愛犬がヒマさえあればペロペロと足先を舐めていることはないだろうか?もしかしたら単に癖なのかもしれないが、ストレスや病気が原因の可能性もある。そこで、今回は犬の足先に起こりやすい皮膚病である指間炎について、その原因や症状、治療方法などを解説しよう。
1.指間炎の原因は?
1-1 一般的に多い原因が異物反応
1-2 アレルギー、アトピーが原因のことも
1-3 精神的な問題から起こることも
1-4 その他の原因
2.こんな様子がみられたら動物病院へ
3.指間炎になったらどうしたらいいのか?
4.勝手に薬は塗らないこと
5.指間炎にならないためには?
6.年齢を重ねるとともに気をつけたい
指間炎の原因は?
指間炎とは、文字の示すとおり指と指の間の皮膚に炎症が起きる病気。指の間だけでなく、犬の足裏にある肉球の間も合わせて指間炎という場合もある。
指間炎の原因として多いのは、外傷など異物反応、アレルギー、アトピーによるもの。変わったところでは、栄養性によるものがある。おかしいなと思ったら必ず動物病院で診察してもらうことが大切。
■一般的に多い原因が異物反応
よほどのことがない限り、犬を飼っていれば毎日の散歩は欠かせないもの。散歩の際にケガをして、傷口に砂や小石がはさまったままになることもある。
犬は人間と違い、反対側の指を使って自分ではそれらを取り除くことは当然できない。その部分を舐めて取ろうとする。
舐めることで皮膚を舐め壊してしまったり、また、異物がはさまっていることで物理的圧迫が皮膚に加わり、炎症が起こってくる。
砂や小石以外にも、草の実、トゲや木片、ガラスなどが傷口に入ったままの状態で皮膚がふさがってしまうこともある。
中に入った異物が刺激となって炎症を繰り返すケースは多い。
■アレルギー、アトピーが原因のことも
異物反応が原因の場合は、異物がある場所だけだと単発でなることも多く、あっても数ヶ所。局所のみが腫れるという状態。
しかし、アレルギーやアトピーが原因で発症した場合は、だいたい全部の足に症状が出る。
そして、アトピーならば、足だけに皮膚の炎症が起きているのではなく、目や口の周り、耳、足でも指先だけではなく、腿の内側だったり、お腹周りなどにも症状があったりするもの。
また、4本の足にのみ炎症を起こしている場合には、アレルギーのひとつとして位置づけられるものに、かぶれ(接触性皮膚炎)というものもある。
まれに、土やコンクリートなどが体質に合わない犬もいるそう。そのため、いつも接触している足の部分が真っ赤に腫れてしまうこともある。
■精神的な問題から起こることも
足先が痛くも痒くもないのに、舐めて皮膚炎を起こしてしまうこともある。
犬にとってなにか非常にストレスがかかることがあり、人間の赤ん坊が指しゃぶりをするように、足を舐める癖を持っている犬もいる。自分の気持ちを落ち着かせようとして舐めるのである。
そういった場合、たいていは前腕部分を舐めたりするが、中には足の裏や指の間を舐めたりする犬もいる。大体同じほうの足を舐めている。
また、足を舐めているという行為は、ストレスからだけだと限らないようだ。足にしびれ感がある場合も舐めることがある。
しびれが気になって何度も舐め続けていれば皮膚炎を起こしてしまう。しびれ感があるとすれば、椎間板ヘルニアなど、神経や筋肉になんらかの異常があることも考えられる。
■その他の原因
これらの原因の他にも、ばい菌やニキビダニ(ダニ)、カビなどの感染症によっても指間炎は起こる。ニキビダニの症状は全身に現れるものだが、初期の場合は足だけに症状がでることもある。
こんな様子がみられたら動物病院へ
1.指の間や肉球に異常がみられる
2.足を気にして、よく舐めている
3.いつもの歩き方と違う
指の間や肉球をケガした、異常がある場合には勝手に薬を塗らないようにして動物病院へ。
足をやたらと舐めている場合にも何かあるかと考えられる。犬によっては飼い主が見ていないところで足を舐めていることも。
同じところばかりを舐め続けていれば、その部分の被毛が変色してくるので、日頃から被毛のチェックをしておこう。
足に痛みがある場合には蛇行することがあるので、愛犬の様子がいつもと違うと思ったら必ず動物病院へ。
指間炎になったらどうしたらいいのか?
どの原因で指間炎が起こったかにより、治療方法は違ってくる。症状を見て、その症状によってまず最初に何をするべきかは獣医師が判断する。
膿を持っているという場合でも、異物が原因の時と、単純にばい菌が入って膿んでいる場合では治療法は違う。
多くの場合は異物が入っていて二次的にその周りに細菌が入ってきたりするが、必ずしも異物が入っているとは限らない。
犬の足はもともとはだしで歩くようにできている構造なので、そこに異常が起こるということは、よほどなにかの刺激や異物が加わっていない限りめずらしいこと。
異物や可能など局所的なものを除いては、ほとんどが全身性疾患のひとつの症状として足に出ているものと考えられる。
指間炎は症状によって様々な検査をすることになる。検査には毛検査、皮膚掻爬検査、針生検などがあり、炎症を起こしている原因を調べる。
それ以外に骨や神経によるものが疑われる場合にはレントゲンを撮ることもある。
指の関節に炎症があると、骨棘(こつきょく)が伸び、それが刺激になっていて、患部が晴れ上がる場合もある。人間でいえば外反母趾やタコみたいな状態。
外見からだけだと指間炎と間違えやすいので、レントゲンを撮って判断することになる。
他には血液検査や、アレルギー検査などを行うこともある。
異物が入っていることが判明したら手術で取り除くことになる。指間炎を放置しておくと、慢性化して治りにくくなる。
何度も繰り返し炎症を起こす時には、切開して中に異物が入っていないか調べる必要がある。木片や草の実、フケや被毛など、レントゲンで写らないものが入っている可能性があるかもしれないからだ。
また、検査で腫瘍が発見された場合も必要に応じて手術となる。指の間は神経や血管などがとても複雑に入り組んでいる部分なので、手術もしにくい箇所だ。
くれぐれも炎症を慢性化させないためには、早期発見・早期治療がなにより大切。
勝手に薬は塗らないこと
「足が腫れているね、ちょっと薬を塗っておけばいいや」は大間違い。飼い主さんへの注意点として、できるだけ勝手に薬は塗らないこと。
とくに軟膏類はベタベタする。犬はベタベタ感が大嫌い。薬を塗った部分を舐めてしまい、舐めることでさらに炎症を引き起こすことになってしまう。
また、薬を塗って一旦は炎症が引いたとしても、なかなか完治はしない。そうなってから動物病院に連れてきても、何が原因なのか診断するのに時間がかかってしまうこともある。
炎症を起こしているなと思ったら、なるべくそのままの状態で早めに病気を獣医師に診せること。それが結果的には病気を早く治すことになり、治療費も安くすむことにつながる。
指間炎にならないためには?
1.足を洗ったらよく乾かすこと
足を洗ったらとにかくよく乾かすことが大切。タオルで拭くときはゴシゴシこすらずに。足を触らせないならタオルの上を歩かせて乾かす。
2.梅雨時から夏場は特に注意を
アレルギーやアトピーなど、皮膚病は梅雨時から夏場にかけてが悪化しやすい時期。季節柄、指の間もムレやすいので、こまめにチェックを。
3.普段から爪は伸ばさないようにする
爪が伸びると指が浮き、足の位置にズレが生じる。関節に負担がかかり、それによって刺激が生じ、犬が気にして舐めることになりかねない。
4.若いうちからよく散歩に行って肉球を鍛える
散歩によく行くと、足が鍛えられ、肉球が発達する。同時に指の間も鍛えられる。散歩が少ない犬ほどトラブルが起こりやすい。
5.くれぐれも肥満にさせないように気をつける
肥満になれば足に負担がかかるのは当然のこと。関節炎を起こし、しびれや痛みなどから足を舐めることになりかねない。
年齢を重ねるとともに気をつけたい
日頃から気をつけておきたいこととしては、上でまとめたものを参考にしてほしい。
そして、普段から愛犬の足や指の間をチェックしておくこと。おとなしく足を触らせてくれない犬ならば、せめて足のかたちや被毛の色だけでも確認しておくようにしたい。
指間炎に限らず皮膚病というのは、飼い主さんへのサインのようなもの。愛犬の体の中で何か異常なことが起こっているのだと思ってあげよう。
痒がっている、赤くなっている、脱毛しているなど、いつもと違うなということに飼い主は気付いてあげたいもの。単なる湿疹だろうと軽く考えないこと。
ほうっておけば後になってひどくなることもある。生まれつき皮膚が弱いということもなく、ある程度の年齢で皮膚に異常が出てきたときには、とくに気をつけてあげたいもの。
4歳を過ぎて、皮膚病がでてきたなら、感染症によるもの、ばい菌やニキビダニ、カビなどが原因ならば、必ずその犬の置かれている日頃の生活環境や体のことなどをきちんと考えなければいけない。
炎症を起こしている部分だけを治療し、今のところ様々な検査をして、どこも異常は見当たらないとしても、数ヵ月後に、そんな皮膚症状から実は癌があったとわかることもある。
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Shi‐Ba vol.23『日本犬に多い、指間皮膚炎について知っておこう お宅の愛犬、やたら足を舐めていませんか?』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。