どうやら日本犬は、他の犬種に比べると、かなりの綺麗好きらしい。あの爽やかなスポーツ狩りのような毛並み、凛とした態度からも綺麗好きに見えるのだが……。実際のところどうなのか、調査してみた。
1.犬の綺麗好きの性質とは?
1-1 動物の綺麗好きは身を守るため
1-2 短毛で汚れにくい=綺麗に見える日本犬
2.汚れたら犬はどう対処する?
3.今と昔、"綺麗好き"犬の差
4.「人とのルール」で綺麗好きに
5.人が主導の綺麗好きには要注意!
6.犬と人のための綺麗好きQ&A
7.飼い主も心地よいと思う綺麗好きを目指そう
犬の綺麗好きの性質とは?
▼動物の綺麗好きは身を守るため
そもそも綺麗好きじゃない動物はいない。一見不潔そうに見える豚でも実は大変綺麗好きなことで知られている。もし汚い小屋にいるのなら、それは自分で掃除できないから。元来、動物は綺麗好きな生き物なのだ。
動物の綺麗好きにはこんな理由がある。汚い物の代表と言えば排泄物だが、もし自分の排泄物をそのままにすればニオイが周りに出て、それを嗅ぎつけた外敵に狙われる危険がある。また、排泄物の中に潜んだ病原菌に感染することも。つまり、自分の周りを排泄物などで不潔にしておくことは動物にとって命に関わることなのだ。
よくトイレトレーニングで、“サークルの中でもトイレとゴハンの場所は離しましょう”と言われるのは、動物は排泄物がある場所と食事をする場所が近くにあるのを嫌うため。私達がトイレでゴハンを食べないように、犬も排泄物の近くにゴハンがあることを嫌うのだ。
そして、様々な犬種の中でも日本犬は綺麗好きな傾向があるようだ。日本犬は自分の周りを汚さない傾向が強いように感じる。
どうして日本犬が綺麗好きなのか本当の理由は分からないが、考えられる理由のひとつは、猟犬としての歴史が長い日本犬は、自分のニオイが強いと相手に気づかれて獲物が取れない可能性があったということ。
そして2つめの理由としては、改良を重ねてきた犬種と違い、人間が手をくわえていない犬種のため、身綺麗にしておきたい犬本来の習性が強く出ているのかもしれない。
▼短毛で汚れにくい=綺麗に見える日本犬
日本犬は短毛種なのも綺麗好きに見える理由だ。
短毛のため、おしりまわりの毛にうんちがくっつきにくく、また巻き尾はうんちをつけにくい構造。しかも、日本犬はうんちをする時にシッポが下がらないので、おしりのまわりがキレイな子がほとんど。
まれにうんちを体にこすりつける犬もいるが、それは“汚したい”というわけではなく、“そのニオイが好き”“シャンプーなどのニオイが強すぎるのが不快で、自分のニオイをつけたい”、“他の犬のうんちのニオイで自分のニオイを消したい”など様々な理由が隠されている。こういった、排泄物を体につける行為が汚く見えるのは、あくまでも人間側の視点であって、犬には何らかの理由がある。
ただ基本的に不潔にするのが好きな動物はいない。動物にとって“不潔な環境に身を置く”ことは本意ではないのだ。
汚れたら犬はどう対処する?
トイレはほとんど外でし、小屋やケージ内を汚すのが嫌いな日本犬。もし、自分がいつもいる場所が汚くなった場合は、どんな態度をとるのだろうか?
飼い主さんが綺麗にしてくれることを知っている犬なら『片付けて』とアピールする、もしくは汚れている場所を避けようとする。
もし自分の居場所が排泄物や雨水などで汚れていたら、排泄物を毛布で隠したり、そこから離れた場所で寝たり。また、排泄物を嫌うあまり、食糞することも。
体を休める場所が不潔だと、大きなストレスになる。
綺麗な場所で休みたいのは人も犬も一緒。汚い場所がないように整えてあげて。
今と昔、"綺麗好き"犬の差
昔と今を比べると犬も随分綺麗隙になった印象がある。しかし、昔も今も犬の性質は変わっていないようだ。
ただ、現代では都心ほど、室内飼いが増えてきた。
そのため、人と犬が同じ空間に住むには、シャンプーを頻繁にするなど、犬を綺麗にしておく必要性が高まった。
また、昔は草むらやドロだらけの道がたくさんあったが、今は舗装された道ばかりで汚れる機会が少なくなった。
加えて清潔志向の飼い主さんが増えたことから、今の犬のほうが綺麗好きに見えるのかもしれない。
「人とのルール」で綺麗好きに
人間と犬。それぞれがキレイ好きなことは先にも述べたが、綺麗と思う感覚は当然、お互い違う。
例えば食糞、他の動物のウンチを体にこすりつけたり、ドロドロになるまで遊ぶことは人間が汚く思っていても、犬にとっては理由のある行為だ。しかし、一緒に暮らす以上、そのままでは人間が困る。
犬なりに理由がある行為でも、人間が困る行動ならそれは犬に『やめて』と伝えなければならない。
もし、泥遊びが好きな犬ならドロドロの環境には近寄らない、うんちを体につけようとしていたら、転がる瞬間にリードを引っ張って止める。
犬は飼い主さんの反応を見て、人間と暮らすための綺麗ルールを学ぶ。
また、犬は綺麗のルールを学べるがその逆もある。
元来、綺麗好きな日本犬を汚い環境に置けば、その性質も変わってくる。例えばケージや小屋の中をうんちや毛玉が溜まったままにしておけば、それが当たり前になり、うんちを踏んでも気にしなくなってしまう。
敷物、ベッド、寝床などを、抜け毛まみれの不潔な環境にしていたり、ブラッシングを怠って毛が溜まったりすると、ノミやダニがわく危険性がある。そうなれば犬はもちろん、人間が困ることになるだろう。そもそも犬は物事を関連付けて考えることができない。だからノミやダニが出てきてしまっても、犬は周辺の掃除不足やブラッシングが原因とは気がつかない。
さらに排泄物の管理も重要。排泄物を処理しなければ、ニオイが出る。犬はあまり気にしないが、人間にとっては不快だし、ご近所迷惑にもなり社会通念的にも問題。もし不潔な犬になってしまえば、ほとんどいいことはない。
ノミやダニで皮膚炎になれば見た目も痛々しく、触ってもらえる機会が減ってしまう。ニオイが強い犬も同様。
もし犬が飼い主さんにかわいがられることも、世話をしてもらうこともなければ、結果、犬のQOL(生活の質)が下がり、心も体も病んでしまう結果に繋がる。
犬と人間とが、幸せに暮らしていくには、それなりの綺麗ルールが必要だ。
人が主導の綺麗好きには要注意!
一緒に暮らしていく上で、飼い主さんも犬も綺麗好きであるメリットは多い。しかし“清潔”にし過ぎは禁物だ。
毎日部屋に掃除機をかけることは問題ないが、シャンプーやブラッシングのし過ぎは問題。
頻繁にシャンプーする犬もいるが、洗いすぎによるドライスキンなど、皮膚の健康を保てなくなる可能性もある。もしニオイが気になるときは、湯拭きするか、ニオイ消しのスプレーのあと拭くでも効果はある。
また、シャンプーのニオイが強く、犬が嫌がる場合は、天然の優しい香りのものを選ぶようにしよう。
そして強い力で何度もブラッシングするのも避けたいもの。ブラッシングのし過ぎは皮膚を痛めるだけでなく、必要以上にアンダーコートをとってしまうことも。
気になることがあれば獣医師に相談しよう。
犬と人のための綺麗好きQ&A
Q.犬用の布類を洗う時、柔軟剤は使ってもOK?
ニオイが強いシャンプーが苦手な子は体を汚してニオイを消そうとするが、柔軟剤が苦手な子は多くはない。なぜなら飼い主さんからいつも同じニオイがしているから。嗅ぎなれているニオイなら犬も安心する。
Q.最低限、綺麗にしておきたい場所は?
一番は排泄場所。そして食事スペース、寝床はできるだけ離そう。また、エサや水を入れる器は常に清潔に。エサの器は食後ごと、水入れも1日1回は洗おう。
Q.トイレシートの上で寝てしまう
トイレシートのそばにゴハンを食べる場所があれば、シートの上をベッドと勘違いしている可能性が。排泄場所と、寝床&ゴハンの場所は離すのが基本。ベッドを壁側に置くか、1段高くし、ベッド側でゴハンを挙げるようにすればシートの上で寝なくなるだろう。
Q.ボロボロになった毛布を捨てたい……
子犬の頃から使っていた毛布がボロボロになってゴミみたいでも、犬には大切なものかもしれない。すぐに捨てると不安で眠れないことも。新しい毛布に変えたいときには、古い毛布をしばらく一緒に置き、ニオイを移してあげよう。
Q.犬が体を舐めるのは清潔を保つため?
体を舐めるのはネコと同様、体を綺麗にするためだが、体が硬い犬は全身を舐めるのは困難で、時間もごくわずか。もし、同じ場所をいつまでも舐めていたら怪我や違和感があるのかも。獣医師に相談を。
飼い主も心地よいと思う綺麗好きを目指そう
綺麗を好む犬だが繋がれていたり、ケージの中で飼われていたりしたら、犬は自ら清潔な場所を求めて移動することができない。
何度か述べたが、動物はそもそも綺麗好きであり、汚い場所にいたら、QOL(生活の質)が下がる。
雑巾やほうきで掃除することができない犬の「綺麗好き」な性質を守れるのは飼い主さんだけだ。
愛犬と快適な生活を送るためにも、飼い主さんも過度になりすぎない「綺麗好き」を心がけたいものだ。
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Shi‐Ba vol.70『身の回りは汚しません! うんちはお外が当たり前!日本犬の綺麗好き実態調査』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。