長寿が多い日本犬だからこそ知っておこう!認知症の特徴、症状、原因

犬の認知症

日本犬に多いといわれる認知症(高齢性認知機能不全)。でも「まだうちの子は若いから関係ない」と思っていないだろうか。他の病気と同様に認知症も早めの予防が大切。そして、それには脳への刺激がよく効くんだとか。
 

 

認知症について正しく知ろう!

犬の認知症というと、目的もなく歩きまわる徘徊や、昼夜逆転して夜鳴きをすることが、まず思い浮かぶかもしれない。

でも、突然このような困ったことが起こるわけではない。こういった症状は16、17歳ぐらいであらわれることが多く、発症はそれよりも数年前

しかし、初期は老化であらわれる症状と区別がつきにくく、進行もゆるやかなため、飼い主でもいつ認知症になったのか、わからないことが多い。

人の場合は糖尿病などの病気と関連があるといわれているが、認知症にかかる犬は、それまで特に目立った病気があったわけではなく、健康で長生きな子たち

かかりやすい犬の傾向も特にはなく、室内で飼われているのか、外飼いかということも発症には関係ないそうだ。

 

認知症の原因

犬の認知症

では、犬の認知症の原因にはどんなことがあるのだろうか。人ほどには解明されていないけれど、認知症の犬の脳で、どんなことが起こっているのか、研究が進められている。

全く同じではないが、人のアルツハイマー型の認知症と、脳血管性の認知症と似たことが起こっているという説が有力だ。

仮説1.βアミロイドが脳内に蓄積

人のアルツハイマー型認知症と同じように、加齢にともなって脳にβアミロイドタンパク質がたまり、しみのようになる。それが異常に多くなると神経細胞が死んで脳が委縮してしまう。しかし、同じぐらいたまっていても症状が出る犬と出ない犬がいるため、よくわかっていないこともある。

 
仮説2.βアミロイドが脳の血管にたまる

βアミロイドが脳の小さな血管の壁に沈着することによって、血管がもろくなり出血を起こし、脳がダメージを受けて認知症が起こるという説。犬には動脈硬化による脳出血はないが、死後の解剖で脳に大量の出血のある高齢犬が見られ、その場合、生前に認知症だったことが多い。

 
■こんな説もある
→大脳の白質が萎縮することで起こる

白質は大脳皮質の内側にあって神経束が密集している部分。犬では加齢にともなって白質が縮小するという報告があるが、認知症の場合はこれが激しい。白質の縮小は、構成する成分のうち特に脂質が酸化されて減少すると起こる。白質が委縮して認知症になると考えられている。

 

認知症の症状

犬の認知症

初期
→老化と変わらないため、気づかれないことが多い

積極的に動かず、元気がないように見えたり、ぼんやりしている。歩く時にふらつくことがある。飼い主が呼んでも反応しなかったり、甘えなくなったり、人や他の動物への関わり方が変わってくる。オスワリなど基本的なしつけを忘れていることがある、など。しつけに厳しくしなくなってくる時期でもあり、気がつかないことも多い。

中期
→目的のない行動が増えてくる

ウロウロと目的もなく歩き回ったり、円を描いて歩き続ける徘徊があらわれる。方向転換やバックすることが難しくなるため、狭い所に入りこむと自力で出られなくなる。部屋の出入り口を間違えることも。トイレの場所を間違えて不適切な場所で排泄する。自分でこぼしたゴハンを見つけられない、など。

後期
→立ち上がれなくなり、寝たきりに

運動の障害が進むため、フラフラして転びやすくなり、転ぶと自力で立つことが難しくなる。昼間によく寝て夜中に寝ないで、単調な声で鳴き続ける。排泄のコントロールができなくなる、など。自力で食事ができなくなり、寝たきりに。

 

認知症発見のための自己チェック

犬の認知症

回答上の注意:変化に関する表現は、「少し」=1~49% 「とても」=50%以上、頻度に関する表現は「時々」=1~29%、「よく」=30~59%、「かなり」=60~99%と考えよう。

 
■日中の活動に関する質問

□円を描くように歩き続ける、ウロウロし続けるなど異常な歩き回る行動はあるか?
1.全くない 
2.月に1回程度 
3.週に1回程度 
4.日に1回程度
5.日に2回以上

□その行動は過去半年間で増加したか?
(※現在も以前もその行動がない場合は1.変わらないを回答)
1. 変わらない 
2.少し増えた 
3.とても増えた 

□愛犬が休んでいる(活発ではない)時間は過去半年で増加したか?
1.とても減った(とても活発になった)
2.少し減った(少し活発になった)
3.変わらない
4.少し増えた
5.とても増えた

□床や壁をぼんやり見続ける行動はあるか?
1.全くない
2.月に1回程度
3.週に1回程度
4.日に1回程度
5.日に2回以上

□その行動は過去半年間で増加したか?
(現在も以前もその行動がない場合は1の変わらないを回答)
1.変わらない
2.少し増えた
3.とても増えた

 
■方向、物の位置の認識に関する質問

□壁や家具に当たってもそのまま歩き続けようとすることはあるか?
1.全くない 
2.月に1回程度 
3.週に1回程度 
4.日に1回程度 
5.日に2回以上 

□部屋の出入り口を間違えることはあるか?
1.全くない 
2.月に1回程度 
3.週に1回程度 
4.日に1回程度 
5.日に2回以上 

□こぼしたエサをうまく見つけられないことはどの程度あるか?
(+2して2倍)

1.全くない 
2.時々ある 
3.よくある 
4.かなりある 
5.毎回 

□その行動は過去半年間で増加しているか?
(※現在も以前もその行動がない場合は1.変わらないを回答)
1.変わらない 
2.少し増えた 
3.とても増えた 

 
■家族との関係に関する質問

□家族や親しい人、同居のペットのことを認識できないことはあるか?
1.全くない 
2.月に1回程度 
3.週に1回程度 
4.日に1回程度 
5.日に2回以上 

□その行動は過去半年間で増加したか?
(※現在も以前もその行動がない場合は1.変わらないを回答)
(+2して3倍)

1.変わらない 
2.少し増えた 
3.とても増えた 

□撫でられること、触られることを避けることはあるか?
1.全くない 
2.時々ある 
3.よくある 
4.かなりある 
5.毎回 

 
■排泄に関する質問

□半年間を振り返って、トイレ以外の場所で排泄してしまうことに増減はあるか?
(現在も以前もない場合は 1.変わらないをご回答ください)

1.とても減った
2.少し減った
3.変わらない
4.少し増えた
5.とても増えた

回答数字の合計を出し、それに4をプラスしよう。50点以上で「認知機能不全の疑い」という判定が出る。もちろん自己判断の目安なので、気になることがあれば獣医師や専門家に相談を。
 
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Shi‐Ba vol.78『長寿が多い日本犬だからこそ覚えておきたい!ボケによく効く脳への刺激』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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