噛む欲求が強く、興奮しやすく、体力が豊富な犬にとっては引っ張りっこ遊びはうってつけだ。しかし、その犠牲がデメリットになってしまうことも。正しい遊び方を知っておこう。
1.引っ張りっこが役立つこと
2.安全に遊べるならどんな犬にもおすすめ!
3.遊びを控えた方がよい犬
4.引っ張りっこを始める前に
5.引っ張りっこ 初級の遊び方
6.引っ張りっこ 中級の遊び方
7.引っ張りっこ 上級の遊び方
8.引っ張りっこの再開の仕方
9.オモチャの離させ方
10.引っ張りっこで困った時の解決法
11.オモチャは貸してもらうものと教える
引っ張りっこが役立つこと
引っ張りっこ遊びは、ルールを守って遊べばさまざまな効果がある。楽しむだけではもったいない!? 特に役立つ3つについてご紹介。
■全身を使って体力発散ができる
オモチャをくわえて引っ張る様子を見ると分かるが、後ろへ引く動作は全身を使う。体力の発散もできて楽しい遊び。
■飼い主さんが主導権を握っていると教えられる
ルールを守って遊ぶことで、飼い主さんが主導権を握っていることを教えられる。「このオモチャはオレ様のもの!」ではなく、「飼い主さんが管理するもの」と理解するわけだ。日常生活の関係づくりにも役立つ。
■トレーニングにより確実性が出る
飼い主さんの言うことを聞いたらごほうびに遊ぶ、ということを徹底すれば、トレーニングの確実性を上げられる。犬は遊びたいから、トレーニングをより一生懸命がんばる。遊びの前にはまず勉強。ぜひ習慣にしよう。
安全に遊べるならどんな犬にもおすすめ!
引っ張りっこ遊びを始める前に、まずは愛犬の性格や状態を把握しよう。引っ張りっこ遊びは、ものを守る意識と攻撃性を引き出すこともあるからだ。動作が激しくなりがちなので、愛犬の年齢にも配慮しよう。
下の『遊びを控えた方がよい犬』に当てはまる場合は要注意。心配なことがあれば、専門家に相談しよう。飼い主さんは『ちょっとくらいなら大丈夫!』と思うかもれないが、お互いのケガにつながる心配がある。
遊びに無我夢中になってしまうと、噛みまくり、興奮が収まらず、体力の限界を突破してしまう。互いにけがをすることがないように、事前に愛犬を見極めることが大切だ。
ルールを守って安全にできるなら、引っ張りっこはどんな犬にもおすすめしたい遊び。むしろ引っ張りっこ遊びができるような関係を目指そう!
遊びは楽しく安全に。「安全」が抜けがちなケースが多いので注意して。
遊びを控えた方がよい犬
■オモチャを奪う・奪われる
オモチャを奪う犬、もしくは奪われてしまう飼い主は、「チョウダイ」ができるようにトレーニングを。「チョウダイ」ができれば遊びの幅も広がるので、ぜひ教えておきたい。
■目の色が変わってしまう
オモチャを見せただけで目の色が変わり、収拾がつかないほど吠えたり飛びついたりするタイプは、遊びを控えて落ち着く練習を。
■子犬は条件つきでOK
子犬は社会化やトレーニングが優先。暴れたり人を強く噛んだりするタイプは、体力を発散させ、人を噛まないように教えるため、生後3ヶ月頃から先に遊んでもよい。
■老犬は無理をさせない
老犬と遊ぶ場合、無理は禁物。遊ぶのが好きなら体力や状態に応じて飼い主さんが力加減をして遊ぼう。犬が遊ばなくなってきたら別の楽しみを見つけてあげたい。
引っ張りっこを始める前に
■事前に確認すること
引っ張りっこ遊びは、犬の攻撃性を引き出すことも! 遊びを始める前に、まずは愛犬の性格や状態を確認しておこう。楽しく安全に遊ぶために必要なことだ。遊びを始める前に、以下の4点を確認しておこう。環境は愛犬や周囲の安全のために、オモチャの管理や遊ぶ姿勢は関係づくりのために。飼い主さんの配慮が大切だ。
1.室内は滑りにくい床で
遊ぶ時には犬が足を踏ん張り、全身を使って引く。滑りやすい床は足腰の関節を痛める危険があるので避けて。周囲のものも片づけておこう。
2.屋外は周囲を確認する
屋外の公園などで遊ぶ場合は、周囲の状況を見て、危険がないことや迷惑をかける心配がないことを確認。ドッグランで遊ぶ時は施設のルールを守ろう。
3.オモチャは飼い主さんが管理
飼い主さんがオモチャを管理する。遊ぶ時に出し、終わる時に片づける。犬がルールを覚え、良い関係が築ければ、「遊ぼう」という誘いにのってもOK。
4.飼い主さんが立って遊ぶ
力が強い犬だと、飼い主さんが座ったりしゃがんだりした体勢では、犬の引っ張る力に負けてしまう。立った姿勢で遊ぼう。
■オモチャの選び方
素材、大きさ、長さ、音が鳴る笛の有無、形状に注意して選ぼう。犬にも好みがあるので、好きなオモチャを探して。
1.丈夫で硬すぎず柔軟な素材
綱引きのように引っ張り合っても壊れない丈夫な素材を選ぶこと。犬がくわえるものなので、歯を痛めないようにある程度柔軟性があるものにしよう。
2.犬の口からはみ出す大きさ
遊んでいる時に犬が飲み込まないように、口からかなりはみ出す大きさにする。大きければ、持っている手に犬の歯が当たる心配もない。
3.最初はリードより短い長さ
オモチャはリードより短く、手元で遊べる長さにする。長すぎると犬が大きく動くので、コントロールしにくい。犬がルールを覚えれば長くてもOK。
4.音が鳴るオモチャは注意
「ピュー」という笛の音に興奮するタイプも。当てはまる場合は鳴らないタイプを。もしくは安全ピンなどで笛に穴を開けて鳴らないように工夫して。
5.装飾が少ない形状にする
犬が口にするものなので、誤飲の心配がないようにシンプルな形状を。ぬいぐるみは綿を出す、パペットは人の手に噛みつく危険があるので避ける。
引っ張りっこ 初級の遊び方
初級の遊び方は、ルールを教える目的もある。犬の動きをコントロールできるように、あらかじめリードを装着。犬が落ち着いている時に飼い主さんから遊びに誘う。
1.オモチャを見せびらかす
リードを短く持ち、オモチャを犬に見せびらかして遊びに誘う。犬に奪われそうな場合は、高い位置で見せびらかす。人から奪う経験をさせないこと。
2.左右にゆっくり動かす
犬がのってきたら遊ぶ(のってこなければ何事もなかったように片づけて終了)。オモチャに集中したらオスワリをさせてアイコンタクト。「OK」の合図でオモチャを投げるかくわえさせる。初級は激しい動きを避け、ワイパーのように左右にゆっくり動かす。
3.犬が離すのを待つ
オモチャを持っている手を同じ側の足につけ、犬が引いても動かないように固定。犬が離すのを待つ。口から離した瞬間に「チョウダイ」の号令を。できる犬は号令で離させる。
4.隠してから再開して終了
犬がオモチャを離したら背中に隠す。飛びついたらリード下に引いて犬を降ろす。その後「再開の仕方」に従って遊び、再び離させてから隠して終わり。
引っ張りっこ 中級の遊び方
初級で遊びのルールと一連の流れを覚えたら、難易度を上げて中級へ。オモチャを投げて持って来させるモッテキテを取り入れよう。トレーニングらしくけじめもつけられる。
1.遊ぶ前にアイコンタクト
中級は初級よりもけじめをつけたルールで遊ぼう。遊びを始める前にオスワリさせてアイコンタクト。興奮してできない場合は初級へ戻って練習を。
2.「OK」とオモチャを投げる
「OK」と合図を言ってオモチャを投げる。投げる位置は1m程度前。慣れたら3~4mほど前へ投げ、リードが張らないように飼い主さんが一緒に走る。
3.「モッテキテ」と言う
犬がオモチャをくわえたら、すぐに「モッテキテ」と言う。リードの真ん中あたりに手を伸ばしてたぐり寄せる準備に入る。
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4.リードを持って下がる
リードの真ん中あたりを持ったら、「モッテキテ」「オイデ」と言いながら素早く後ろへ下がる。力づくではなく、犬が自然に来るように。下がる距離は投げた距離の倍程度。
5.リードをたぐり寄せる
4で下がりながら、ほぼ同時にリードをどんどんたぐり寄せる。下がりながらたぐり寄せれば、犬が自然について来るように状態になる。
6.オモチャを確実につかむ
リードを犬の近くまでたぐり寄せて短く持つ。リードで犬の動きを制限しながら、反対側の手でオモチャを確実につかむ。空振りしないように注意を。
7.引っ張りっこ遊びをする
初級と同じように引っ張りっこ遊びをしよう。ワイパーのようにゆっくり左右に振る。犬の興奮が高まりすぎなければ、やや激しめに遊んでもよい。
8.オモチャを離させる
初級と同じく、オモチャを持っている手を同じ側の足につけて固定。犬が離すのを待つ。チョウダイができるなら号令で離させよう。
9.隠してから再開して終了
初級と同じく、犬がオモチャを離したら背中に隠す。その後「再開の仕方」に従ってまた遊んでから、再び犬にオモチャを離させ、隠して終わりにする。
引っ張りっこ 上級の遊び方
中級でトレーニングを取り入れた遊び方を覚えたら、難易度を上げて上級へ。ロングリードをつけた状態で、オスワリ、アイコンタクト、モッテキテ。号令に従ってできればベストだ。
1.号令でマテをさせる
飼い主さんの隣でオスワリとアイコンタクトをさせる。その状態でマテ。犬が落ち着かない場合は、中級に戻って短いリードをつけて練習しよう。
2.オモチャを投げる
オモチャを犬の数m前に投げる。犬がつられて追いかけないように、マテの号令を徹底しておこう。もしつられる追う場合は①を繰り返し練習する。
3.「OK」で追いかけさせる
犬がオモチャにつられずにマテができたら、「OK」の合図で追いかけさせよう。動いてしまったら、リードでつられないように動きを制御する。
4.くわえたらモッテキテを
犬がオモチャをくわえたら、「モッテキテ」と言って持って来させる。手元まで戻ってきたら遊び、今までと同じく中断と再開を繰り返してから終了。
引っ張りっこの再開の仕方
遊びの再開は初級から上級まで共通。犬は「オモチャを一度離したら遊びが終わる」と学習すると離さなくなるので必ず再開を。また犬が飽きる回数を見極め、飽きる前に終了すること。
1.オモチャを見せオスワリ
オモチャを背中に隠して犬が落ち着いたら、再開の手順を始める。まずはオモチャを高い位置で見せてオスワリを。低い位置だと飛びつくので注意。
2.誘導してアイコンタクト
オモチャをあごの下へ持っていき、犬と目を合わせるアイコンタクト。慣れていない犬は時間がかかるかもしれないが、オモチャで誘導すれば成功する
3「OK」の合図で再開する
「OK」などの合図で遊びを再開しよう。犬の興奮が高まりすぎたら初級3と4で落ち着かせる。再開を数回繰り返したら、初級4の後に片づけて終了する。
オモチャの離させ方
コーギーは興奮が高まりやすく、時にはオモチャを離さなくなってしまうこともある。練習でもつまずきやすい課題だ。困った時は、下のテクニックを試してみよう。
■短くしてあきらめさせる
最初は手もとで遊べるくらい短めのオモチャで離させる練習をした方がよい。もし長いオモチャで遊んでいて離さない場合は、どんどんたぐり寄せて短く持つ。犬の口もと近くまで短くして、初級3「犬が離すのを待つ」のように持った手を足につけて固定。犬は大きく動けなくなるので、「つまらないからいらない!」と離すことが多い。
■噛み直す瞬間に取る
オモチャを離さない場合でも、くわえ直すために口を開ける瞬間がある。イメージとして、噛み直す「ハモハモ」の「ハ」の瞬間に取り上げよう。
■鼻の穴をふさぐ
オモチャをなかなか離さない犬は、鼻の穴を指でさりげなくふさぐ。呼吸がしづらくなって口を開けるので、オモチャが離れる。
引っ張りっこで困った時の解決法
Q.犬が遊びに乗り気ではない。
オモチャの噛み心地にも好みがあるので探してみよう。遊んでいる最中であれば、負けるふりをして「すごいね!」とほめて盛り上げよう。
Q.どうしても離さない時は?
オモチャを離さない時は、百歩譲って大好物のオヤツと交換。教えている途中でオヤツを出すと、オモチャよりオヤツに関心が向いてしまうのでなるべく控えよう。
Q.再開と終了のタイミングは?
中断と再開を繰り返してから終了だが、そのタイミングは犬による。盛り上がっていればすぐ、けじめをつけたいならマテの後に再開。乗り気でなければ即終了する。
オモチャは貸してもらうものと教える
引っ張りっこ遊びはトレーニングも兼ねている。娯楽と勉強を両立させるために、注意したいことはなんだろうか? 遊んでいるうちに興奮が高まるタイプは、トレーニングができていてもうなり声が出ることがよくある。楽しい気持ちの表れなので、遊んでいる最中は無礼講と考えてよい。
ただし、威嚇でうなっている場合は、遊びが助長してしまうのですぐ中断! 念のため専門家への相談をおすすめしたい。
引っ張りっこ遊びは関係づくりにも大いに役立つ。関係づくりに役立てるためには、飼い主さんの考え方や態度も大切。犬がオモチャを『飼い主に奪われるもの』『飼い主から奪うもの』と学習しないように教えることがとても重要だ。
今回紹介しているとおりに練習を進めて。『飼い主に貸していただくもの』と教えるつもりでいよう。トレーニングも兼ねているので、良い関係ができるまでは上から目線で考えること。
飼い主さんと犬の良い関係は、日常生活全体から判断できる。共に暮らして苦でないことが大前提だ。実は良い関係ができていれば、何でもあり。引っ張りっこ遊びを活用して、愛犬と「何でもあり♪」な関係を目指そうではないか!
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コーギースタイル Vol.36『体力発散だけじゃない、トレーニングと関係づくりにも効果的! 引っ張りっこ遊びを極める!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。