今回は、犬に寄生する虫について、徹底的に解説したい。どんな虫が周りに潜んでいるか知り、愛犬の虫対策が今のままで本当に大丈夫なのか、考え直してみよう。
アレルギー性皮膚炎の原因『ノミ』
ノミの活動時期は3月中旬~11月中旬といわれているが、冬でも家の中が暖かいと、繁殖を続けている可能性がある。
最近は体にノミがたくさん寄生している犬は見かけなくなったが、ノミのアレルギー性皮膚炎は多い。この病気はノミに刺されてすぐに発症するわけではなく、多くは4~5年経ってから症状が表れる。
ノミのアレルギー性皮膚炎にかかると、ノミの死骸やフンに触れただけでもアレルギー症状が出て、全身にかゆみが出てくる。非常にかゆがるようになり、体が赤くなり、脱毛も起こる。背中を中心に、下腿部、肛門やシッポの周りなどに発症することが多い。
一度ノミのアレルギー性皮膚炎にかかると根治はせず、薬で病状を管理するしかない。
ノミは草むらなどに潜み、犬がやって来ると、その振動で察知して、犬の体に飛びつく。そして、基本的には吸血をしたら、再びジャンプをして体から降りてしまう。そのため、飼い主が気づかぬうちに、ノミに刺されている可能性が高い。
※ダメゼッタイ!ノミを潰す行為!
ノミは瓜実条虫を媒介することでも知られる。瓜実条虫は体長が60cmくらいの寄生虫で、体内に入ると小腸に寄生する。主な症状は下痢を引き起こし、体が痩せてくる。犬だけでなく、人間にも感染する。
犬の体にノミを発見したら、プチンと潰す行為は絶対にやめよう。ノミを潰すと瓜実条虫の卵がふわっと舞い散ることがあり、それを吸い込むと体内に入ってしまうことも。
寄生しているか確認するには検便が必要になるが、検便で発見できないこともあるという。
下痢が続いていたら、瓜実条虫が寄生しているかもしれない。
体内に寄生していたら、駆除薬を使って退治できる。
下痢が続いたら注意『内部寄生虫』
虫の被害はノミやダニなど外部寄生虫だけではない。体内に寄生する内部寄生虫も、下痢などを引き起こすやっかいな存在。そして、内部寄生虫は季節関係なしに、犬の体内に一年中生息している。
内部寄生虫には回虫、鞭虫、鉤虫、糞線虫、ジアルジア、コクシジウムなどさまざまな種類が存在している。
寄生虫は種類に応じて体のさまざまな場所に寄生するが、腸内に寄生した場合は、主に下痢の症状が出てくる。
下痢までいかなくても、軟便が続く場合は寄生虫が宿っている可能性があるかもしれない。
ところで、これらの内部寄生虫はどういう経緯で体内に入るのだろうか?その寄生の原因は犬同士が舐め合ったりにおいを嗅ぎ合うなど接触すること。土から入ったり、母犬からの胎盤感染や汚染されたウンチに接触することで感染するケースもある。
体内に寄生虫がいるかどうか調べるためには、基本的には検便を行う。
これらの寄生虫に感染しないために注意すべきことは、症状が出ていなくても、定期的に駆虫しておくのが望ましい。最近はフィラリアやノミなどと一緒に駆虫できる複合薬も出ているので、かかりつけの獣医師に相談してみよう。また、犬が多く集まる場所へ連れていくのは控えたほうがいい。
ちなみに内部寄生虫は人へも寄生する人獣共通感染症。犬はお尻をよく舐めるため、口の周りに寄生虫の卵が付いていることがある。犬に口移しで食べ物を与えたり、口をペロペロ舐めさせていると、人へうつってしまう。
特に乳幼児は危険。2歳以下の幼児が回虫に感染すると脳障害を起こす可能性があり、時には命に関わることもあるので、注意が必要。
愛犬にキスさせるコミュニケーションはなるべく避け、定期的な駆虫でしっかりと予防を行っておこう。
フィラリアの媒介『蚊』
蚊のシーズンはノミ同様に3月~11月。しかし、今の時代は温暖化が進んでいるため、越冬する蚊も出現しているという。
蚊はさまざまな病気を媒介する非常に厄介な存在だ。
犬にとって、蚊が媒介する最も恐ろしい病気は、言うまでもなくフィラリアだ。
蚊はフィラリアの子虫を媒介し、犬の体内に入った子虫は約半年かけて成虫へと成長する。成虫は肺動脈や心臓の中に棲み、心臓の弁や内膜、血管を壊す。症状は寄生数や体内にいる期間によって変わってくる。
フィラリアの急性症状では血尿が出たり血を吐き、慢性症状では肝硬変や肝不全を起こしたり、腹水が溜まっていく。他にもさまざまな症状を引き起こす。
では、フィラリアにかかると、治すことはできるのだろうか?体内に入った数が少なければ、手術をして虫を出したり、注射で虫を殺すことは可能。
ただし、フィラリアは体内で心臓を破壊するため、後遺症は残ってしまう。その後は心臓病を抱えながら生きていくことになり、ずっと薬を飲まなくてはならない。
現在、フィラリアは駆虫薬で予防することができる。愛犬を長生きさせたいと思うなら、絶対に予防を行っておきたい。沖縄など冬でも蚊がいる暖かいエリアはもちろん、他のエリアでも一年を通じてフィラリアの予防をしておいたほうが安心だ。
最近では錠剤だけでなく、オヤツ感覚で食べられるチュアブルタイプや年一回で済む注射などフィラリア予防の選択肢が広がっているので、獣医師に相談してみよう。
犬に寄生する虫 Q&A
Q.虫を食べてしまっても体に害はない?
生きている虫を食べるのは基本的には大丈夫。ただし、殺虫剤で死んだ虫は体に殺虫成分が残っているため、犬が食べると体調を崩すことがあるので食べないように。
Q.犬に虫を寄せ付けないポイントを教えて!
虫のいる野山や草むらには連れて行かないこと。また、犬同士の接触で虫がうつることもあるので、管理の悪いドッグランに行ったり、犬のウンチに接触するのもNG。
Q.虫が寄生しやすいのはどの部分?
ノミが好むのは首、肩甲骨、腰の部分。蚊は毛の中に潜って刺すこともできるため、基本的には全身どこでも刺す。ダニも体中に寄生するが、比較的多いのが顔周り。
Q.冬はどんな犬に虫がつきやすい?
冬でも山に出かける猟犬は虫がつきやすい。ただし、ダニは都会にも潜んでいるため、どんな犬も油断できない。散歩後は犬の体を触ったり、ブラッシングして虫のチェックをしよう。
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Shi‐Ba vol.80『「寒いから大丈夫」が命取り 正月だってのにダニ・虫新聞緊急配布!!』より抜粋
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