【目指せハチ公 待つの美学】凛々しい待ち姿こそが日本犬スタイルだ!

日本犬のイメージはハチ公によって確立された。と言い切れるほどの圧倒的な固定観念。つまり、日本犬は飼い主に忠実で、いつまでも飼い主を待ち続けるという神話。さて真相はどうなんだろう。日本犬は本当に飼い主を待つ忠犬なのだろうか、それともそれは尾ひれが沢山ついた神話なのだろうか……
 

 

ハチ公ってこんな犬

待つ犬

ハチ公のことは日本人なら、ましてや犬好きなら知らない人はいないと思うが、少しだけおさらい。

ハチ公は大正から昭和初期に生きた秋田犬で、飼い主である大学教授の上野英三郎が出かける時は渋谷駅までついていくことも多かった。

しかし、上野教授は急死。飼い主の死後もハチ公は渋谷駅に通い、上野教授を待ち続けたという有名な逸話を残した犬である。

このことから、日本犬は飼い主に忠実で、いつまでも待ち続けるという印象を世の中に焼き付けたのである。

ハチ公の映画も作られた。その中で上野教授は、「人には人格があり、犬には犬格があるのだから、それを尊重してやらなければならない」と言っている。

上野教授が犬のことを知り尽くし、なおかつハチ公という個体を尊重し、固い絆を築いたからこそ、ハチ公のような忠犬を生み出したのだろう。
 

愛犬を待てる犬にするには?

待つ犬

Q.日本犬は待つのが得意な犬種なのか?
日本犬には、甘えん坊ではなく自己表現がヘタ、独りよがりで自分の都合優先といった特徴を持った個体が多い。自発的に待つという犬種とは言えない。もちろん待てる日本犬はいるが、それは個体差による気質と言える。

 
Q.同犬種でも個体差が大きいのは何故?
人にも様々な性格の人がいるように、犬も性格や気質の違いは元々持っている。その上で、飼い主との接し方で個体差が大きくなる。トレーニングの方法次第で犬は変わる。個体差を大きくしているのは、飼い主のほうなのだ。

 
Q.待つことやそのしつけは心身の負担にならないのか?
意味のないマテ、長いマテはストレスにしかならない。拷問的なマテは絶対にやめたほうがいい。犬に対しても何のために待つかを説明できなければいけない。苦痛や不安を与えるマテは、犬の精神にも飼い主との関係にも悪影響がある。

 
Q.日本犬は仲間や家族を大切にするところがある?
家族に対してはとても仲間意識が強く、人間関係もよく観察している。ただ、大切にするかどうかは、犬の個体差と飼い主の接し方次第。飼い主がイニシアティブを取り、誰が主なのかをはっきりさせることで、いい関係が保たれる。

 
Q.愛犬をハチ公のような忠犬にするには何に気を配ればいい?
まずは基本的なしつけ。そして人と犬との主従関係や信頼関係をしっかりと築くこと。そして溺愛ではない、けじめのある愛情が大切。犬の扱いが上手く、性質をわかっている人がきちんとリーダーシップを取れば、自ずと犬は従ってくる。

 

飼い主への信頼感と愛犬への適度な愛情で

待つ犬

「うちの子もハチ公みたいに、飼い主をずっと待ち続ける忠誠心ある子になったらいいのに……」と思われたことがある方は少なくないだろう。その裏には、「日本犬」だから「ハチ公」みたいになれるはず、という無意識の固定観念が存在しているようにも思われる。

しかし、それは必ずしも「日本犬」だからということではないのでは、という結論に落ちつきそうだ。

では、何がハチ公にそうさせるのか。飼い主をいつまでも待つために必要なものは、基本的にしつけなのだ。現実的な答えになってしまい、みなさんの期待に添えなかったことお許しいただきたい。しかし、きちんとしたしつけの行き届いていない犬は、飼い主のことを待ち続けることはないだろう。何か相当な下心やご褒美がちらつかない限りはあり得ない。
 
従って、幼少期から正しいトレーニングを行うことがベースとなる。そしてそのトレーニングを通して、また日常生活の端々において、主従関係をしっかりと築き上げること。

「この人といると安心できる。頼りになる。だから任せられるし、付いていけば大丈夫」愛犬の中にそのような気持ちを根付かせることで、そこに信頼関係が育まれてくる。

ただ、愛犬が飼い主に依存し過ぎる関係になると、それはまた厄介なこと。そうならないためにも、過剰に可愛がったり至れり尽くせりの生活を送らせることは避けるべき。

適度に愛し、適度に距離を置くこと。それが愛犬に対する正しい愛情のかけ方である。このあたりに配慮して、愛犬の性格や気質もきちんと理解して毎日を過ごしていれば、もしかしたらハチ公のような犬に変身していくかも。
 
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Shi-Ba vol.76 『待つの美学 目指せ!ハチ公』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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