はた目には楽しそうに見える多頭飼いも、実際にはデメリットの方が圧倒的に多い。決して一筋縄ではいかない多頭飼いについて今回は考えてみよう。
1.多頭飼いならではのメリット
2.多頭飼いに向く犬・向かない犬
3.2匹目の選び方
4.1匹目に必要な関係と心構え
5.2匹目との会わせ方
6.多頭飼いの住み分け方法
7.必要なルール
8.トラブル対処法
多頭飼いならではのメリット
多頭飼いのメリットは、犬同士でしかできない遊びができるなど、人とでは構築できない関係をつくれること。
飼い主としては犬が増える楽しみを味わえる。犬ごとのキャラクターの違い、反応の違いなどを実感するはずだ。
また、多頭飼いで、1匹が亡くなった時のペットロスが緩和される。特に犬への思い入れが強い人は、ペットロスも深刻化することがある。2匹目の世話をすることで、悲しみに浸る暇を亡くすことができるはずだ。
しかし、デメリットも多い。
まず、今まで人対犬の一対一でしかなかった関係が複雑化してくるため、先住犬がもともと抱えていた問題が2倍、3倍にふくれあがる可能性がある。
次に、費用が2倍になること。医療費、食費など。場合によっては倍以上になる可能性もある。
また、世話の時間も間違いなく増えるだろう。掃除の量が増えたり、散歩もバラバラに行く必要があるかもしれない。
くわえて、「ひとりで留守番して寂しそう」などという意識で2匹目を迎えると、1匹の時に抱いていた不安が、2匹で倍になってしまうことも。暇つぶしのイタズラも倍になることがある。
多頭飼いに向く犬・向かない犬
犬同士の相性にもよるが、一般的に多頭飼いに向いているのは、犬にも人にもフレンドリーな社交的で遊び好きな犬。
ただし、遊び好きでも排他的な犬だと、オモチャや飼い主を守って2匹目に攻撃したりなどする場合もあるので、向いているとはいえない。
不健康な犬、ストレス性の病気を持った犬は、他犬との生活でストレスを感じやすいので、2匹目を迎えるのはやめたほうがいいだろう。
2匹目の選び方
どんな犬でも、健康な2匹目を選ぶことが前提。
その上で、まず異性であることが仲良くなりやすいポイントに。
ときに、オスの方がメスに寛容なので、オスが先住、メスが2匹目だとベストだといえる。
年齢が3~5歳と適度に離れれば、活動量のギャップも少なく、かつ飼い主が深刻なペットロスに陥ることを避けやすくなるなるだろう。
血統が近いと、性格の強さや執着の対象が似ることになり、けんかの原因になることがあるので、1匹目にそうした傾向があれば避けて。
1匹目に必要な関係と心構え
1匹目との信頼関係をしっかり結ぼう。
排泄問題やチャイム吠えなど、1匹目が持つ問題が、2匹目が来ることで助長する可能性も。1匹目の持つ問題はあらかじめクリアにしておこう。
また各犬が飼い主との健全な関係を築き、かつ犬同士の関係も築けるようにし、全体群れの関係を作れるように意識することが大切。
世話の時間や食事・医療費が倍かそれ以上になることも忘れずに。
貯蓄したり、ペット保険に入るなどして、あらかじめ備えておこう。
2匹目との会わせ方
できれば2匹のテリトリー以外で、フェンスの中でフリーにして会わせ、相性を見ておきたいもの。
リードがあると犬が強気になるので、ノーリードで放し、オモチャや食べ物などけんかの元になるものは置かず、飼い主はフェンスの外にいるか、中にいるなら動きを止めずに(止まると犬が飼い主を守ってしまうため)、2匹を遠巻きに見る。
普通ににおいを嗅ぎあったりしているのなら問題なし。
ただ、こうした状況をつくるのが難しいなら、1~2週間お試し期間を設けて見た目や印象で飼い主が見極めるか、2匹目を選ぶことができない状況(保護犬を引き取るなど)なら、まず、フリーの状態で会わせることは避け、以下の方法であわせよう。
1.同じ空間にケージを2つ
2つのケージを同じ部屋に置く。1つのケージに1匹を入れておき、もう1匹はフリーの状態をつくる。これを交互に繰り返そう。
2.吠える場合は別室に移動
ケージ越しに犬が吠える場合は、一方を別室に移動させて姿を見せないようにし、いったんクールダウンさせよう。間を置いて1からやり直す。
3.一緒に散歩に連れて行く
吠えることが少なくなったら、2人で1匹ずつ連れて散歩へ。先住犬が強い性格なら先に、違うなら2匹目を先に縦に歩いて。問題なければ順番を入れ替えて。
4.慣れたら並んで歩かせる
3の散歩を何回か繰り返し行おう。犬たちが一緒に歩くことに慣れてきたら、今度は並んで歩かせてみよう。
5.1人で2匹のリードを持ち散歩
並んで歩くことが平気そうなら、今度は1人で2匹のリードを持って散歩させてみる。トラブル回避のため、もう1人サポート役の人を連れて行こう。
この流れで慣らすには2ヶ月ほどかかることも。ただし、犬の性格をみて平気そうならフリーな状態で会わせてもすぐになじむ場合もある。
その場合、2匹目が子犬や元気な犬なら、1匹目が落ち着けるケージなどの逃げ場を用意しておいて。
なお、2匹目を順番にケージから出す時は、1匹目2匹目に限らず、先に弱い性格の犬を出し、後で強い方をだすのが◎。
その際も、ケージは1つ、弱い方の犬の逃げ場用として開けておくようにしよう。
多頭飼いの住み分け方法
多頭飼いが成功して、いくら仲良しになったからといっても、犬同士がお互いに安らげる時間は必要。
そのために、ケージは頭数分をできでば用意しよう。
食事は横取りなどのトラブルを防ぐために、それぞれ別の部屋で食べさせるか、おのおののケージの、扉を閉めた状態で食べさせるようにしよう。
なお、もしもケージが同室に置いてあって、お互い吠えるようなら、別室におくとよいだろう。
必要なルール
どちらが強いかをきめるのは犬同士。
むやみに年功序列にせず、先住犬が護る姿勢なら、それを受け入れたほうが平和にいく。
また警戒吠えやチャイム吠えなどの問題が増えたと感じたら、専門家に相談するなど早めに対処を。
それぞれの水を飲む量、排泄物などを観察して病気の早期発見につとめたり、ガムなどを取り合うならケージの中でしか与えないなど危険回避することも大切。
トラブル対処法
先住犬がすねる場合は、かまわれたいだけなので、そのままの生活で良し。
2匹目を威嚇する場合、2匹目が一瞬ひるんでもすぐ立ち直るなら問題なし。一緒に散歩して、慣らそう。
2匹目がへこみ続けるなら合わないので、別室で飼うなどして離して。
動物病院へ行くレベルのケガをするなら、新しい飼い主さんを探すのが懸命。
下痢が続いて元気もないなら動物病院で診察を受け、かつケージなど1匹目の安住の地を確保すること。
その上で、1匹でいた頃のように、飼い主との1対1の時間をつくってストレス緩和を。
トラブルは飼い始めのみならず慣れてからも起こりうるのでその都度早めの対処をして。
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Shi‐Ba vol.42『多頭飼い成功の秘訣を探る 柴犬兄弟船』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。