肛門にトラブルがあると便を出す時に排泄が上手くできなくなり、健康を害してしまう。デリケートな部分なだけに早めの対処が必要だ。今回は犬の肛門の病気について学ぼう。
肛門周りの異常に注意せよ!
肛門周りのトラブルは意外に多い。肛門嚢炎、肛門周囲腺炎、会陰ヘルニアは肛門で多い疾病。散歩の時、肛門が膨らんだり、ベタベタして汚れたりしていないか観察しよう。地面にお尻をこすりつけたり、肛門をなめたり、お尻を気にする仕草を見せるなら肛門トラブルを疑おう。
肛門絞りなどで周囲を清潔に保ち、異常がないか留意することが大切だ。ただし清潔に気を配るあまり、何度もティッシュやアルコール系のウエットティッシュで拭くのはNG。刺激が強過ぎ、炎症につながることもある。
ちなみに人間で多い肛門のトラブルは「痔」だが、犬にはその心配はない。うんこが太すぎて切れ痔になることもあるが、治療が必要になることはない。イボ痔や痔ろうもゼロに等しい。脱肛になっても、すぐに引っ込むので心配はない。
犬の肛門の病気一覧
■肛門嚢炎
肛門腺の分泌液を溜める肛門嚢の中に炎症が起こる病気。腫れ上がり肛門腺の出口が狭くなると外に分泌液を出せず、悪化する。中程度の症状なら絞れば出てくるが、悪化すると中で破裂し、ひどいと肛門の付近に穴が開いてしまうことも。犬がお尻を引きずっていたり、肛門を何度もなめていたりしたら要注意だ。なお肛門嚢の分泌量は個体差があるので溜まりやすい子は、こまめに絞ることが不可欠。また絞った分泌液が、血が混じった赤、膿のような黄色、緑色だった場合、細菌感染している可能性がある。動物病院で診てもらおう。
■肛門周囲腺炎
肛門を取り巻く肛門周囲腺は主に皮脂を分泌している。皮脂の過剰な分泌により肛門周囲腺に炎症が起こってしまうのがこの病気だ。肛門がベタベタと汚れ、肛門を横から見た時、肛門部だけがぷくっと膨らんでいたら要注意。違和感から犬が肛門をなめ壊すと化膿し、炎症が悪化する。肛門周囲腺炎はメスもなるが、基本的に未去勢で歳をとったオスに多い。
■肛門周囲腺腫
肛門を取り囲むように存在する分泌腺・肛門周囲腺に良性の腫瘍ができる病気。硬いしこりができるため、犬は違和感からお尻をこすりつけたり、なめ壊したりしてしまい、化膿を併発することも多い。しこりが排便を妨げることもあるので、小さいうちなら切除するか、去勢をすると引っ込む場合もあるので去勢手術を試みて様子を見る。発病には男性ホルモンが関与しているため、高齢化した未去勢のオスに多い。
■アポクリン腺がん
肛門嚢の中には、アポクリン腺とう汗腺が存在している。そのアポクリン腺の中に腫瘍ができてしまう比較的メスに多い病気だ。肛門嚢の中に分泌液が溜まりやすい犬の中には、肛門嚢の中をアポクリン腺ガンが占拠している場合もある。肛門腺を絞っている時に出血したり、指に固いしこりが触ったりしたら要注意だ。針生検などで組織を切り取って良性かどうか調べる必要がある。早期であれば腫瘍、肛門嚢の摘出を考える。
■会陰ヘルニア
外陰部と肛門の間にある会陰がポコッと膨らんでしまう病気。原因は骨盤隔壁(会陰部)の弱体化。年齢と共に内臓を支える骨盤隔壁が薄くなり、吠えた拍子などに腸や膀胱、前立腺などの臓器が筋肉線維を突き抜け、外に飛び出てヘルニアを起こす。放っておくと排便・排尿に困難が生じるため手術が必要だ。男性ホルモンの影響や腹圧の上昇が引き金になるので、去勢をする、無駄吠えをさせないよう訓練する、肥満を解消するなどが予防策となる。
■脱腸
高齢になり、肛門括約筋が弱くなってくると、排泄でいきんだ拍子に腸が反転して肛門からボーンと飛び出すこともある。これが脱腸。脱腸は出血も多く、緊急手術が必要となる。ただし柴犬は稀。
■外傷
肛門腺が溜まりやすい子は、お尻がムズムズするため、お尻を地面に引きずることも多い。平らな地面なら問題ないが、突起などがあった場合、肛門の粘膜を傷つけてしまうことがある。またアトピー性皮膚炎を持っている子は、肛門周囲の皮膚、シッポの裏にかゆみなどの炎症が起きやすく、それをこすってしまいがちで、それに伴うなめ壊しも多い。放っておけば化膿することもあるので動物病院へ。また肛門は急所でもある。散歩途中、他の犬に肛門をガブッとやられることもあるので注意したい。
犬のウンコは健康のバロメーター
■色・形
色は普通の茶色系なら問題なし。形もウインナー状になっていれば問題ない。なお、とぐろを巻いたマンガのようなうんこは軟便なのであまりよくない。他にも寄生虫、血便などの異常があったら、動物病院で診てもらおう。
■質感
ゆるすぎず、つかんだ時、形がくずれない硬さで、ほんのり湿り気を帯びているのがベスト。食べているものに左右されるため、ダイエットフードならポソポソ、野菜ならふわっと、肉を食べていると黒っぽく固くなることが多い。
■回数
いいうんこは1回の散歩で1~2回出る。子犬だったら3~5回。よく食べる子は回数も多いが、ひどい下痢になってないなら大きな心配はない。上記の悪いうんこの例にも記したが、1日に何回も出て下痢の状態が続くなら動物病院へ。
■悪いうんこのポイント
便秘、下痢は悪いウンコ。下痢の原因は様々だが、単に消化に悪いものを食べただけかもしれないのでもう少し様子を見よう。水溶性の血便が出た、1時間に何度も下痢をしている場合は、脱水症状を起こすこともあるので早く病院に連れて行こう。また、急にウンコが細くなった場合は腸の異常を疑いたい。
肛門に異常があっても、うんこの形、色、ニオイにそれほど影響はない。ただ、うんこの出方がおかしい場合は肛門の異常を疑おう。うんこがなかなか出ない場合は、誤飲により肛門に異物が詰まっている可能性が。また歩いている最中にポロッと落ちてしまうなら肛門括約筋のゆるみが原因かもしれない。
加齢が進んだ犬の場合、肛門が開きっぱなしになることもある。ベストな肛門は、うんこをした後、すぐにキュッと締って、汚れてなく清潔。大きなうんこをした時、稀に脱肛気味になるが、健康的な犬ならすぐ元通りになる。
また、うんこと一緒に未消化のものが肛門にぶら下がることがある。草や髪などの柔らかいものなら、そのまま引っ張って大丈夫。
しかし固いものの場合、プラスチックなどの誤飲が考えられ、無理に引っ張ると直腸を傷つけることも。出ない場合は動物病院で診てもらおう。便秘、下痢は悪いうんこ。下痢の原因はさまざまだが、単に消化が苦手なものを食べただけかもしれないので少し様子を見よう。
水溶性の血便が出た、1時間に何度も下痢をしている場合は、脱水症状を起こすこともあるので動物病院へ急ごう。また急にうんこが細くなった場合は、腸の異常を疑いたい。
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Shi‐Ba vol.77『みんな気になるアイツの平和と安全を守る! コーモントラブル110番』より抜粋
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