脱臼から引き起こすことも
前十字靭帯断裂
■どんな症状
痛みが出るため、損傷した側の足を上げたままでいたり、歩き方にいつもと違う様子が見られる。同時に半月板損傷を起こしているケースが多い。原因としては、膝蓋骨脱臼から引き起こされる場合や事故などの外傷性のものが挙げられる。
■どこが断裂するの?
膝の関節を安定させるため大腿骨と頸骨をつなぐ靭帯にはいくつかあるが、前十字靭帯とはその中のひとつ。大腿骨の後ろ側から頸骨の前側に位置する靭帯の部分。
■前十字靭帯断裂の治療は?
断裂した状態の程度によっても違ってくるが、治療としては主に手術を行うことになる。手術にもいくつかの方法がある。予算や獣医師の考えなどにより、どの方法で治療を行っていくのか相談しながら選択していくようにしたい。
1歳ごろまでに発症しやすい
レッグカルベペルテス病
■どんな症状
大腿骨頭の一部の血行が悪くなり、壊死を起こす遺伝性の病気。激しい痛みを出すとともに骨が変形してしまう。両足に起こることもあるが、片足に起こる場合が多い。歩き方がおかしい、足をあげる、腰や足を触られることを嫌がるなどが主な症状。
■どこに発症するの?
犬の後ろ足にあたる大腿骨の先端部分が大腿骨頭。骨盤と連結し股関節を形成している部分であり後ろ足の付け根あたり。そのため発症すると足にトラブルを起こす。
■レッグカルベペルテス病の治療は?
根本治療には手術が必要となるが、程度によって運動制限や鎮痛剤などの内服薬を投与して痛みを抑えてコントロールできる場合も。以前は大腿骨頭を切除する手術が一般的だったが、最近は切除せず大腿骨頭を回転させる方法なども行われている。
抱いた時にキャンと鳴いたら
環椎軸椎脱臼
■どんな症状
首の骨の構造が先天的に弱く、安定が保たれないため、それにより神経症状を出す病気。抱いた時に首が動くことで痛みを出すため「キャン」と鳴いたり、歩き方がおかしいなどが主な症状。重症になると全身麻痺を起こし、寝たきりになる場合もある。
■どこを痛めるの?
環椎とは第一頸椎、軸椎とは第二頸椎といわれる首の骨の部分。通常は骨は等間隔で形成されているが、間隔が開いてしまうと首を動かした際に神経を刺激する。
■環椎軸椎脱臼の治療は?
症状の程度によっても違ってくるが、基本的に手術を行う場合が多い。手術の方法にはいくつか種類があり、間隔の開いた第一頸椎と第二頸椎の骨を一体化させ、ずれないようにする方法などが一般的。術後はしばらくの間、安静が必要となる。
その他の脱臼
■脱臼が多い部位
脱臼は関節のあらゆるところで起こる可能性はあるが、チワワで気をつけたいのは、大腿骨が股関節から外れてしまった状態になる「股関節脱臼」や「肩関節の脱臼」、「踵や手首足首の脱臼」、「顎関節の脱臼」などがある。
■脱臼の原因
股関節脱臼は先天性のものもあるが、チワワの多くは後天性によるもの。肩関節、踵や手首足首も含め、高い所からの落下や交通事故などが主な原因になる。顎関節の脱臼は、固いものをかじることを好む犬に多い傾向が見られる。
その他の骨折
■骨折が多い部位
骨折も脱臼と同じように、全身のどの骨も折れる可能性はある。骨折かどうかわかりにくく、レッグカルベペルテス病と勘違いされやすいものに「大腿骨頭成長板剥離骨折」がある。生後7~8ヶ月頃までの子犬に多い病気のひとつ。
■骨折の原因
大腿骨頭の成長板は大腿骨頭の周囲にある。高い所からの落下や交通事故など強い衝撃を受けたことで、その成長板が剥がれて、大腿骨頭が変形することで痛みを出す。他の骨折も物理的にその部分に強い力が加わったことが原因に。
骨折・脱臼を予防するためにできること
◆家の中の運動だけではなく、日光を浴びながら十分な散歩を行う。
◆食事は偏りのないよう、バランスのよい食事を心がける。
◆足元が滑らないか、ソファの高さは大丈夫か、など生活環境を整える。
◆抱いた時に落とさないよう、抱っこの仕方に気をつけておく。
骨折を起こしやすくなる病気もあるので注意
関節や骨を丈夫にさせるためには、バランスのよい食事と運動が大切。
チワワだから家の中の運動だけで十分でしょうと思いがちだが、日光を浴びることはビタミンDが合成されて骨が丈夫になる。
また、日頃から運動や栄養バランスなどに気をつけているのに、最近骨折しやすくなったという場合は、何か病気がかくれている可能性もある。
ガンやホルモンの異常などが原因で骨折や前十字靭帯断裂を起こすこともある。
おかしいと思ったら、詳しく調べてもらうことも大切だ。
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チワワスタイル vol.25『チワワに骨折・脱臼が多いってホント? A:ホントです。』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。