ここでは「日本犬にとってボス犬は憧れだ!」と言い切ってしまおう。今回は愛犬をボス犬にする方法を全力で探った。ボス犬への道は険しいが、野望を現実にするのだ。諸君、いざ行かん!
1.ボス犬ってどんな犬?
2.ボス犬の条件とは?
3.群れの中で順位が決まれば数年は変わらない
4.イヌ科は順位を確認して安心する
5.ボス犬になるためのトレーニング
6.感謝の気持ちで愛犬がリーダーの自覚をもつ
ボス犬ってどんな犬?
まずは理想のボス犬像の考察からはじめよう。
■ボス犬って現代に存在する?
今の日本で犬のリーダーが存在している可能性があるケースは2つ。3匹以上多頭飼いの家庭と、再野生化した犬(野犬)の群れ。協力して生きる仲間という意識があるので、社会構造(群れ)を構成するために順位を決めているはず。公園に集まる犬友達くらいの関わりだと、群れを作るまでには至らないが、順位は意識していると思われる。初対面の犬同士でも同様。
■存在意義とリーダーシップとは?
群れのリーダーは、仲間に認めさせてなるものではなく、認められてなる地位。リーダーの最大の存在意義は、仲間に利益をもたらすこと。粗暴に振る舞うだけでは、誰も認めてはくれないはす。恐怖による一時的な支配はあり得るが、いずれ下克上が起きるだろう。群れに利益をもたらす賢さがリーダーシップにつながる。
ボス犬の条件とは?
現代に生きるボス犬の存在がわかったところで、本題へ。まずは、ボス犬になる素質について。
ボス犬になるためにもっとも重要な素質は、上昇志向が強い性格であること。挑戦して上位に昇るか、下位に甘んじるか、生まれつき持っている気質で決まる。上昇志向の強さは、テストステロンというオスの性ホルモンが関係するので、未去勢オスがボス犬になりやすいと考えられている。
ただし、メスや去勢オスにも上位を望む犬がいるので、性別よりも性格の影響が大きいだろう。
次いで関係するのは年齢と体格だが、どちらも決定要素にはなり得ない。年齢に関しては、同じ素質の犬同士なら年長者が有利かも、という程度。
柴犬とラブラドール・レトリーバーのような体格差があっても、小さい柴犬が上位に行く可能性が非常に高い。柴犬は上昇志向が強く、ラブラドール・レトリーバーは下位に甘んじる性格だから。素質は性格がいちばん影響する。
日本犬はイヌ科の基礎に近い犬種なので、本能的な順位構成の作り方が強く残っていると考えられる。日本犬の中でも犬種によって違いがあると思われるが、研究されていないので断言はできない。
リーダーの座につく資格を持っているのは、仲間に認められた犬だけ。残念ながら、素質だけではなれない。
オオカミや再野生化した犬のリーダーは、狩りの指示を出す、危険を避ける、仲間に獲物を分け与えるなど、大切な役割がある。強いだけではなく、群れを統率して各自にできる役割を配分して、協力体勢を作るのがリーダー。仲間も信頼して指示に従う。力づくで勝手な行動をとっていては、仲間の信頼を得られない。野生のリーダーは仲間の協力を失うと、群れの存続も自分の地位も危うくなることを理解しているのだ。
群れの中で順位が決まれば数年は変わらない
群れの中で順位が確定したら、数年は変わらない。
イヌ科は社会構造をしっかり構成するので、仲間との協力や信頼を大切にする。頻繁に順位が変わっていたら、誰の指示に従って行動すればいいのかわからなくなってしまう。
だからこそ、ボディランゲージで常に順位を確認しながら暮らしている。特に野生の場合、順位の混乱は群れも自分の身も危うくなるので避けたいはず。
ただし、高齢や病気などを理由に、早めに交代する場合もある。
イヌ科は順位を確認して安心する
イヌ科のボディランゲージには、群れの順位を確認する、コミュニケーションをとるなど、さまざまな意味がある。
にらむ、うなる、毛を逆立てるなど、威嚇の姿勢が上位のボディランゲージ。相手が目をそらす、お腹を見せるなどの服従姿勢で、下位のボディランゲージをとれば丸く収まる。順位の安定は群れの安定。お互いの順位を常々確認することで安心する。
トラブルになるのは2匹が互角だった場合。「オレがボスだ!」「何いってんの?」ってことで対決。
また、上位を主張した者に対して、ボディランゲージを理解しない相手がとんちんかんな行動をとった時もやっかいだ。これは順位構成の本能が薄れている犬に見られる。そんな時は「無礼者!」と教育的指導をされる。
オオカミと犬のボディランゲージを比較すると、オオカミの方が群れのルールが明確。さすがご先祖様! 本能は色濃く受け継がれている。
ボス犬になるためのトレーニング
一、対抗して吠えない犬になる
【地道なトレーニング】
1.他の犬と距離をとった状態で、愛犬が相手を見た瞬間にオヤツ。食べない場合は距離が近すぎるので、さらに離れてから行う。
2.相手を見たら振り向いてオヤツを期待するようになったら、少しだけ距離を縮めて行う。
3.できるだけ少しずつ距離を縮めて、2~3m程度の距離まで近づいても飼い主の方を向くようになったら、相手が吠えた瞬間にオヤツを与える。
4.さらに距離を縮めて、吠えずに通過することを目指す。
【とっさの対処法】
愛犬が吠えはじめた瞬間に、相手と反対方向に走る。愛犬が振り向けないくらいの速さで走ることが大切。
※相手に向かって吠えている時に叱ったり説得したりするのはNG。余計に興奮を煽ってしまう。
関連記事:日本犬の正しい距離感を考える。犬のフレンドリーって何だ?
二、落ち着きのある犬になる!
フレンドリーな犬も攻撃的な犬も、「他の犬が一番の関心事」という状況を変える。犬と会うたびに挨拶をさせることが習慣になっているなら、数回に1回に変更。犬に会うと唸る場合は、上の「吠えない犬になる!」を参照にトレーニングをする。
三、弱きに優しい犬になる!
弱いものいじめをしないことは「ケンカを売らない」に近いので、「吠えない犬になる!」を参照に教えられる。しかし、「弱い者の面倒を見る」行為は、犬自身が持つ。性格によるところが大きいので、教えるのは難しい。しかし、誰かの面倒を見ているそぶりをした時だけごほうびを与える、というトレーニングで多少はコントロールできるかもしれない。
四、信頼される犬になる!
「信頼される犬」は犬自身に備わった素質が大きいので、トレーニングで教えるのは難しい。しかし、「犬友達に嫌われない犬にする」ということであれば十分に可能。警戒心が強いタイプや攻撃的なタイプは、ケンカを売らないこと、ケンカを買わないことを教える。フレンドリーなタイプは、相手に遊びを強要しないように、飼い主がコントロールしてマナーを身につけさせる。
感謝の気持ちで愛犬がリーダーの自覚をもつ
ボス犬は仲間に認められて君臨できる地位。ということは、犬たちにまかせればボス犬を選出してくれるのだろうか?
群れができているのであれば可能かもしれないが、多少のトラブルは覚悟した方がいい。犬のことを犬にまかせるのは危険。飼い主さんが安全に管理してあげるべきだ。
では、上のトレーニングを取り入れつつ、飼い主が選んであげればいいのだろうか?これもだめだ。人が介入すると関係が不安定になりやすい。
しかし、群れのリーダーにふさわしい行動をとれるように、飼い主が教えることはできる。
リーダーらしい主な行動は、「率先して新しい場面を展開」「仲間に利益をもたらす」、この2つ。犬の自発的な行動をよく観察して、人の希望に合った行動をとった時に、本心からほめてごほうびを与える。
幼児に対する『よくできました!』というほめ方ではなく、真摯に『おかげで助かったよ』『ありがとう』と伝えることが大切。愛犬に『相手に利益を与えている』という自覚と喜びを教えられる。
飼い主がほめ方を変えれば、ボス犬の自覚を促すことができるかもしれない。
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Shi‐Ba vol.58『弱きを助け、仲間を率いて強気をくじく ボス犬への道』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。