被毛トラブルは、ある程度進行してから飼い主が気づくことが多い。早期発見早期治療を目指すため、プードルの毛に関する病気や不調を知っておこう。
1.クッシング症候群
2.性ホルモンのトラブル
3.甲状腺機能低下症
4.アロペシアx
5.脂腺炎
6.涙やけ、口まわりやけ、足先やけ
7.血流の悪化
8.老化
9.日焼け
10.蒸れ
11.要注意なカットスタイル
12.プードルは特にデリケート
クッシング症候群
食欲があるので元気に見えるが被毛は悪化
主な症状:
食欲が出る、水をガブ飲みする、毛が薄く細くなる(結果的に退色したように見える)など
腎臓の近くにある副腎という臓器から、ステロイドホルモンが過剰に出る病気。発症は高齢の小型犬に多く、若い犬は少ない。ステロイドホルモンは被毛に大きく影響するので、毛が細く薄くなる、退色する、といった変化が現れる。適切な治療でもとに戻ることが多い。
性ホルモンのトラブル
女性ホルモンが出すぎて被毛に影響
主な症状:
オス限定で、おっぱいが腫れる、乳汁が出る、陰茎が小さくなる、オスに惹かれる、など
精巣と卵巣は、どちらも男性ホルモンと女性ホルモンを出している。人は男性ホルモンが髪に影響するが、犬は逆に女性ホルモンが出すぎると毛が薄くなる。オスの精巣が腫瘍化すると女性ホルモンを多く出すようになり、毛が薄くなったりメス化したりする。ホルモンのバランスを整える治療を行う。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモン不足で毛量や毛色が変化する
主な症状:
寒がりになる(ストーブの前から動かないなど)、心臓が弱くなって顔がむくむ
免疫の病気で甲状腺が小さくなり、体を元気にする甲状腺ホルモンが出なくなってしまう。大型犬に多いが、甲状腺ホルモンを服用させたところ、数週間で被毛がフサフサになり、濃い茶色の毛が生えてきて改善した例がある。
アロペシアx
体調に問題はないが胸の毛が抜けていく
主な症状:
胴の毛が抜ける(顔や足の毛はほぼ残る)、など
主に胴の毛が抜けてしまう脱毛症。発症する犬種はポメラニアンが過半数を占めるが、プードルも多い。毛が抜けるだけで体調には影響しないと言われている。年配の男性の髪が薄くなるのに近い。さまざまな治療法が研究されている。
脂腺炎
フケが増えて毛が乾燥して薄く
主な症状:
フケが急激に増える、毛が乾燥する、毛が薄くなる、など
毛穴にある脂の腺の炎症。全身の毛の根元にフケがびっしりつき、脂がなくパサパサしてきて、最終的に薄くなる。見た目では判断しにくいが、病理検査で診断が可能だ。珍しい病気だが、スタンダード・プードル、まれにトイ・プードルに見られる。
涙やけ、口まわりやけ、足先やけ
涙や唾液、汚れの付着で変色する
主な症状:
目もと、口まわり、足先が赤茶色に変色する、においが強くなる、など
被毛が赤茶色に変色することを「やけ」という。涙やけ(流涙症)は涙が涙管に流れず溢れる病気。口まわりは唾液や食べかすなどの付着によるやけ、足先は汚れの付着によるやけ。涙と唾液はいろいろな成分が含まれているため、特にやけやすい。足先を頻繁になめて変色している場合は別の病気が疑われる。病気以外であれば、涙やけは水分をはじくワセリンを塗る。口まわりと足先は毛を短くカットして、マッサージで刺激を与え、ヘアサイクルを促進させるとよい。
血流の悪化
体の末端にある耳や尾が栄養不足で脱毛
主な症状:
末端皮膚が乾燥する、フケが出る、冬にしもやけのようになる、など
耳や尾の先は体の末端なので、血流がよくない部位。血液がようやくたどりついても、含まれている栄養が少なく、乾燥や脱毛が起きることもある。心臓が悪い犬(小型犬に多い)によく見られる。マッサージで血流をよく保ち、クリームで皮膚を柔らかくしておくとよい。
老化
歳を重ねてホルモンが萎え、部分的に脱毛する
主な症状:
斑点のように脱毛する、など
高齢になるとホルモンのバランスの変化や衰えが原因で、部分的に脱毛することがある。原因に合った治療を行うことで治ることもある。
日焼け
被毛が薄いところに紫外線が悪影響
主な症状:
紫外線を受けたところが赤くなる、など。
耳やマズルは被毛が薄く、紫外線の影響を受けやすく、日に焼けると赤くなってしまう。日焼けを繰り返すと免疫の病気や扁平上皮がんになる恐れが。特に薄い毛色は要注意。日差しが強い日は日焼け止めを塗り、日中の外出を控えよう。皮膚より色が濃い鼻は、メラニン色素で紫外線をガードできている。
蒸れ
毛が絡まって蒸れ、皮膚が炎症を起こす
主な症状:
毛が絡まったところが蒸れて皮膚が赤くなる、ブツブツができる、など
耳の後ろ、脇、股、尻まわりは毛が絡まりやすく、毛玉ができやすい。気づかずに放置すると蒸れて皮膚が炎症を起こす。毛玉を無理にほぐすと犬が痛がるので、短くカットした方がよい。
要注意なカットスタイル
プードルはいつも同じところの毛を縛っていると、血流障害が起き、毛が薄くなったり生えにくくなったりする。
エクステのように付けるタイプは、ブラッシングがしにくく蒸れの原因になることも。1週間程度で交換したほうが通気性と衛生面でも安心だ。
プードルは特にデリケート
犬の表皮(皮膚の一番上の皮)の厚さは、人の3分の1程度。地肌は人よりもずっと弱い。皮膚疾患はさまざまな刺激によって毛乳頭が傷ついて起こる。
見落としがちなのは、紫外線による刺激。日焼けを防ぐだけでも皮膚は健康になり、病気の治りも早くなる。実は人も同じ。頭皮の蒸れを気にして帽子を被らない方は逆効果だ!また、冬でも油断は禁物。愛犬と共に今すぐ紫外線対策を始めよう!
ホルモンが影響する内分泌疾患は、ホルモンの服用など、症状に合った治療を行う。プードルはクッシングと甲状腺機能低下症が多いので、異変に気づいたら動物病院を受診しよう。
最後に、プードルに被毛トラブルが起きやすい理由も知っておきたい。プードルは被毛が細く柔らかく絡みやすいことが根本的な問題。もともと皮膚や被毛が弱い傾向があるようだ。ホルモンをくっつける受容体も少ない可能性がある。
被毛トラブルは早めの対処で改善の可能性が高まる。早期発見が重要だ。
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プードルスタイル vol.15『うすい、抜ける、色が変わる……お悩みいろいろ プー毛発毛・育毛プロジェクト』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。