愛犬の様子を見ていて「なんでこんな汚い場所や汚い物、クサイものが好きなの?」と思ったことはないだろうか? どうして犬たちはそれらを好むのか。その謎を解き明かしていこう。
犬が汚い場所をスキな理由
■犬に人気の汚い場所
1.散らかった自分の小屋やベッド
自分の小屋やベッドはやっぱり自分のにおいが染み付いた毛布やタオル、オモチャなど、モノがたくさんあったほうが落ち着くのかも?
2.泥んこになれる場所
飼い主にしてみれば、うわ~ん泥だらけになっちゃうと顔面ヒクヒクだが、犬にとっては穴掘りしたり、泥だらけになったりは嬉しいもの。
3.ゴミ捨て場の周辺
拾い食いしがちな犬だと飼い主側もゴミ捨て場周辺はできるだけ避けて通ることが多い。しかし、犬にしたらゴミ捨て場は誘惑の場のひとつ。
■犬が汚い場所を好む理由
犬は本能的に見通しが良い場所を嫌がる。見通しが良いというのは、敵から見られるということ。
また、野生時代には、犬は狭い穴に住んでいた。そのため、小さな空間で身を隠すことができる場所を好む。これらの理由から、どちらかというとスッキリした部屋よりも、雑然とした部屋のほうが好きだと考えられる。
泥んこになれる場所が好きな犬が多いのも本能的な理由。動物が土でごろごろするのは、自分のにおいを消したり、体についた寄生虫を落としたり、暑い時期には体温を冷やすため。泥だらけになっちゃうと汚いと考えるのは人間だけ。犬は決してそうは思っていない。
飼い主にしてみたら何でこんな場所に?と思うものがあったりするものだが、犬にとっては、それらが快適な場所であったりするもの。汚い場所に限度はあるが、ときには楽しませてあげてはどうだろう。
■犬の理想のお部屋とは?
犬にとって理想の部屋とは上でも少し述べたが、身体を隠せる場所があること。冬場なら部屋の真ん中にコタツがあれば中に隠れることもできるし、暖まることができる。
また、犬には大事なものを隠す習慣がある。野生時代であれば、エサを隠していたが、人間と生活している犬にとって、それはお気に入りのオモチャだったり、オヤツだったりする。あちらこちらに、大好きな飼い主のにおいがついた洋服が山積みになっていれば、物を隠すこともできれば、においを楽しむこともできる。部屋の中を走り回る際にも、そんな多少の障害があったほうがより楽しい。
明るいよりも少し暗いほうが安心できるので、間接照明だとなおベター。そして忘れてはいけないのは、必ずその部屋に大好きな飼い主がいること。
きっとこんな部屋だと犬も満足ではないだろうか。
■潔癖な犬
犬が自分の寝床で排泄しないのは、本能的に敵に自分の居場所がバレるのを防ぐため。
また、汚い場所や汚い物に触れてはいけないと日ごろからしつけをされている場合、興味を持たなくなることがある。
汚れたシーツに排泄しない犬も意外と多い。こまめに替えてもらうのが習慣となっていれば、綺麗なところにするものだと条件づけられているからだ。
犬が汚い物を好きな理由
■犬に人気の汚い物
1.使用済みの靴下
家族が靴下を脱ぐのを待ち構えている犬は多い。1日履いてにおいがよ~く染み付いているものは最高なものだ。
2.長い間洗濯していない犬ベッド
毎日使っていればベッドもだんだん薄汚れてくる。でも、自分のにおいがついたベッドの方が洗濯していい香りがするものよりも安心できるのかも?
3.使用済みのパンツ
楽しそうに何をくわえてくるのかと思うと、洗濯カゴにいれてあったパンツ!それだけを引っ張り出してくる才能には驚き。
■汚い物でも好きな人のにおいだから!?
どうして飼い主が脱いだパンツや靴下を犬は好むのだろうか?これらもまた犬からしたら『汚い物』という認識はない。
犬は基本的に生き物の出す汗や排泄物など有機物のにおいを好む。犬の祖先である狼のことを考えると、獲物を狩る際に自分の居場所がばれたら困る。自分のにおいを消すためには有機物の方が効果があるもの。人間の脱いだ靴下やパンツには有機物のにおいがついている。それも、自分が好きな飼い主のにおいであれば安心できるのだろう。
また、野生動物は本能的に腐ったもの、雑菌が多いような食べ物は食べない。そのようなものを食べてしまうと自分が体調を崩すことがわかっているからだ。
ただ、人間に飼われていることで、野生との違いがある。退屈だから、いたずらしてゴミの中の物を食べてしまうことがある。あるいは、食べたいからではなく、それらのにおいを自分につけたいという欲求かもしれない。
そして、洗いたてのものや新品のものよりも、使い古したものが好きというケースも多い。それは自分のにおいがついていると安心できるから。
犬にしてみれば自分のにおいや好きな人のにおいがついていることで安心できるという面もあるのだ。
犬がくさいものを好きな理由
■犬に人気の異臭
1.ミミズ臭
ミミズを見つけると寝ころがって、全身をスリスリ。なんとも言えないミミズのにおいは犬にしてみると1番好きなにおいのようだ。
2.お父さんの足のにおい
1日働いてきたお父さんの足、思わず鼻をつまみたくなる程、くさっ! と思うことも。でも犬にしたらそのにおいがたまらない。
3.お父さんの汗のにおい
女性の汗に比べると、男性の汗の方にひかれるようだ。汗をかいたお父さんの顔をペロペロするのが好きという犬も意外と多い。
■犬はクサイと思っていない?
犬は有機物のにおいを好む傾向があるとは、先ほど紹介した通り。よって、汗をかいた後の足の指の間や頭皮、ウンコなどのにおいを好んでいたとしても不思議ではない。
また、納豆が好きという犬も意外と多い。どうして納豆が好きなのかは、わからない。でも、飼い主さんがおいしそうに食べるのを見ていたり、あとは実際に自分も食べておいしかったからなどが考えられる。
ただ、犬は刺激臭を嫌う。例えば、アルコール系、メンソール系、酢など。酔っぱらってアルコール臭プンプンのお父さんに寄っていかないのは、そのせいなのかも。ただ、においだけではなく、酔っぱらいはしつこいからというのも理由のひとつかもしれない。
■洗剤・消臭剤・芳香剤は犬にとって……
洗剤や消臭剤、芳香剤は犬にとって必要のないもの。においを消したい、いい香りに包まれたいというのはあくまでも人間の都合だ。
しかし、飼い主側が快適な気持ちであれば、当然犬も快適な環境になる。使用する際には「ペットでも安心」などと表示されている安全性が確認できるものを使用するようにしたい。
【においで分かる犬の世界】いろいろな嗅ぎ方&嗅覚の疑問を徹底追及!
安心できるにおいや隠れる場所がある部屋が犬は快適
いかがだっただろうか。どうして犬は、汚い場所や汚い物、クサイ物を好むのかには、それなりの理由があった。
狩猟犬としての本能として、狩りをする時には獲物に気づかれないために自分のにおいを、他のにおいで消す。
また、ここは自分のテリトリーであることを仲間に知らせるためには、マーキングなどで自分のにおいをつけたりするのである。
もちろん、家庭犬として飼われていれば、狩りをする必要はない。でもどこかにそんな本能が残っているのである。犬は散歩が好きというのも、動きながら狩りをしていたという名残りからなのだそう。
汚部屋は犬に快適といってもいい環境だ。この場合の汚部屋とは、犬が安心できる自分のにおいがあったり、好きな飼い主のにおいがあったり、身を隠せるような場所があったりするような、少しだけ物が雑然としている部屋のことである。
自分のにおいが全くない、隠れるところも何もない程に、きれいにされてしまうと、安心できる空間でなくなってしまう。
だからといって、汚くしておくことをススメているわけではない。見た目に物が散らかっているだけなのと、ホコリがたまって汚いというのでは、違ってくるのである。湿気でジメジメしている、ホコリやフケ、抜け毛が落ちている部屋は要注意。
そんな状態のままだと、細菌やカビ、ダニなどが増える原因となってしまう。アレルギーを発症している犬の場合、抵抗力が弱っているだけに、これらの要因がより症状をひどくさせる可能性がある。くれぐれも気をつけよう。
また、いくら野生動物は本能的に腐った物は食べないといっても、人間に飼われている犬は、その感覚を失っている場合もある。腐った物もやはり細菌などが増殖しているため、犬の健康に害をおよぼす。犬に与えては危険な物も含め、うっかり口にしないよう、日頃から犬の様子をよく見ておくことも大切。
ほどよく散らかっているけれど、でも掃除は行き届いていて、ホコリだったり、犬が口にすると危険な物だったりがないという部屋が、犬にとっても、飼い主にとっても、お互いが安心できるのではないだろうか。
今回紹介してきたことを参考にしつつ、愛犬との生活をより快適なものにするために役立ててほしい。
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Shi‐Ba vol.81『ばちぃほうが快適!? 汚部屋は天国』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。