寝て食べて遊んで、働かなくていいんだから、犬は人間と違ってストレスがなくていいな~、なんて思うのは大間違い。飼い主が気づかないうちに犬がストレスを抱えて、心身に不調をきたす、なんてことが起きないよう、犬のストレスについて学んでいこう。
犬の「葛藤行動」と「転位行動」
まず、「葛藤行動」には「葛藤」と「欲求不満」の二つの定義が含まれる。
「葛藤」は2つ以上の動機が同時に存在する場合に起こる。例えば、近づこうか、避けようか、いずれにも決めかねている状態だ。
「欲求不満」はひとつの動機による行動出現が抑えられている場合に起こる。例えば、空腹時に目の前に食べ物があるのに食べられない、未去勢のオスが発情期のメスのにおいを嗅ぎ、交尾したいのに交尾できないといった状況などがそれにあたる。つまり、何かしたいけれど、それができない場合に現れる。
葛藤時や欲求不満時には、回避行動(その対象物を見ない、対象物から離れるなど)や、攻撃行動(唸る、噛むなど)が出ることがあるが、それらに加えて特殊な行動「葛藤行動」も見られることがある。
そして、この「葛藤行動」の中で、「その場の状況に適応するための行動とは、ほとんど関係ない行動」が出ることがある。それらの行動が「転位行動」と呼ばれるものだ。
見慣れている行動が転位行動である可能性も
「転位行動」の出方は犬によっても異なる。かく、噛む、舐めるなどのグルーミング行動として出ることもあるし、あくびをしたり、フセて寝始めるなどの睡眠として出始めることもある。
これらの行動は「覚醒を鎮める効果」があり、興奮状態が終息すると言われている。
転位行動にはこの他にも、目を細める、水を飲む、地面のにおいを嗅ぐ、唇を舐めるなどの行動として現れることもある。
ただ、このように行動だけを羅列すると、犬が日常的によくやっている仕草や行動と変わらないように思えるだろう。
「転位行動」と犬の正常な行動を一見して区別するのは難しいと言われており、それらの行動が出た時の状況や、時間配分などの違いから類推していくのが一般的だ。
また、個体によって転位行動を向ける対象が異なったり(犬自身であったり、たまたま近くにいた人や犬であったりすることもある)、置かれた環境で左右されたり、学習及び、外部刺激の影響を強く受けることもある。
本当にかゆい?それともストレスサイン?
幸いにも、駆虫薬が広く浸透している現代。しかも、自宅やトリミングサロンでこまめにシャンプーをする機会も多いので、ノミやダニが原因で体をバリバリかいているような犬を見かけるようなことはまずない。
でも、寝起きのぼんやりしている時、後ろ足で耳をかいた後に足先のにおいを嗅いだり、首輪まわりをバリバリかいていたり。犬が体をかくシーンは本当によく見かける。犬と暮らす人にとっては、もはや当たり前の生活の一場面とも言えるだろう。
ところが、このあまりにも見慣れた「かく」という行動に、実はストレスサインが潜んでいることが多いのだそう。
日常生活で犬が本当にかゆくて体をかいている時は、意外に少ないもの。例えば、散歩に出かけた直後に、いきなり座り込んでスクラッチグルーミング(後ろ足で体をかく身づくろい)をする犬がいる。こんな時は、向こうから苦手な犬や人が来ているなど、その犬がストレスを感じている可能性が高い。
皮膚疾患などのかゆみを伴う病気を発症していない犬が体をかいている場合、本当に体がかゆいのか、それともストレスの表れなのかを判断するには「いつもはその場面で体がかゆくなったりしていないよね」という、飼い主の日頃の観察力が必要だろう。もちろん、愛犬の性格や気質を熟知することも大切だ。
危険なストレスサインは?
犬のストレスを放っておくと、「常同行動」=(様式が一定し、規則的に繰り返される行動の中で、普通に見られず、目的や機能がはっきりしない行動)が出現する可能性がある。常同行動は環境への不適応の表現とみなされている。
例えば、チワワによく見られるのは、皮膚炎になるまで足などを舐めてしまう行動。ひどいケースでは、繰り返し舐める→患部が赤くなり皮膚炎になる→患部の毛が抜けて肉芽(外傷や炎症により欠損を生じた部分にできてくる、赤く柔らかい粒状の組織)ができる→患部の骨が見えてしまうこともあるとのこと。
「静かに舐めているだけだから、まぁ、いいか」と飼い主は思いがちだが、繰り返しの行動をさせる原因はなんだろう、と考えることはとても大切。
原因は犬にあるわけではなく、犬にストレスを与えている環境や飼い主の接し方に問題があるので、治療する際は飼育環境などの見直しが必要だ。
また、嘔吐や下痢、削痩(やせて著しく体が細くなった状態)、正常を逸した繰り返し行動が見られるなど、飼い主が放っておけないレベルのサインが見られるのも危険な状態。
舐める、かくなどの行動はいつもの生活でもよく見られること。危険なレベルかそうでないかを判断する際、名前を呼んだり、オヤツの袋をカサカサと鳴らした時に、犬がその行動をやめたり、飼い主の方に来るかを試してみよう。それができないようであれば、抗不安薬を処方し、犬のストレスを緩和する薬物治療を行う。
年代別でみる!チワワへの良いストレスの与え方~子犬編~
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チワワスタイル vol.27『正しい知識が愛犬を救う! そもそもストレスってなんだ?』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。