甘えてくる愛犬はかわいいもの。でも犬を甘やかしすぎると、問題行動に発展するなんて話もよく聞く。今回は、日本犬の「甘え」にはどんな行為があるのかを探りつつ、「甘やかし」にならない上手な対応法などをご紹介しよう。
日本犬と洋犬、甘えの違い
レトリーバーなどは人の顔の前に自分の顔を持って来るなど、人にとても近い距離で甘えたりする。
一方で日本犬はちょっと距離を置いて、少し横を向きつつ、飼い主を意識しているようなイメージがある。人に甘える時もパーソナルスペースが広く、また甘える時間が短い印象だ。
犬といちゃいちゃすることを期待していた人は、日本犬のそっけなさに少し寂しさを感じている人も多いかも。
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日本犬の甘え Q&A
犬に関する素朴な疑問。その真意を知って、より賢く頼れる飼い主になるべく頑張ろうではないか!
Q.「甘え」と「要求」の微妙な関係について
何かしてほしい時に、飼い主の膝にアゴをのせてじっと見つめる、または控えめに「くぅん」と鳴くなどは、要求と甘えが入り交じったものなのだろうか?
ワンワン吠えた時はオヤツをもらえなかったけど、じっとして飼い主を見ていたらオヤツをもらえたなど、犬は自分がどんな行動をすれば、人がどう動くか、よく学習し、行動に移しているもの。
このように飼い主が日頃感じている「犬の甘え」の中には、ちゃっかりした損得勘定がどうやら含まれているようだ。
Q.甘がみは「甘え」の一種?
甘がみとは子犬のきょうだい同士で行う、口の上手な使い方の練習と言ってもいい。
どのくらいの強さでかんだら相手が痛いと感じて遊んでくれなくなるか、また逆に自分が相手からかまれるなど、群れ社会の中で周囲と上手くやっていくために学ぶもの。
なので本来、成犬になったら甘がみはしなくなるのが一般的。
ただし、レトリーバーなどによく見られる行動で『うれしい』という気持ちを、人の手をやわらかくかんで(よだれはつくが歯形はつけず優しくくわえる)、口で愛情を表現する犬もいる。
Q.シニア犬になると甘えん坊になるってホント?
シニアになると自分の体が思うように動かなくなったりする。甘えん坊になるというよりは不安感が強くなることから、人のそばにいたがったり、人がいないとキュンキュン鳴いて呼んだりするのだろう。
また、動きに関しても細かな微調整がききにくくなっていることから、飼い主の隣に体をちょっとだけくっつけて座るつもりが、目測を誤って体をずっしり預けてしまったりすることが、飼い主にとっては『すごい甘えん坊になったね』という印象を持つことになる。
Q.オスとメスではどちらが甘えん坊?
個人的な感想を言えば、どの犬種においても、オスの方が感情をストレートに出してくるような気がする。
例えば一緒に遊ぼうとした時、メスはちょっと離れた所から見ていて空気を読んでから近づいてくるが、オスは『遊んでくれ!』と体当たりで来る。
それぞれの表現方法が違うだけで、飼い主との関係が良好なら、甘え具合に性差はないのかも。
Q.どんな人が犬にとっては甘えやすい?
家族内でも犬が寄り添ってくる人、全然寄り付かない人がいたりするが……。
『甘えたい』=『そばにいたい』と考えるなら、犬にとっての甘えたい対象は、家族の中で頼りになる存在の人。
ゴハンや散歩など毎日の犬の世話をする人が“甘えたい対象”になるとは限らない。
犬に“こうするんだよ”という進むべき道を、混乱しないで示してくれる人を、犬は“この人といると安心できる”と認識し、自分の存在も認めてもらいたくて寄っていく。
同居犬や同居猫に甘える場合
その犬が子犬の頃から先住動物に甘えるという行動が見られ、また、その犬が避妊や去勢をして子を育てた経験がない場合、幼児性を持ち続けることがある。
寒くもないのに狭い所に2匹でくっついていたり、耳など舐めてほしい場所を相手に差し出すなどの行為は、子犬が母犬に見せる甘えの習慣化したものと言えるだろう。
またよく見られるが、ゴロンとくつろいでいる相手の所に行って鼻でツンツンつつくのは甘えではなく遊びに誘っている行為と言える。
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甘えと思われる行為の意味や注意点
犬の行動で“甘え”だと思っていたものが、実は違っていたというものがいくつかある。
まずは「飼い主を舐める」行為。これは汗などの有機物に反応して舐めている可能性が高い。ただし、顔や手をちょっと舐める場合は、母犬への行為の名残で、飼い主に対して親愛の情を示している場合もあるとか。
一方、同じところを数分感もうっとりと舐め続ける時は「自分を認めてほしい」という“過服従”の要素が含まれる可能性が。そんな場合は分離不安など何か問題を抱えていることもあるので、腕組みなどして舐める対象物を犬から遠ざけるか、気になる場合は専門家に相談を。
また冬に飼い主と布団で一緒に寝る犬もいるが、犬はお気に入りの場所を守ろうとするようになることがある。時々ランダムに犬と一緒に同じ布団で昼寝をするくらいなら大丈夫だが、毎日同じ状態で寝るなど、習慣化してしまうと場所を守る行為に発展する可能性も。
上手に甘やかし、甘えさせよう!
人で暖をとる、人を使ってオヤツやオモチャをゲットするなど、一見、犬の甘えと思われるものが彼らの損得勘定の上に成り立った行為であっても、日本犬に鼻先でツンツンされたり、キューンとはかなげな声を出されれば無条件でうれしいものだ。
しかし、犬のためにも、彼らと一緒に暮らす飼い主のためにも、過度な「甘やかし」は控えるべきだろう。
甘やかしていたら問題行動に発展していたというケースはけっこう多いもの。“うちの犬、ここがちょっと気になるな、こんな所が神経質かも”と感じたら、その行動を習慣化や強化させないことが大切。
犬を甘やかす時、その行為が本当に犬のためになるのか、実は自分の自己満足のためではないのか、と考えることも必要。
甘やかしすぎて、愛犬に問題行動が出たり、犬と一緒に暮らすことに支障が出るのは困る。上手に甘やかしたり、甘えられたりして、日本犬との甘い生活を楽しみたいものである。
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Shi‐Ba vol.63『見つめてころげて、ピタっと一部をくっつける? 日本犬の“甘えの構造”』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。