犬の病気すべての中で、口腔内の疾患が一番多い。犬の口がくさいなら病気の可能性も考えられる。愛犬の歯をチェックしてみよう!
1. 愛犬の歯周病チェック
2. 舌よりも歯のコケをチェック!
3. 歯垢は3~5日で歯石化する!
4. 歯周病になりにくい犬の性格
5. 年齢ごとに気をつけたい口のこと
6. 口の素朴な疑問
7. 口や歯にOKなもの&NGなもの
8. 口以外の病気が歯周病を悪化させる?
愛犬の歯周病チェック
【口臭】どぶ臭いニオイはまず歯周病を疑うべき
口腔内疾患のない健康な犬の場合、口のニオイはしないのが普通。
歯周病の軽い症状の代表的なものとして、口臭が強くなることがある。犬の口に鼻を近づけた時に、どぶ臭いような嫌なニオイがする場合は、ほとんどが歯周病であると考えていい。
歯周病になると、口臭の他、歯肉の腫れや出血などの症状も見られる。老化現象などと軽視せず、動物病院へ行こう。
なお、口内炎にかかった場合でも口臭が出ることがある。
【だ液】赤や白のだ液が出たら歯周病の可能性大
歯周病がひどくなると、歯肉から膿や血が出ることがある。
すると通常は透明であるはずのだ液が白くにごったり、血液まじりで赤くなったりすることがある。
ちなみに、だ液は歯の表面を洗い流す効果があるため、だ液が多い犬のほうが歯石はつきにくい。
なお、人間の場合はストレスでだ液の分泌が抑えられることがあるが、犬の場合はだ液量とストレスの関連性は明らかになっていない。
舌よりも歯のコケをチェック!
人の舌の表面につく白いものを舌苔といい、口臭の原因になる。犬の場合、舌苔の存在や影響については明らかにされていない。
しかし、それよりも歯の表面につく歯垢(しこう)による悪影響ははっきりしているので、舌よりも歯のケアや歯周のチェックを意識することが大切だ。
歯垢は3~5日で歯石化する!
犬の場合、歯垢が歯石化するスピードが速いので、3日以内に歯ブラシを使って汚れを取る歯磨きケアが必要。毎日の習慣にすると覚えやすい。歯と歯肉の間を磨くこと。
■point
・大切なこと
リラックスした雰囲気でケアに慣らすこと。歯周病や口内炎などの病気があると痛がることもあるので、治療してからケアの実践を。
・奥の歯を磨くには
上顎の犬歯の後ろを包むようにつかむと、口を開かせやすい。口を閉じると歯が頬に当たり痛むため、犬が自然と口を閉じなくなる。
・歯を磨くタイミングは?
細菌は就寝時に繁殖するので、夜寝る前がベストだが、いつやっても◎。ついた歯垢を取れば効果的なので、その後に食事をしてもいい。
■歯の磨き方
1.口を触ることに慣らしていく
オヤツを見せながら口の周りを触り、犬が落ち着いていたらオヤツをあげる。最初は短時間から始め、徐々に時間を延ばしていく。慣れたら唇をめくることにもトライしよう。
2.ガーゼ磨きに慣らしていく
水で濡らしたガーゼで歯の表面を優しく拭く。犬が落ち着いて拭かせてくれたらオヤツをあげる。短時間から始め、徐々に時間を延ばす。乾いたガーゼは逆効果なので必ず濡らして。
3.歯ブラシでの歯磨きに慣らす
柄が長くヘッドが小さく、毛が柔らかい歯ブラシが◎。歯磨きペーストや肉汁で濡らし、歯の表面に当てる。歯ブラシが少したわむくらいの力がよい。できたらオヤツを。短時間から慣らす。
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歯周病になりにくい犬の性格
同じ年齢、性別、食生活を送る、イタズラ好きの犬とおとなしい犬がいた場合。
オモチャなどをよくかむイタズラっ子の犬は、歯が磨かれ、口の中を洗い流すだ液の分泌が盛んになるため歯周病になりにくい。
一方で、かむ機会の少ない、大人しい犬は、だ液が分泌されにくいので細菌が繁殖しやすく、歯周病になりやすい。
年齢ごとに気をつけたい口のこと
■幼犬
→子犬のうちから歯磨きに慣らせば一生涯健やかに
早いうちから口を開けたり、歯磨きすることに慣らしておくと、一生涯歯の健康を保ちやすくなる。
オヤツなどをうまく使いながら、根気よくトレーニングを。ガーゼだけでもやらないよりはいいが、最終的にはブラッシングできることを目指しておこう。
生後4~7ヶ月で、乳歯が永久歯に生え変わる前に歯の周囲が赤くなるが、そこは痛いため、その部分は歯磨きを避けよう。
乳歯が抜けずに残る乳歯遺残は、ほうっておくと炎症などが起こる可能性がある。生後7ヶ月になっても乳歯が残っていたら、強制的に抜く必要がある。生後6~7ヶ月くらいのタイミングで動物病院で確認してもらうと安心だ。
■成犬
→歯磨きの習慣で歯周病を予防&口内チェックも
年齢を重ねるにつれ、歯垢や歯石の蓄積が増えてくるため、歯周病が起きやすくなる。
3歳以上の犬のほとんどは歯周病だが、早期に発見して治療すれば大事に至らずに済むので、日常的に口の中のチェックをしておきたい。
歯のケアができない犬の場合は、成犬からでも慣らしていくことはできるので、口の周りを触ることから少しずつでも慣らしておきたい。
最終的には歯ブラシを使えるようになるまで、根気よくトレーニングしていこう。
歯周病の他、ものをかじることによって歯の破折やこう耗も起こりやすい。ガムやオモチャは適度なかたさのものを選び、オモチャも長時間かませないようにしておこう。
■老犬
→口内を観察し病気の早期発見につとめること
口腔内の粘膜や舌などに口腔内腫瘍ができることが多くなってくる。良性のものもあるが、メラノーマなど悪性のものもあり、その場合は外科的手術が必要となることも。
日常的に犬の口を開けて、できものができてないかをチェックしよう。歯周病にかかる率もさらに高くなってくるので、歯石がついていないかどうか、口臭がしないか、食事の時の行動に変化はないかなどを確認しておこう。
歯周病が悪化することにより起こる、下顎の骨折、歯根膿瘍などの病気にかかった場合、老犬だと治療する際に体に負担がかかってしまうので、早期発見が肝心となる。
口の素朴な疑問
Q.犬の口にはどのくらいの菌がいる?
A.数百種類いるが、歯周病菌は数種類
口の中には菌が500~800種類もいる。全部の菌が歯周病を起こすわけではなく、歯周病菌は数種類のみ。ちなみに歯肉炎には、すべての菌が原因している。菌には人と共通するものもあれば、違うものもある。バルボウィルスやジステンパーなどは愛犬から感染することもあるので、愛犬とのチューや口移し、犬がなめたものへの接触は控えめにしたほうが無難かも。犬同士の舐めあいなどでも感染することがある。
Q.犬にも銀歯はある?
A.破折などの際、銀歯での治療も
歯が折れた時などに銀歯をかぶせる事がある。ちなみに咬合が良くない場合は歯列矯正をすることもある。いずれにせよ、こうして治療できる動物病院は数件と少ない。
Q.草を食べることは歯によい?
A.歯磨き効果は期待しないこと
繊維質たっぷりの草を食べることで歯磨き効果がありそうにも思えるが、磨ける効果があるかは実際のところ謎。効果があったとしても、草をかむ歯は一部だけなので、期待しない方がいい。
Q.スプレーの効果って?
A.歯磨きの補助で使うならOK
酵素や洗浄剤の入ったオーラルスプレーは市販されているが、これだけでは歯の汚れを落とすことは難しいので、使う場合は、あくまで歯磨きの補助として考えたほうが無難。
口や歯にOKなもの&NGなもの
【ok】 適度なかたさのもの
●布製のやわらかいオモチャ
●その他、やわらかいガムなど
市販のガムの8割はかたすぎるので、選ぶ場合はしなるものを選ぼう。
【NG】 必要以上にかたいものなど
●骨、ヒヅメ
●ロープやかたいゴムのオモチャ
●牛皮、豚耳、アキレス
●キシリトール製品
犬の歯は人の歯よりも折れやすく、またかたいものを与えても顎が丈夫になるわけではない。テニスボールやロープなど比較的やわらかいものでも長時間噛むと骨がすり減ることも。キシリトールは高濃度だと肺不全や低血糖の原因に。
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口以外の病気が歯周病を悪化させる?
口腔内疾患の他に、別の病気を抱えている犬の場合、その病気のせいで口腔内疾患が悪化することも考えられる。
免疫機能障害、血液疾患、糖尿病、腎機能障害、副腎皮質機能亢進症、ストレス、皮膚病などを抱えている場合は、これを治した上で、口腔内疾患を治療できるよう、動物病院で相談するといい。
健康な犬でも歯周病にかかる可能性は高いので、口腔内環境を健康に保つために、生活習慣の見直しを。
粘着性の食事をとっている犬より、ドライフードの犬の方がかかりにくいというデータがあるので、食生活を見直すことで、歯周病が防ぎやすくなる。
また、日常的に歯磨きをしていなかった犬は、最終的に歯ブラシが使えることを目指して練習するといいだろう。
野生動物はほとんど歯周病にかからない。肉食動物は、餌となる動物をかんだ時に、その被毛、皮膚、皮下組織、脂肪組織、筋肉、内蔵、骨が歯の表面の汚れを削ぎ落してくれるので、歯垢がつきにくいからだ。家庭犬がこうした生活を送ることは無理だが、飼い主が良い環境を提供してあげることで、口の健康を保つことができるだろう。
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Shi‐Ba vol.65『犬のオーラルケアについて考える うちの愛犬の口がくさい!』より抜粋。
※掲載されている写真はすべてイメージです。