調理の手間も少なく、食生活に取り入れやすいのが「葉もの野菜」。その葉もの野菜の健康パワーを生かすには、「何をどれだけ、どのように」食べているのかが大切です。特に人と同じ感覚で犬に与えると、せっかくの食事中の栄養を無駄遣いしてしまうことも!? 葉もの野菜を正しく使い、愛犬のさらなる健康管理に役立てましょう。
1.葉もの野菜は犬の体に良い?
2.葉もの野菜について知ろう!
3.犬に葉もの野菜を与える時の注意点は?
4.香草について
5.犬に与えても良い1日の目安量
6.調理や保存をする時の注意点
7.葉もの野菜レシピ
葉もの野菜は犬の体に良い?
人では、「肉100gに対して野菜は300gの摂取が必要」と聞いたことがあると思います。そこで、愛犬の健康を願う飼い主さんは、ドッグフードにも大量の野菜を投入。その結果、軟便や下痢、体重減少を経験したことはありませんか? それもそのはず、犬には人ほど多くの野菜は必要ないからです。
野菜に含まれる成分の90%は水、次に多いのは食物繊維です。つまり、野菜を摂取する意味は、水分や食物繊維の働きを体に活かすこと、ということになります。
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」があります。水溶性食物繊維は満腹感や腸内環境を整え、不溶性食物繊維は便のカサになる、腸の蠕動を刺激して排便を促進する、というそれぞれ異なる働きがあります。どの野菜にもこの2種類の食物繊維が含まれますが、割合の多い食物繊維の働きが排便状態に影響を与えます。
例えば、不溶性食物繊維の多い野菜を摂りすぎると腸の動きが活発になりすぎるため、軟便や下痢を生じさせることになります。
一方で、水溶性食物繊維が多すぎると胃の中では食べ物がいつまでも胃から腸へ送られないため、気持ちが悪くなり吐き戻すことがあります。
また、水溶性食物繊維は「発酵」という性質があり、これが腸内環境に役立つのですが、発酵過剰はやはり腸の蠕動を刺激して軟便や下痢を引き起こします。軟便や下痢はせっかくの食事からの栄養素が体内に吸収されていないことを意味します。また、腸内には免疫系の60%以上を占める腸管免疫システムがあるため、軟便や下痢の長期化は免疫力の低下にもつながります。
さらに、葉もの野菜に多く含まれる水分、ビタミンやミネラルには体に有益な様々な生理作用があります。よって「葉もの野菜自体は犬にも良いが、野菜の種類や与える量が鍵」と言えるでしょう。
葉もの野菜について知ろう!
※ここで紹介している野菜は基本的に年間を通じてスーパーなどで手に入るものです。
ほうれん草
旬……冬
主な栄養素(食物繊維以外)……β-カロテン、ビタミンC、鉄、カルシウム
食物繊維(g/100g)……2.8
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.7:2.1
ワンポイント……シュウ酸が多いので必ず茹でて与える
キャベツ
旬……冬~春
主な栄養素(食物繊維以外)……カリウム、カルシウム、ビタミンC
食物繊維(g/100g)……1.8
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.4:1.4
ワンポイント……春キャベツの軟らかい葉は生食でも良い
レタス
旬……初夏~初秋
主な栄養素(食物繊維以外)……ビタミンC
食物繊維(g/100g)……1.2
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.1:1.1
ワンポイント……生食でも良い。水分補給や減量中のオヤツに
小松菜
旬……冬
主な栄養素(食物繊維以外)……β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄分
食物繊維(g/100g)……1.9
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.4:1.5
ワンポイント……アクが少ないので生食可能
白菜
旬……冬
主な栄養素(食物繊維以外)……カリウム、ビタミンC、カルシウム
食物繊維(g/100g)……1.3
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.3:1.0
ワンポイント……生食でも良い。水分補給や減量中のオヤツに
春菊
旬……春
主な栄養素(食物繊維以外)……β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム
食物繊維(g/100g)……3.2
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.8:2.4
ワンポイント……生食でも良い。β-カロテンは青菜の中でトップクラス
ブロッコリースプラウト
旬……なし(通年)
主な栄養素(食物繊維以外)……β-カロテン、ビタミンC
食物繊維(g/100g)……1.8
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.3:1.5
ワンポイント……解毒、抗酸化作用物質のスルフォラファンを含む
水菜(京菜)
旬……冬~春
主な栄養素(食物繊維以外)……β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄
食物繊維(g/100g)……3.0
水溶性食物繊維と
不溶性食物繊維の割合……0.6:2.4
ワンポイント……生食可能。細かく刻まないと吐き戻しのリスク有り
犬に葉もの野菜を与える時の注意点は?
「与えてはいけない」野菜で一般的によく知られているのがネギ類です。葉もの野菜ではチャイブ(西洋あさつき)以外は、全般にわたって犬に与えることは可能です。
ただし、シュウ酸の含有量が多いことを知っておきましょう。シュウ酸はカルシウムと結合する性質があるので、犬に多い尿石症の一つであるシュウカルシウム結晶や結石がある、あるいは過去になったことがある場合は、与えない方が良いからです。
しかし、便秘などの改善から与える必要がある場合は、3分ほど茹でてから与えると、シュウ酸を50%近くに減らすことができます。
生で与えたい場合は、旬でやわらかい葉を少量であれば大丈夫ですが、繊維の硬さや与える量によっては吐き戻しの原因となることもあるため、一般的にはさっと湯がいてみじん切りに。または、茹で野菜の1~2割にあたる量の生野菜を混ぜてあげると良いでしょう。
香草について
■主な薬効
パクチー(コリアンダー)……消化促進、食欲増進、せき止め
青じそ(大葉)……防腐作用、食欲促進
バジル……抗菌、鎮痛、消化促進
クレソン……消化促進、利尿、解熱、駆虫
みつば……代謝促進
■薬効だけを優先させないよう気をつけよう
香草は食用、薬用、保存料などに利用されますが、一般的な野菜と異なり食物繊維の摂取が目的ではないため、使用目的に応じて少量を利用します。
犬に中毒性が報告されているのはチャイブ(西洋あさつき)だけなので、基本的に犬に毒性はありませんが、体に合わないこともあります。
そのため、薬効だけを優先して使用しないようにしましょう。食べない、嘔吐、下痢などの症状がみられたら、体に合っていないことが考えられるので、与えるのをやめてください。
犬に与えても良い1日の目安量
キャベツ……15~20g
レタス……20~30g
白菜……20~30g
ほうれん草……10~15g
小松菜……10~20g
水菜……10~15g
春菊……10~15g
ブロッコリースプラウト……1~2g
※体重10㎏、健康で活動量が適度にある成犬が消化器に悪い影響を与えないだろう分量の予測です。
■便の状態を常にチェックして量の増減を
体が必要とする食物繊維は、1日に食べるもの全体で考えるので、主食の中にどのくらいの繊維が入っているかにより異なります。
例えば、すでに減量用ドライフードを与えているのに、そこへ野菜からの食物繊維が多くなると食事中の栄養素も便中に排泄してしまうことになります。
上記分量はあくまでの「目安量」です。便が多くなった、緩くなったなどは与えすぎの可能性があるので、その場合は、野菜の量を減らしてみましょう。
調理や保存をする時の注意点
旬の野菜は、その季節の体調を調整するために必要な栄養素を含んでいます。自然の恩恵を愛犬の健康管理にも生かしたいですね。ここではちょっとした野菜の扱い方や与え方のコツを覚えておきましょう。
1.効果的な野菜の切り方
犬は人のように口の中で噛まない食性であるため、大きな葉や長い葉はその他の栄養素の消化吸収を妨げます。食事に混ぜる場合はみじん切りに。レタスなど食感を目的でオヤツとして単体で与える場合は、少し大きめの葉でも大丈夫です。
2.効果的な調理方法
残留農薬のことを考えると、基本はさっと茹でてから流水で軽く水洗いすると、野菜独特の犬が嫌いなにおいも減ります。
3.生野菜、茹で野菜、どれがオススメ?
食事で与える場合、排便促進目的の野菜は茹でましょう。酵素や栄養素の摂取を目的にした野菜は、少量を生で混ぜる方法がオススメです。
4.フリーズドライの野菜はOK?
食物繊維だけが多く、水分が不足すると便秘の原因となります。また、水分の重さがない分、生野菜と同量では食物繊維の量が多くなるため、利用の際には生の野菜のどのくらいの量にあたるのか、水分は十分に摂取できているかに気をつけて使用しましょう。
5.調理後の保存方法は?
みじん切りにした後に密封できるビニール袋などに入れて空気を抜き、平らにして冷凍保存しておくと、使用時に必要量だけ取り出すことができます。ただし、茹でる前に野菜の全体量を把握して、与える量の何日分にあたるのかを把握しておきましょう。
6.葉or茎、どの部分をあげるのが効果的?
一般的に、茎には食物繊維と水分が、葉にはビタミンやミネラルが多く含まれるので、両方をバランスよく摂るのが良いのではないかと思います。キャベツや白菜の芯の部分は甘さが強いため、食べすぎると軟便になることも。食感の良いオヤツにはなりますが、与えすぎに注意!
葉もの野菜レシピ
■スティック白菜&エッグディップ
【材料】
白菜……30g
茹で卵……1/2個分
プレーンヨーグルト……15g(大さじ1)
【作り方】
(1)容器に茹で卵とヨーグルトを加え、フォークで卵をつぶしながらよく混ぜる。
(2)(1)を白菜につけながら与える。
【ワンポイント】
卵に唯一不足している栄養素のビタミンCを、白菜で補います。生のままでも食べられるので、喉に詰まらない大きさに切り分け、ディップをつけながら手からあげてコミュニケーションを深めてくださいね。
■キャベツの肉巻き
【材料】
キャベツ……20g
豚もも肉薄切り……30g
【作り方】
(1)キャベツはさっと湯がいてから水で洗い、かたく絞った後、みじん切りにする。
(2) 豚もも肉薄切りを、縦に3等分に切り分ける。
(3)(2)に(1)の1/3をのせ、端から巻き込む。これを3個作る。
(4)小さめのフライパンを熱し、(3)の巻き終わりを下にして置く。
(5)(4)に水大さじ1を加えてフタをし、水分がなくなるまで蒸し煮にする。
【ワンポイント】
春キャベツはあまり気になりませんが、その他の季節のキャベツは独特のにおいを犬が嫌がることがあるので、さっと湯がいてから水洗いすることでにおいの問題を解決。さらにお肉でくるんでいるので、野菜だと気付かないかも!?
■小松菜とサケのライスボール
【材料】
小松菜……20g
ごはん……60g
生サケ……30g
食塩不使用バター……1g
【作り方】
(1)小松菜はさっと湯がいてから水洗いをし、水分を絞ってみじん切りにする。
(2)熱したフライパンにバターを溶かし、(1)と細かく刻んだ生サケを加え、大さじ1の水を加えて水気がなくなるまで蒸し煮にする。
(3)(2)をごはんによく混ぜて3等分して、それぞれラップで丸める。
【ワンポイント】
この分量で3日分のオヤツになります。冷凍保存もできるので、2倍量で作って1週間分のオヤツにしてもOK。養殖の生サケは脂肪が高いので、最初に湯がいてから使用したり、分量を減らすなどしてエネルギー調整をしてください。
■レタスと鶏肉のとろみスープ
【材料】
レタス……20g
鶏むね肉……30g
片栗粉……3g
【作り方】
(1)鶏むね肉は細切りにし、片栗粉を全体にまぶす。
(2)熱したテフロン加工のフライパンに(1)を加え、全体に焼き色をつける。
(3)(2)に水100㏄(分量外)を加えて中火で加熱する。沸騰してとろみが出てきたら火を止める。
(4)小さくちぎったレタスを(3)に加え、そのまま食べられる温度になるまで冷ましてから与える。
【ワンポイント】
レタスは生のままでも食べられますが、葉に厚みがないので犬にはかじりづらい野菜です。小さくちぎってスープに加え、予熱で加熱することで食べやすくなります。
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Shi‐Ba vol.106『【なんでもクソ真面目&マニアックに大研究シリーズ】シャキシャキの歯ごたえ、好き?嫌い? 葉もの野菜の便利手帖』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。