ドッグランでよその犬に追いつめられたり、他の犬が来た時だけ、いつもは使わないオモチャを噛んで見せびらかしたり。“これって意地悪?”と思う犬の行動を探ってみよう。
犬のいじめにまつわる Q&A
Q.いじめられてる犬を他の犬がかばうことはある?
対立を避けさせようとすることはある
ドッグランで遊んでいる時、“ちょっとケンカが起きそう”といった雰囲気の悪い状態になると、その犬同士の間にさっと割って入る“カットオフ行動”をする犬がいる。
緊張が高まっていたその場の空気が沈静化することがあるので、人から見るとかばって見えたりケンカの仲裁をしているように見える。
家庭の場合は1匹の犬に爪切りをしようとして、その犬が嫌がったり怖がっている時に、もう1匹が飼い主の手を舐めてくることも。
Q.遊びがエスカレートしていじめてしまうことは?
仲のよい犬同士でも油断は禁物
何匹かで追いかけっこをして遊んでいるうちに、それがエスカレートしてしまうことはよくあるようだ。
追いかける側はどんどん興奮が高まり、追いかけられている側は途中で恐怖を感じるので、“ちょっとまずいぞ”と思い、一旦動きをとめて相手にカーミングシグナルを送る。本来なら相手も“これ以上は追いかけないほうがいい”と受け止めるが、興奮しすぎていると動きが制御できなくなり、仲が良い犬同士でもケンカに発展する可能性がある。
遊びで興奮しすぎている時は人間が介入し、呼び戻して犬を落ち着かせるなど、犬の動きを一度とめてあげよう。
他の犬との遊び方が上手な犬は犬との付き合い方を学習していて、そこまで他者を追いつめないもの。若い犬や他者との関わり方をよく知らない犬が陥りやすいので気をつけること。
Q.犬にも“いじめられやすいタイプ”はいるの?
一概には言えないがいることはいる
一概には言い切れないが、ワーッとみんなの中に出て行って、周りをドーンと突き飛ばしてしまうなど、周囲の状況が読めずに全体的に動きが雑な感じだったり、しょっちゅう吠えていて『あいつ、うるさいな……』と日頃から他の犬から嫌がられているタイプがいじめられやすい傾向がある。
また同じきょうだいの中でも明らかに体が小さかったりあまり反撃してこないタイプなどが、いじめられやすいような気がする。
Q.いじめられた犬の性格が変わることはある?
行動の変化はあり得る
性格の変化は少ないかもしれないが、行動の変化は起こり得るだろう。
強い衝撃がある一定の時期に起きたり、何度も同じ嫌な経験を積み重ねることで、いわゆる“トラウマ”になってしまう可能性がある。
ちなみに、生後半年くらいまでの間に、他の犬にひどく攻撃されてケガを負うなどすれば、治療のためにしばらくの間散歩に出られないこともあるだろう。最も大切な成長段階で、他者や外の世界に慣れるという社会化の機会を失うことになり、その後の行動に大きな変化が出てくることも考えられる。
1歳未満の時には外の世界やいろいろなできごとに慣らせようと、愛犬をいろんな場所に連れて行く機会も多いもの。せっかくの愛犬のための“社会化”が“トラウマ”にならないよう、細やかな配慮をしていこう。
Q.犬同士でもいじめの加勢はある?
一概には言えないがあることはある
仲のいい犬Aが知らない犬Bを追いかけていた場合に、Aと仲が良い犬Cが遊びに参加するような感覚で、BをAと一緒に追いかけてしまうことはある。
ただ、AとBの間にトラブルが起きている時に、Cが全く別の犬を攻撃したり、Bではなくふだん仲が良いAをいじめることもあるだろう。
犬の関係性はその場の状況で左右されやすいのも大きな特徴。
Q.いじめっ子タイプの犬もいるもの?
性格にもよるがつけ狙う子はいるかも
他の犬にはやらないのに、特定の犬のそばにわざわざ近寄っては、“ウーッ”とうなってけしかけ、相手がキャンと鳴いて他の犬がワーッとやってくると、いつの間にかその集団の外で、ケンカの様子を見ていることがある。
外出先にはどんな性格の犬がいるかわからないもの。愛犬がトラブルに巻き込まれないよう、飼い主は周囲の状況に目を光らすべし。
多頭飼いの注意点
■親やきょうだい間で相手を傷つけることはあるの?
一般的には少ないが、親子関係では我が子を傷つけることがまれにある。
例として母犬が生後1ヶ月前後の子犬が耳を噛み、縫合手術をしたケースがある。母犬自身が元々精神的に不安定で、“物を守る”行動もよく見られ、さらには環境や体なども繁殖に適さなかった可能性があったという。
母犬にとって子犬は本来守らなくてはならない存在だが、子育てで抱えていた強いストレスと元来の性質など、様々な悪い条件が重なって起きた不幸なケースと言える。
きょうだい関係では“なんとなく標的になりやすい子”はいる。
しかし犬界では、生まれた時から強い子はよく出るオッパイを取って、弱い子がはじき出されてしまうなど、いじめというよりは、生存競争の中でのことであって、きょうだいの中の1匹だけがガブガブ噛まれたり、深刻なケガをすることは、ほとんどの場合はないだろう。
ただし、一緒にさせておくとケンカが起こりやすいといったきょうだい関係はあるかもしれない。
■多頭飼いで一方がいじめられている時の見分け方は?
犬は言葉を話すことができない。飼い主が“うちの犬達は仲良くやっているはず”と思っていても、1匹の犬が嫌な思いや強いストレスを感じていることもあるかもしれない。
片方の犬がいつもじっと我慢していたり、一定の場所から出てこようとしない場合は、相当追いつめられていたり、出てくると必ずもう1匹の犬の標的になってしまって嫌だから、などの理由が考えられる。
片方が犬同士の遊びに乗らない、追いつめられた時にギャンギャンと言い返している、一定の場所にずっといて動かない、といった様子が見られたら注意が必要だ。
思い当たる場合はしつけの専門家に相談して、住環境や生活スタイルを見直してみることも大切だ。
■どんな組み合わせだといじめが起きにくいのか?
飼い主としては、愛犬たちの間にいじめなどは存在せず、日々平和に暮らしてほしいと思うもの。性別や年齢差など、いじめが起きにくい組み合わせなどはあるのだろうか。
自然界ではオスはメスに受け入れてもらって交配することがほとんど。オスとメスが同居している場合は、メスのほうが強いというケースをよく聞くが、それで犬同士の関係が丸く収まっていることも多いようだ。
また年齢面では、年齢が近いほどケンカは頻繁に起こりやすいそう。犬の攻撃性は同時に出るのではなくて、片方が何かやったことに対して、片方が発露してきて、それを繰り返すことにより仲が悪くなったり、対立がひどくなるもの。
また、1匹目と2匹目の年の差が大きい場合だが、先住犬がシニア期に入ると、若い犬からしつこくされることを嫌がることも出てくる。しかし、シニア犬は年とともに物事に執着しなくなってくることも多いので、いろいろな局面で譲ることも出てきて、若い犬のほうも徐々にそれを受け入れていく、というのが一般的な若い犬と年をとった犬との関係。
ただし、“なんとしても先住犬を上の立場にしておいてあげたい”と飼い主が固執しすぎると、犬達の関係がうまくいかなくなることも。
多頭飼いにおける犬間の力関係の入れ替わりは、飼い主が介入せず犬同士に任せておくのがいいようだ。
■これから多頭飼いを考えている場合
大切なのは、1匹目の犬をいろいろな意味で飼い主がコントロールできるようにしておくこと。
吠え、噛みつき、守る行動、散歩の引っ張り、お手入れが問題なく行えるなど、すべて完璧でなくてもよいので、“オールマイティになんとなくできる”状態にしておくと、2匹目の犬が少し神経質でも、上手に関係性が築けるものだ。
また2匹目が成犬でも子犬でも社会化はきちんとさせる、犬同士の関わりだけではなく、それぞれの犬が飼い主と1対1の関係を作ることも必要。
■小動物をいじめる!? 場合
犬が猫を追いかけたり。人から見ると“いじめ?”と思える場面も、猫が懲りずに犬に寄ってくるようなら、遊んでいることも考えられるそう。
しかし、自分よりも小さい動物はある日突然、捕食対象になることもある。できるだけ動物だけにはさせず、人の目が届く時に一緒にさせるようにしよう。
仲の良い共同生活者になることもあるが、犬の本能はそれだけでは計り知れないことがあるので十分に注意しよう。
愛犬は他の犬と仲良くできると過信していない?
他の犬が集まる外出先やドッグランでは、遊びに誘われたり誘ったりした時に、愛犬や相手の犬がそれに乗っているかどうか、楽しめているかどうかを見極める。
一方が我慢していたり、追いつめられていたりする様子が見られるなら、人間が間に入って追いかけっこなどを中断させることも考えよう。
また、犬同士のあいさつの場面では執拗に匂いを嗅ぎまくると、相手が「もうやめて!」とサインを出しているのにやり続けてトラブルになることも。これは犬とのあいさつを知らない社会化不足によるもの。
「うちの犬はよその犬と仲良くできる」と過信しない、ドッグランなどでは愛犬とよその犬の行動にも十分気を配る、日頃から愛犬の社会化の練習を行う、ことが大切なのだ。
ストレスをなくせば犬のいじめもなくなるはず
他の犬を追いつめた時などの相手の反応が面白くてしつこくしているのが、人から見るといじめに見えたりするもの。
でも、何匹かの犬で遊んでいて、追いかけられている犬が1匹いたとしても、常にその子が標的になるわけではなく、状況によって左右されやすいのが、人のいじめとは違うところかもしれない。
特定の人を“いじめてやろう”と悪意を持ってねちねち追いつめる人間に比べれば。状況によって左右されてしまう犬って、ある意味考え方や行動がシンプルだし、対処もしやすいのかも。
ただ最近は、犬同士のあいさつが上手にできず、相手が嫌がっているのにしつこかったり、パッと気持ちが切り替えられない、少し“粘着質”の犬が増えているようだ。
環境の変化、運動不足、飼い主との関係を上手に築けていない、家族間の不和、社会化不足で怖い物が多い、といったことは犬にとっての大きなストレスになり、ひいてはそれが原因となって他者への攻撃やいじめに発展することも考えられる。
犬も人もストレスを溜めない生活を送ることが大事だ。
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別
Shi‐Ba vol.77『犬の世界にも…… いじめや意地悪ってあるのかな?』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。