知っているようで意外と知らない。犬のホルモン 30の質問【初級編】

体の調子を整え、安定させることで知られるホルモンだがその分泌される器官や役割、働きについてはよく知らない人も多いのでは? ホルモンバランスが乱れると犬の体調に悪影響がある。そんな大事なホルモンについて学んでみよう、
 

 

生命活動に不可欠な内分泌「ホルモン」

犬のホルモン

「ホルモン」という名は耳にするが、働きや役割についてよく知らない人も多いはず。ちなみに焼肉店で見る「ホルモン」は、いわゆる小腸や大腸などの内臓であって、ホルモンそのものを指すのではない。確かに栄養豊富なホルモンを食べればスタミナがつきそうで、あながち「元気を出す源」と考えてもいいのだろうが……。

ホルモンとは簡単にいえば、健康を保つため、さまざまな体の機能を調節している物質のこと。主要な内分泌器官の他に体のいたるところで作られていて、その種類も100種類以上あるといわれている。分泌されたホルモンは体液(主に血液)にのって、そのホルモンが作用する特定の臓器に辿りつき、目的となる作用(排卵する、代謝を促進するなど)をもたらす。

また、犬も人間にもホメオスタシスといって、体の恒常性を保とうとする機能があるが、何種類ものホルモンが関わることで機能している。例えば脱水したとする。すると血圧を調節するホルモン、尿量を調節するホルモン、喉の乾きを高めて水を飲ませるホルモンが関与しているということ。

ホルモンが分泌される器官は小さいものが多く、分泌量もごく微量だが、成長、代謝など、すべての生命活動に関わる大切な物質で、過剰でも不足してもいけない

このようにホルモンは、生きていくために不可欠な物質だが、その作用が乱れた時に、どんな症状があり、どんな対策をとればいいかわからないことが多い。ホルモンの働きなど、基礎的な疑問を紐解いていこう。

 

【初級編】ホルモンってそもそも何?

犬のホルモン

「ホルモン」と聞いて思い浮かべる代表的なものといえば、男性ホルモン、女性ホルモンという人も多いのでは。しかし、ホルモンには数え切れないほど種類があり、分泌される器官もいくつかあるのだ。
 
Q.ホルモンの正体って?

ホルモンは、体の中に存在する内分泌器官から分泌される目に見えない物質で、たんぱく質やコレステロールなどから生成される犬の生命維持に関わる大切なもの。

ホルモンは特定の器官(甲状腺、副腎、精巣、卵巣など)に作用して、さまざまな働きをもたらす。子犬の骨の成長を促したり、メス犬が発情出血をしたり、オスの精巣の中で精子が作られるのも、ホルモンの働きが関与しているのだ。

ホルモンの分泌量はわずかだが体に与える影響は大きい。

 
Q.犬にしかないホルモンってあるの?

基本的には、人間と同じホルモンが分泌されているので、犬特有のホルモンは「ない」とされる。まだ発見されてないだけでわからないのかもしれないが、ホルモンの種類や作用は基本的に人間と同様と考えてよい。ちなみに人間のホルモン異常の代表的な病気に「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」があるが、これは犬には見受けられない。人に多い病気だが、犬には稀なようだ(病気の詳細については後述)。

 
Q.ホルモンにはどのような種類があるの?

成長ホルモン、性ホルモンなど、誰もが一度は耳にしたもの以外にもホルモンにはたくさんの種類があるが、代表的なホルモンを挙げるとしたら、下記のものになるだろう。これらのホルモンは、主に脳の視床下部に接する脳下垂体でコントロールされている。

犬のホルモン

脳下垂体・・・成長ホルモン/甲状腺刺激ホルモン/副腎皮質刺激ホルモン/乳汁分泌ホルモン/抗利尿ホルモン/性腺刺激ホルモンなど

松果体・・・メラトニン/セロトニン

甲状腺・上皮小体(副甲状腺)・・・甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン

副腎・・・副腎髄質ホルモン/副腎皮質ホルモン

消化管・・・消化管ホルモン

腎臓・・・レニン/エリスロポエチン/カルシトリオール/プロスタグランジン

膵臓・・・インスリン/グルカゴン/ソマトスタチン

オス(精巣)・・・男性ホルモン

メス(卵巣)・・・卵胞ホルモン(エストロゲン)/黄体ホルモン(プロゲストロン)

 
Q.脳下垂体から分泌されるホルモンについて教えて

自律神経や情動を司る脳の視床下部から分泌される放出ホルモンと抑制ホルモン。このホルモンの指令を受け、脳下垂体が体の各所にホルモンを分泌させる指令を出す。

分泌される有名なホルモンは、成長を促す「成長ホルモン」、甲状腺を刺激する「甲状腺刺激ホルモン」、副腎皮質ホルモンを刺激する「副腎皮質刺激ホルモン」、乳汁の産生を促す「乳汁分泌ホルモン」、男性ホルモンや女性ホルモンの分泌を促す「性腺刺激ホルモン」、尿量を減らす「抗利尿ホルモン」、授乳や出産、精神的な癒しに関わる「オキシトシン」がある。

 
Q.甲状腺から分泌されるホルモンについて教えて

甲状腺とは、頚部気管腹側左右に1対でくっついている厚みのない楕円形の組織である。その甲状腺の先端にピタッとくっつくようにしてあるのが、副甲状腺で上皮小体とも呼ばれる。甲状腺は代謝を高め、犬の成長や発育を促す重要な役割を持つ。一方、副甲状腺は血中のカルシウムの量を調整して、健康な骨作りを助ける役割がある

 
Q.精巣から分泌されるホルモンについて教えて

睾丸で分泌される主な男性ホルモン(アンドロゲン)は、テストステロン呼ばれるもので、精子を作ったり、生殖器の発育を促したりする。オスは筋肉がつきやすく、メスより大きく成長するのも男性ホルモンの影響が大きい。一般的に7ヶ月~1歳くらいになると男性ホルモンの分泌が活発化し、性的に成熟する。

 
Q.卵巣から分泌されるホルモンについて教えて

代表的なのは、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の女性ホルモン。この他に「男性ホルモン(アンドロゲン)」も分泌される。

エストロゲンは発情前に多く分泌され、排卵に向けて卵胞の発育を促したり、性ホルモンを放出してオス犬の興味を引いたりする。卵胞が成熟すると発情期となり、その後排卵。排卵後の卵胞が黄体に変化する時に分泌されるのが「黄体ホルモン」で、妊娠を助ける働きがあり、仮に妊娠した場合、子宮内膜を厚くするなど妊娠持続を助ける。

 
Q.副腎から分泌されるホルモンについて教えて

2つの腎臓の上に、ひとつずつ存在する器官。副腎は副腎皮質と副腎髄質に分けられる。副腎皮質から分泌される代表的なホルモンは、糖の代謝に関わる「糖質コルチコイド」、体内のナトリウムのバランスをとる「鉱質コルチコイド」、体の男性化を助ける「副腎アンドロゲン」などがある。一方、副腎髄質から分泌される代表的なホルモンは、心拍や血圧を上昇させる「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」や「ドーパミン(ドパミン)」がある。

 
Q.犬にとって大切なホルモンはあるの?

内分泌器官そのものは小さく、そこから分泌されるホルモンも微量。しかし、ホルモンが体に与える影響は大きい。体の中に分泌されるホルモンのうち代謝や発育に関わるものは、体の外から補わないと生命維持に支障をきたすと考えられる。これは人間も犬も全く一緒だ。

ちなみに犬は去勢や避妊で精巣や卵巣を取り除くが、人間の更年期障害のような症状が認められていないことから、体に与える影響は少ないと考えられている。

 
Q.インスリンもホルモンの一種と聞くけど……

インスリンとは、すい臓に付随する島状の器官「ランゲルハンス島」から分泌されるホルモンのこと。体の中に取り込まれた糖(ぶどう糖)を体内で使われるようにするには、ここから分泌されるインスリンの働きが必要となる。

ゴハンを食べて血糖値が上昇すると、インスリンが分泌されて血糖値を低下させる。

インスリンが正常に分泌されないのが糖尿病である。

 
Q.成長ホルモンってどんなホルモン?

骨を形成するなど、健やかな成長に関わる大切なホルモン。成犬になってからも分泌はされるが、特に子犬の成長期には分泌が著しい。

成長期に成長ホルモンが十分に分泌されないと、犬の体が大きくならず体重も増えなかったり、脱毛したりする。逆に分泌が過剰だと成長し過ぎてしまう可能性がある(人間だと「巨人症」「末端巨大症」という病気になる)。

 

精神に影響の出るホルモンがある!?

副腎髄質ホルモンに代表されるドーパミンアドレナリンなどは、交感神経が高まった時に分泌が促進される。

また、脳の松果体というところから分泌させるセロトニンは別名、幸せホルモンと呼ばれ、アドレナリンやドーパミンなどをコントロールして、精神を安定させる効果があるのだとか。

このようにメンタル面のコントロールにもホルモンは深く関わっているのだ

 
関連記事:知っているようで意外と知らない。犬のホルモン 30の質問【中級・上級編】
 
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別
 
Shi‐Ba vol.83『「バランスの乱れ」はよくないと聞くけど意外と知らないその役割とは!?気になるホルモン30の質問』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

-柴犬
-,