今回は愛犬に生肉を与えるにあたって、知っておきたい基礎知識をご紹介しよう。
犬への生肉の与え方
Q.犬に与えていい種類の肉って?
基本的には人間用やペット用の生食用として売られているものであれば、どんな種類の肉を与えてあげてもかまわない。ただし、例えば鶏肉などに対し、もともと食物アレルギーがあるとわかっているならば、その肉は避けることが大切。『1から10まで知っておきたい生肉のこと!犬に与えるメリット・デメリット』でも述べた、新奇たんぱくの肉を選んであげよう。だが、同じ種類の肉を与え続けるとその肉に対して新たに食物アレルギーを起こすこともあるため、時々、肉の種類を変えてあげよう。
Q.どこの部位が体にいい?
生食用として売られている肉にも、いろいろな部位がある。脂がそんなに多く含まれていない部分がよい。ただ、肉の種類と同じで、部位についても、同じ部位だけを与え続けるのではなく、さまざまな部位を与えてあげるのが理想的。例えば、今日はもも肉を与えたなら、翌日は肩ロースの部分など。または、1回に与える際に、いくつかの部位を混ぜてあげてもよいだろう。いずれにしても偏らないようにすることが大切。
Q.犬に与えていい生肉はどのような状態のもの?
一般的には多少の脂分を含んだ赤身肉のことを基準に考えておきたい。脂分が多いと膵臓に負担がかかるため、膵炎を起こしている犬は脂分を控えめにするよう注意を。また、カルシウムやリンの補給のためには骨の部分やその他の栄養バランスを考えるとレバーなどの内臓も与えた方がいいと言われている。ただし、尿路結石を起こしやすい犬は骨の部分は避けること。内臓も過剰に摂取すると体によくない時もあるため、週1~2度プラスする程度にしておこう。
Q.いい肉の見分け方や保存方法、消費期限って?
冷凍した状態で販売されていることも多いため、冷凍状態だと見た目の色だけでは判断しにくい場合もある。あとは飼い主がにおいを嗅いでみて、その肉が大丈夫なのか判断を。いい肉かどうかは、信頼のおける店で購入することが、一番大切。保存方法や消費期限も販売店によって違う場合もあるので、必ず確認しておこう。一般的には、冷蔵であれば2~3日以内に消費を。冷凍であれば1ヶ月程は保存可能だと考えられる。
Q.冷凍された生肉はどう与える?
冷凍された状態の生肉は、自然解凍させてから与えるようにしよう。冷凍庫に保存している生肉を、翌日食べさせる量だけを夜寝る前に冷凍庫へと移しておく。そうすれば翌朝には自然解凍されている。どうしても時間がない場合は、凍った状態の生肉が入ったパックを流水にさらしたりする方法も。食物酵素を失活させないためには、くれぐれも加熱しないこと。解凍した際に出た肉汁(ドリップ)は旨味や栄養成分が含まれているので、そのまま与えて大丈夫だ。
Q.どのくらいの量をどのくらいの頻度で与えればいい?
愛犬の耳の付け根の上から頭の部分を1食分の目安に。栄養バランスのために、見た目の3分の1を生肉、3分の1を犬がNGのネギ類などを除いた生野菜(野菜は犬が消化できにくいため、フードプロセッサーなどで細かくした状態に)、3分の1はごはんを。生肉の大きさは、よく噛んでもらいたいなら厚切りロース状のカタチでもかまわない。噛まないで飲み込んでしまいがちなら、のどのつまり防止のために0.5~2cm程の大きさに。生肉を与えても大丈夫な犬なら、基本的には毎日与えてもかまわない。
Q.安全な肉はどこで手に入る?
例えば、その肉が腐っている状態であれば、人間なら腐敗臭などでこれは食べるとマズイと判断できる。犬は腐った肉でも食べてしまうため、基本的には人間が食べられるものを前提にしておくことが安心だ。人間の生食用の肉を扱っている店で購入するのもひとつの方法。最近はネットでも生肉販売を扱っている店が増えている。実際に愛犬に生肉を与えている犬友達がいれば、入手先などを聞いてみるのもいいだろう。
生肉のギモン
Q.生肉に慣れてしまうとドライフードを食べないこともある?
人間側のイメージだと、カリカリしたドライフードよりも、生肉の方がおいしそうと思いがち。いいものを食べることに慣れてしまうと、ドライフードを食べなくなるのではと不安になる飼い主も少なくない。だが、ドライフードの食感が好きな犬もいれば、生肉を与えても喜ばない犬も中にはいる。食の好みは習慣による影響が大きい。下記でも紹介しているように、栄養バランスを整えるためドライフードも上手に利用しよう。
Q.栄養が不足していないか心配……
食物酵素が摂れるのが生肉の利点。また加熱すると破壊されてしまうビタミン類も生肉から補給できる。だが、亜鉛などのミネラルや他の栄養素については生肉だけでは不足しがちに。週に1回、ドッグフードを与えるようにすることで、不足しがちな栄養素を補ってあげるとよい。あるいは朝はドッグフード、夜は生肉食としておくのもいいだろう。総合栄養剤のサプリメントを利用するのもひとつ。そして、定期的に健康診断を受けて、栄養状態をチェックしておくと安心だ。
Q.季節によって気をつけるべきことは?
夏の暑い時期は人間も食欲が落ちるもの。それは犬でも同じだ。そんな時に生肉を与えることで食欲が促される。ただし、暑い時期は生肉が腐敗しやすいので、くれぐれも注意。生肉を入れた食器も清潔にしよう。冬でも暖房などで室内は温かい。食べ残した生肉を置いたままにして、数時間後に腐敗した肉を犬がうっかり食べてしまう場合もある。生肉を与える時は、食べ終わるまでしっかり見ておき、もしも残した場合には片付けておこう。置きっぱなしにはしないこと。
嫌がる場合は無理に与えないこと
今回紹介した生肉の与え方を把握した上で、愛犬に生肉を与えるかどうかは、最終的には飼い主さんの考え方次第だ。
いくら飼い主さんが、生肉は愛犬の体に良さそうと思っても、犬が食べるのを嫌がることもある。嫌がる犬に無理矢理与える必要はない。
愛犬が生肉を食べてくれるならば、紹介してきたように、肉の大きさなどに気をつけ、誤飲して気管に詰まらせないようにする。食べている間は犬の様子を見ておくことが大切だ。
生肉を与えるために、全部の食事を手作り食にするとなると、手間がかかって長続きしないもの。例えば、いつものドッグフードに生肉をトッピングしてあげるのも、ひとつの方法。手軽に食物酵素を摂ることができる。この場合の生肉の量は、ドッグフードの1日の摂取量の10%程度にする。カロリーを摂り過ぎないためには、その分、ドッグフードの量を減らすことも忘れずに。
そして、生肉を与えていると、血液検査において、何かの病気でなくても腎臓の数値が通常よりも高めになってしまう。血液検査を行う場合は、あらかじめ、生肉を与えていることを獣医師に伝えておこう。生肉の影響で、数値が高めに出ることがわかっていれば、診断の目安にもなる。
愛犬の健康のためには、生肉だけではなく、栄養バランスを考えた食事にすること。それをくれぐれも忘れないようにしておきたい。
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Shi‐Ba vol.87『本当に体にいい?1から10まで知っておきたい生肉のすべて!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。