日本犬ならではのしつけ法。犬にとって意義ある遊び方を考える

日本犬の遊び

犬にとって遊びは自然界で生きるための能力を養う目的があった。人と暮らす現代の家庭犬も犬本来の能力や欲求を備えている。それらを遊びに取り入れて、より充実した時間を過ごそう。
 

 

日本犬好みの遊び

■追いかけっこ
日本犬の遊び

【ポイント】
・逃げる役と追う役を互いに交代する
・日頃から嫌がる犬を拘束しないこと

元気な犬と体力のある人は、格闘ごっこのように直接のボディコンタクトをせず、広い場所で逃げたり追いかけたり、互いに攻守交代しながら楽しもう。捕まえられると思って逃げる犬もいるので、日頃から嫌がる犬に拘束することは避ける。

 
■キャッチボール
日本犬の遊び

【ポイント】
・最初はすぐ近くで
・慣れたら遠くへ
 
単なるモッテコイ遊びは数回で飽きてしまう犬も。「空中でキャッチ」というルールを教える。ボールに長いひもをつけて、投げるふりをしてすぐ近くにぶら下げ、落ちる前にくわえさせ、持ってこさせる。犬がルールを理解したら、ボールのひもを外して投げ、持ってこさせる。

 
■宝探し
日本犬の遊び

犬のお腹がすいている時に目の前でポーチに食べ物を入れ。近くの物かげに置く。犬にポーチを持って来させて、中の食べ物を与える。犬が「ポーチを探す」というルールを理解したら、ポーチに食べ物を入れず特定のにおいを置き、手元まで持ってきたらほめて手に持っているオヤツを与える。

 
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意欲の持続が遊びの鍵

犬の意欲が持続するように工夫しよう。犬が「できた!」という喜びを持てるように、どのような遊びも難易度を調整するのがコツ。簡単にできると飽きてしまい、難しすぎて成功率が低いとやる気がなくなる。これは人と全く同じ。

また、ひとつの遊びは犬が「もっともっとやりたい!」と思っているところでピタッとやめてしまうこと。犬によって意欲の程度が全く異なり、数回でやめた方がいい犬もいれば、数十回と続けていい犬もいる。遊びの回数の基準はないが、「もっとやりたかった」という顔をしているのであれば、ひとつの遊びを一日に何度やっても構わない

 

遊びに関する悩みと対処法

日本犬の遊び

【悩み】オモチャを人の手元まで持ってこない

求められていることが十分に理解できていないことが理由。

あらかじめ犬にリードをつけておき、オモチャをくわえたら「モッテコイ」の号令とともに、速やかにかつショックを与えないように引き寄せて、とっておきのごほうびを与える。

人の手に渡すと良いことがある(とっておきのオヤツがもらえる、など)ということを教え直そう。

 
【悩み】くわえたオモチャを離さない

「オモチャを離したら負け」もしくは「離したら遊びはおしまい」と思っているのかもしれない。

オモチャをオヤツと交換していったん受け取り、またすぐ犬に渡して遊ばせることを繰り返そう。「オモチャを離した方が楽しいゲームが続く」と教えること。

それが理解できるまでは、犬から取りやすいように口から大きくはみ出すサイズのオモチャやひもつきボールを使うとよい。

 
【悩み】引っ張りっこ遊びで手元を噛む

オモチャを独占するために本気で攻撃しているのであれば、取り合うような引っ張りっこ遊びはさせない方が無難。

ただし、多くのケースでは「取ったり取られたりのゲームなら手元を狙う方が有利」という犬なりの解釈によるもの。

犬が手元を噛もうとしてきたら、オモチャをすぐに犬が届かない高さに上げる。手元から半分以上先を噛んだ時だけ引っ張りっこ遊びをする。

例外なく何回かやっていれば、ルールを理解して遊ぶようになる。

 
【悩み】オヤツを目当てにボールを持ってくる

「投げられたボールを追いかけてくわえ、戻ってきて人に渡す」という一連の行動は、「逃げる獲物を追いかけて捕獲し、人に渡す」という作業の代替行動。

これらの作業で犬が楽しいと感じるものは個体差があり、獲物を追いかけている時、捕獲して仕留める瞬間、人に渡して分け前をもらう瞬間、などさまざま。

オヤツを目当てにボールを持ってくる犬でも、自分の作業をほめられながらごほうびとしてオヤツをもらえれば達成感を味わって楽しいはず。

 
【悩み】オモチャを破壊することに夢中になる

オモチャの破壊は獲物の解体に相当する行為で、ごく正常な衝動の発散。誤飲の恐れがなければ、段ボールなど破っていいものを何かのごほうびとして与える。オモチャは破壊できないものを選び、与えっぱなしにしないこと。

 

好みにあったオモチャを探して遊ぼう

日本犬の遊び

愛犬の普段の行動を観察して、犬の気持ちになって好きなものを見つけてあげよう。例えば、かじるオモチャ以外では、引っ張りっこ遊びのオモチャ2~3種類、追いかけたり持ってこさせたりするボールやフリスビー、宝探しゲーム用ににおいをつけられるもの、などを用意するといい。これらはあくまでも一例。

オモチャに加え、用意しておくと遊びの幅が広がるものもある。屋外の広い場所では、ロングリードを利用した方が遊びの範囲が広がる。使い慣れていれば伸縮リードでも問題ない。

成人がルールのあるスポーツを好むように、オトナの日本犬が楽しめる遊びを教えてあげたいもの。無礼講ではしゃぐのではなく、ルールに則った方法を教えよう

飼い主が決めたルールどおり成功したらほめてごほうびを与え、失敗したら『あ~!』と残念そうに言って再チャレンジさせる。声のトーンで意図は伝わるものだ。

遊びを教える時に注意が必要な犬もいる。例えば、オモチャの独占を主張して本気で攻撃するタイプだ。オモチャを取り合うような引っ張りっこ遊びをする前に、くわえたものを渡すことができていなければいけない。難しい場合は専門家に相談が必要。
 

日本犬の遊び方まとめ

日本犬に激しい遊び方をさせると気性が荒くなるのではと心配する人がいる。しかし、猟犬として備えている欲求を抑えようとしても、イタズラなどの困った行動として噴出する

それよりも遊び方のルールを教え、一緒に楽しもう。始まりと終わりの合図は飼い主が出すこと。引っ張りっこ遊びやキャッチボールは最後に号令でオモチャを受け取り、オヤツを与えておしまいにする。これらを心がけよう。

猟犬は歳を重ねても動く間は飼い主と猟に出かけることを楽しみにしている。それは本来の欲求を満たしてくれる共同作業だから。

現代では狩猟をしていない日本犬が圧倒的に多いが、「犬本来の欲求を満たす共同作業」として飼い主との遊びを確立すれば、体が動く限りはそれを楽しんでくれる。

 
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Shi‐Ba vol.80『日本犬ならではのしつけ方法、はじめました。 犬にとって意義ある遊びを考える』より抜粋。
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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