犬にも、もちろんある恐怖心。あるものは仕方ないので、どうやってつきあえばいいのかを考えるべきだ。今回は犬の恐怖心について考えよう。
恐怖心を感じやすい遺伝子がある
「うちの犬、小さい頃からビビリで」と困っている飼い主は多い。
実は恐怖を感じやすい犬と感じにくい犬には、遺伝子に違いがあることが発見されている。「分離不安」「接触過敏性」「飼い主への攻撃」など、他にも恐怖に関連している遺伝子が存在することも示されている。
しかし、人間がいくら良い遺伝子を持っていようと、それを磨かないとダメになるのと同様、犬も育て方次第で大きく性格が変わる。
いくらポジティブな遺伝子を持っていようとも、社会化不足や虐待、叱るしつけなどで育てられれば、恐怖心が強い犬になってしまう。つまり、人間と同じように、犬それぞれの性格は遺伝的要因と環境による要因が半分ずつ影響するのだ。
一方、恐怖を感じる遺伝子を持っていても好ましい行動を教えてほめて育てると、恐怖心をそれほど高めずに犬を成長させられる。これは人間も同じだから想像がつきやすい。もちろん適切な社会化、運動なども重要だ。
普段の生活で、何が愛犬にとっての不安やストレスになっているのかを考え、それらを取り除くことも大切。
意外なのは『大丈夫』などの声がけが、恐怖を感じさせることにつながることだ。人間が犬に『大丈夫』と声をかけるのは、恐怖反応を示している時のみ。『大丈夫』という響きと『怖い』が結び付き、恐怖心を煽ることとなってしまう。
怖いものをなくそう
ある恐怖が、その犬にとって許容範囲外である「レッドゾーン」に入ってしまう強さであれば、その刺激を受ければ受けるほど、恐怖を感じやすくなる。
例えば、他の犬が苦手なので、慣らそうとして嫌がっているのに他の犬に近づける飼い主がいる。いくらそうしても、多くの犬はもっと苦手になってしまう。「レッドゾーン」に入ってしまった犬に、フードなどのいいことを提供しようとしても怖がって食べない。
では、どういう手順で、怖いものに慣れさせたらいいのだろうか。
恐怖を感じる対象に犬を慣らしていく方法のひとつに「系統的脱感作」というものがある。これは、怖いと思っているものを小さな刺激から徐々に慣らしていく方法で、人間の心理療養にも使われるメソッドだ。
例えば、犬に慣れさせたい場合、怖がらないギリギリまで相手の犬に近づけて、飼い主が愛犬にフードを食べさせてみる。食べられなければ、すでにレッドゾーンに入っていると考えよう。
もし食べることができたら、もう少し近づいて、また食べさせてみる。それを繰り返すことで、徐々に距離を縮めていく。
こういった体験を繰り返しさせていると、ボーダーライン、つまり許容範囲が少しだけ広がっていき、恐怖心を感じなくなっていく。
チワワによく見られる恐怖行動に慣らそう
■掃除機が怖い
その轟音や動きから、だいたいの犬は掃除機が苦手だ。その難敵に、どうやって慣れさせれば良いのだろうか?
【対策1】動いていない掃除機に慣らす
最初はスイッチを入れないで、静かな掃除機に慣らす。まずは愛犬のお気に入りのフードを、置いている掃除機のそばにばらまいてみよう。
最初は少し警戒していても、掃除機が動かず、音が鳴っていないのを確認すると、近づいて食べるようになるはずだ。それができるようになったら、次の段階へ進もう。
【対策2】音を出すのは最終段階。徐々に慣らしていく
止まっている掃除機が平気になったら、掃除機のスイッチを入れずに、飼い主が片手にホースの柄を持ち、もう一方の手でフードを愛犬にあげる。
それにも慣れたら、ホースの柄を動かしフードをあげる。大丈夫になったら、いつも通り掃除機をかけるように本体も動かし、フードを。
次に、スイッチを入れた掃除機で、この流れを再度行う。
■知らない人が怖い
犬が人間と同じ社会で暮らしている限り、人とは至るところで接する。犬を人に慣れさせるための方法。
【対策1】知らない人にフードをあげてもらう
知らない人に頼んでフードをあげてもらう。そうすると、犬は「あの人はフードをくれる人」と脳にインプットされる。こうすることで犬は、その人が近づくという状況を受け入れるようになっていく。
【対策2】いろいろな人と交流させ慣れさせる
知らない人にあったら、まず嗅覚からの情報に慣らすために、フードをあげる前に体のにおいを嗅がせてもらう。名前を呼ぶなど声をかけてもらったり、触ってもらう。
【コツ】
上記のことを様々な人で行う。家に来る人、宅配便屋さん、サングラスをかけた人……。外でも同様の体験をさせる。お願いできる相手からフードをあげてもらう。
初対面の人には、犬と正面を向き合わないように、目を覗き込まないようにしてもらうこと。これは犬を怖がらせてしまう要因となる。
また、犬が近づく相手に顔を背けたり、震えたり、相手のにおいを嗅ごうとしなかったり、においは嗅いだけれどその後顔を背けたり、フードを食べようとしなかったりしたら、いずれの場合も恐怖を感じているので注意を。
■インターフォンが怖い
【対策1】チャイムの音を変えてみよう
手っ取り早いのは、チャイムごと交換してしまうこと。新しいチャイムの音は、知らない人が入ってくる前ぶれではないので、怖がったり吠えるという反応はしないはず。
新しいチャイムの音を鳴らしては、フードを与え、「新しいチャイムの音が鳴ると、飼い主がフードをくれる前ぶれ」という方程式を理解させるのだ。
【対策2】チャイムが鳴ればいいことが起きる
チャイムの音色を変えられない場合は、現在使用しているチャイムの音を録音し、最初は小さな音で再生し、フードを与えるようにする。
慣れさせるためのトレーニング中は玄関のチャイムの音を切り、ドアに鈴でもぶら下げておいてチャイムの代わりに。
音を鳴らしても吠えない音量から始め、1日に何十回も聞かせフードを与えながら、何日もかけて少しずつ音量を上げていく。犬の中に「チャイム=フード」という新しい脳の回路ができあがる。
この対策にくわえ、本当の来客時には、犬がインターフォンに反応したり玄関に向かってしまう前に、クレートなどに待機させる。犬に「人が来た」と感じさせないようにすることが大切。
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チワワスタイル vol.27『PTSD、パニック吠え……etc.恐怖心とのつきあい方』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。