犬びより

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ヘルニアと間違えやすい。犬のDM(変性性脊髄症)という病気について

2019/01/07

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病気の治療法が確立されておらず、予防する手立てもなく、発症したら進行を見守っていくしかないというDM(Degenerative Myelopathy=変性性脊髄症)。しかも、この病気はDMです、と確定診断が出ることはまずない。最終的には死亡後に解剖しないとDMかどうかはわからないのだ。だが、検査技術などは少しずつ進展している。DMの現状も含めて、この難病の話を進めていく。
 

数年かけてゆっくり進行するDM

まずDMの症状について、病気の進行に沿って追ってみる。

・後脚に麻痺が現れる=起立困難、歩行不能
・胸の筋肉が衰える
・前脚に麻痺が現れる
・寝たきりの状態になる
・呼吸がつらくなる

そして、最期は呼吸困難に陥って亡くなることが多い。
 
発症した当初は、目に見える症状は椎間板ヘルニアの症状によく似ている。どちらも後脚の麻痺により、起立時に後脚が開脚してしまったり、歩行時にふらつきが見られたりする。また、年老いてから発症する例が多いことから、老齢による機能の衰えと診断されることもある。

だが、決定的に異なる部分も多い。まず、ヘルニアが突発的に発症するタイプがあることに対し、DMは数年かけてゆっくりと進行していくということ。

ヘルニアやガンなど、脊髄に悪さをするタイプの病気のほうが進行が速い傾向がある。なので、症状がはっきりしている。

気になるのは、発症に伴う痛みだ。ヘルニアを発症した犬は明らかに痛みを感じてつらそうな表情を見せる。ヘルニアは発症当初は強い痛みが出る。でも何日かすると治る、そしてまた痛みがぶり返す。この繰り返し。一方のDMだが、痛みはそれほど感じていないようだ。知覚過敏のようなチクチクとした痛み、刺激は感じていると思われる。

そして何より、ヘルニアとDMの大きな違いは、治療法の有無と、確定診断が出る出ないという点である。ヘルニアの場合、そのグレードによって治療法や回復率が変わってくるものの、最後まで「打つ手」はある。だが、DMの場合は治療という点では打つ手がないのである。

確定診断が出ないこともDMの大きな特徴と言える。症状が出て、それが進行していっても、最後まで「DMの疑い」というもやもやとした状態なのである。ただ、進行していけば臨床的には間違いなくDMであることがわかる。確認ができないだけなのだ。

 

DMは遺伝性の疾患

では現在、どのような手続きを経てDMをより確定診断に近いものに詰めていくのか。それを下の枠内に簡単にまとめた。

DMだと確認されるまで
・臨床症状の推移などで診断
・MRI検査等による画像で診断
・遺伝子検査でキャリアの有無の確認
・死亡後は、脊髄の病理組織検査

数年前と比べると、遺伝子検査の精度がかなり高くなっているので、MRIなども含めてほぼ確定に近い診断を行えるようになった

遺伝性の病気であるから、当然DMの疑いがある犬の親犬や祖父母犬も発症可能性のある遺伝子を持っている

ただ、あくまでもそれは可能性であり、必ず発症するということではない。遺伝子がゼロよりはひとつ、ひとつよりはふたつのほうが当然可能性が高くなるが、ふたつの遺伝子を持っていたとしても、発症せずに老いを迎えて亡くなるということもある。一説によると、コーギーはこのキャリアが実に多いともいう。

では、コーギーのDM発症は増えているのだろうか。

数年前に比べて、すごく増えているという印象はない。ただ、コーギーは日本では飼育頭数が多い犬種なので、それに比例して発症例も報告されているため、他の犬種よりは依然として多い。

また、確定診断ができない理由のひとつは、その病変部にある。DMは脊髄の神経細胞が年齢とともに崩壊し、死んでいく病気だ。この脊髄の神経細胞は、生前に調べることができない。ここにメスを入れるのは、命に関わることだからである。そのため、本当にDMだったのかを調べたいのであれば、亡くなった後にここを開いて病理検査するしかない

しかし、それは現実的ではない。亡くなった後にそこまでする必要を感じる人はそれほど多くないだろうし、何よりDMという病気を見届け、愛犬を送った飼い主がもっとも身をもってDMという病気を感じてきただろうから。その意味で、DMを一番知っているのは飼い主なのかもしれない。

 

病気を受け入れて付き合っていく心構え

確定診断も治療法もないDM。その疑いが濃くなった時、獣医師は飼い主に対してその後、何ができるのだろう。

後肢に麻痺が出て、MRI検査を勧める時に可能性のある病気とその治療法について説明される。ヘルニアであれば手術、髄膜炎であれば薬による治療があり、その他にDMという病気もあります、と。そして、今の症状の経過だとDMの可能性もある、と伝えられる。

DMの場合は治療法も特効薬もなく、病気を受け入れて付き合っていくしかない。少しずつ体が不自由になっていけば介護も必要となってくる。

その上で、どのような生活を送らせるとよいかアドバイスをする。筋力を落とさないように、コンスタントに運動し続けること。できればリハビリもしたほうがいい。

DMの疑いを診断された後も、飼い主は経過を知るために定期検診に訪れることが多いという。その時は診察のあとに病気の現状を伝え、今の状態でできること、有効な介護の方法などの情報をできる限り提供される。犬の介護だけでなく、飼い主に負担のかからない方法、生活の仕方なども伝えているという。 

 

DMの疑問

Q.進行を遅らせる方法はない?
治療法のないDM。サプリや針治療、ハーブを利用した方法などを行うこともあるが、いずれも免疫を高めるといった効果を見込んだものであり、確実に進行を遅らせる効果があるとは言い切れない。適度な運動を続けることで、筋肉の衰えを遅らせることができるという体験者の声はよく聞く。

 
Q.海外で発症の多い犬種はやはりコーギー?
外国だとジャーマン・シェパードやボクサーに報告例が多いが、日本国内ではこれらの飼育頭数は少ないのであまり目立たない。しかし、やはり発症率は高い。また、大型犬の場合は寿命が短く、発症前に亡くなるという例もあると考えられている。

 

DMとともに生きていく

ゆっくりではあるが確実に進行していくDM。残りの日々をどう過ごさせてあげるか。その一点が、飼い主が愛犬にできることなのである。

この中で、筋肉をなるべく衰えさせないことが、病気の進行を遅らせる重要な要素。そのために効果的なのが、やはり車椅子の利用になる。筋力だけでなく、精神的なストレスの軽減も期待できるので導入しない手はないだろう。

もうひとつ。生活の中で愛犬に満足感を与えてあげられているか、という点も重要だ。自分の足で歩く、出かける、おいしいものを食べる。こういった喜びは、愛犬の生活にハリを与えてくれる。同時に、飼い主が後々後悔を残さないためにも大切になってくる。 愛犬を楽しく過ごさせること、飼い主が後悔しないこと。このふたつを満たすための生活をテーマとしたい。

 
 
コーギースタイル Vol.38『変性性脊椎症 DMという病気』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。