よく聞く歯のトラブル以外も知っておきたい!犬の口の中にできる病気

犬の歯の病気

愛犬の口の中を普段からチェックしているだろうか。口の中にできる病気にもいろいろある。できるだけ早めに見つけるためにも、どんな病気に気をつけたらいいのかを詳しく知っておこう。
 

 

健康チェック方法

健康な口かどうかをチェックするには、口を触られせてくれる犬なら、歯や歯肉、舌、唇など日頃から確認を。
 
・口を触らせてくれない犬の場合
口を触られることに慣れさせておくことが大切。だが、すでに嫌がって開けさせてくれない犬は、ハアハアと開口呼吸をした時やあくびをした時を利用してチェックを。

 
・触らせてくれる犬の場合

□歯肉・唇をぎゅっと押してパッと離す
犬の歯肉や唇を指でぎゅっと押してパッと離してみよう。指で押すとその部分の歯肉や唇は白くなる。指を離してすぐにいつもの歯肉や唇の色に戻れば正常だ。健康であれば普通は一瞬で戻るはず。色が元に戻るまで2~3秒かかるなら、何らかの原因で血液の循環が悪くなっていることが考えられる。

 
□唇をめくって内側の色を確認
上のチェック方法を唇で行う場合、唇のまわりが正常でも黒い犬は多い。黒いと指で押しても白くならないため、わかりにくいことがある。しかし、唇をめくってみると歯肉との境目は赤や黒色をしている。赤っぽいところを探して指で押してチェックしてみよう。

 
□歯のチェック
犬の歯は一般的に生後3週から乳歯が生えはじめ、生後2ヶ月までで28本が生え揃う。生後4ヶ月半頃から7ヶ月頃までに乳歯が抜けて永久歯に生え変わる。永久歯は42本。口のチェックで比較的見やすいのが歯。食べかすなど歯垢や歯石がついていないかをチェックしておこう。子犬の頃から歯磨きの習慣をつけておくことが大事。

 
□歯肉のチェック
健康な歯肉の色は、通常はピンク色をしている。犬によっては若干赤味が強いなど、個体差があるため、健康な時の色を把握しておくことが大切。歯肉の色が真っ白や紫色をしている、あるいは普段の色と比べて異常に真っ赤という時はおかしいと疑って。また歯肉にしこりのようなものがないかもチェックを。

 
□舌のチェック
舌の色、かたちをチェックしてみよう。色は歯肉がピンクであるなら、舌もそれと同等くらいのピンクをしている。白か紫色、部分的に黒くなっていてその部分がくぼんでいる、あるいは盛り上がっている場合は異常が考えられる。舌の裏側もしこりのようなものがないかチェックしておくことも大切だ。

 

口と歯の病気

 
呼吸に支障を及ぼす病気
【軟口蓋下垂】

▼原因・症状
上顎の奥の骨のないやわらかい部分が軟口蓋。人間でいうとのどチンコに相当する部分。軟口蓋が伸びて、下に垂れ下がってしまう病気。原因としては、生まれつきの奇形の他、肥満によって引き起こされる場合がある。主な症状としては、気道を塞いでしまうため、呼吸がしずらい、いびきをよくかく、興奮するとよくチアノーゼを起こすなど。ひどい場合は失神することもある。

▼治療
程度にもよるが、伸びて垂れ下がってしまった軟口蓋の部分を切除する手術を行うのが一般的。そのままにしていると喉頭軟骨が変性を起こしたりするので、できるだけ早めに行うことが肝心となる。肥満が原因となっているならば、減量させることも必要。柴犬の場合はそれほど多い病気ではないが、全く発症しないわけではないため、くれぐれも肥満にさせないよう気をつけておきたい。

 
上顎に裂け目がある状態
【口蓋裂】

▼原因・症状
上顎の硬い部分(硬口蓋)や口の奥のやわらかい部分(軟口蓋)のいずれかが、両方に渡って裂けて穴が空いてしまっている先天性の病気。本来なら口蓋は口と鼻とを隔てる役割をしているのだが、裂けていることで鼻と通じてしまう。そのため、ゴハンが飲み込みにくい、ゴハンが鼻から出てくる、発育が悪い、くしゃみをよくする、鼻がグズグズしているなどが主な症状。

▼治療
治療は基本的に手術を行うことになる。程度が軽ければ、手術後は普通に生活ができるようになる。だが、裂けている範囲が広いなど、あまりにもひどい状態だと手術が難しい場合もある。手術しても再発したり、状態が厳しい時は、食事をとることができなくなり、そうなると発育も難しくなってしまうため、ケースによっては安楽死させることを考えなければならない場合もある。

 
歯の周囲にかかわる病気
【歯周病】

▼原因・症状
たまった歯垢や歯石が原因で、歯肉炎など歯肉を含めて歯の周囲に起こる病気。主な症状は、歯肉が腫れて出血が見られる、口臭が強くなる。炎症が進むにつれ、歯石の細菌によって歯肉が退行し、歯槽骨を溶かしてしまう。また歯周病菌が原因となり他の病気を引き起こすことも。

▼治療
全身麻酔をして、歯の表面や歯肉ポケットにたまった歯垢や歯石の除去を行う。炎症がある場合は、抗炎症剤を使っていく。歯肉が退行し歯がぐらぐらしているなど症状がかなり進んでいる時は抜歯する場合も。日頃から歯磨きの習慣をつけておくことが歯周病予防につながる。

 
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口の内側が赤く腫れてしまう
【口内炎】

▼原因・症状
口の内側の粘膜に炎症が起こる病気。犬の場合は人間の口内炎のように白く潰瘍状になるケースは少なく、粘膜が赤く腫れたり、潰瘍を形成していることが多い。原因としては、何かをかじっていて口の粘膜に傷をつけたなど物理的なもの以外に、歯垢や歯石に含まれる細菌による刺激が多く、他に免疫介在性によるものも見られる。また、腫瘍が原因となって引き起こさせる場合もある。

▼治療
治療は口内炎を起こした原因によっても違ってくる。炎症を起こしている場合、基本的には抗生剤や消炎鎮痛剤などの投与や注射などで炎症を抑えていく。他の病気が原因となっているならば、引き起こしている病気の治療も必要となる。原因となる病気をコントロールできれば、口内炎も治まる可能性も高い。歯周病が原因なら、歯垢や歯石の除去を行うことが必要となる。

 

舌の病気

犬の歯の病気

舌が赤く腫れてしまう病気
【舌炎】

▼原因・症状
犬同士の喧嘩や、興奮して犬が自分の舌を噛んだりなどの外傷や異物による刺激、歯周病や感染症などが原因により、舌に炎症を起こす病気。舌のどこにでも起こる可能性がある。主な症状には、舌が赤く腫れる、痛みが出るために食欲が落ちてしまう場合が多い。進行すると舌が白くただれたり、よだれが多く出るようになってくる。また、舌炎から潰瘍あるいは舌壊死を招くこともある

▼治療
それぞれの原因にあわせて治療を行っていく。細菌や真菌など感染症が原因となっている場合は、抗生物質の投与などを行う。歯周病が原因となっている場合は、歯垢や歯石の除去、状態によっては抜歯などが必要となる。口の中にできた傷が原因の場合は、痛みなどの症状を抑えるための消炎鎮痛剤などを使い、対症療法を行っていく。口の中を洗浄し、清潔に保つことも欠かせない。

 
舌の表面が壊れてしまう
【舌の潰瘍】

▼原因・症状
舌の表面が何らかの原因によって強く壊されてしまい、舌の深部まで炎症が起きてしまう状態。原因には、舌炎が悪化して引き起こされるもの以外に、扁平上皮がんで起こるものがある。痛みが強いため、よだれがいつもに比べて多くなる、食欲が落ちるなどの症状が見られる。柴ではそれほど多い病気ではないが、全く発症しないわけではないので気をつけておきたい。

▼治療
原因となっている病気がはっきりしているものは、それぞれの病気にあわせて、それらの治療を行っていくことになる。舌炎から引き起こされているものであれば、上の「舌炎の治療」でも述べているように、歯周病や感染症などの治療を行う必要がある。同時に消炎鎮痛剤などで痛みを抑えていく。舌炎と同様に口の中を洗浄し清潔に保つことも欠かせない。

 
舌の裏が大きく腫れる病気
【ガマ腫(ラヌーラ)

▼原因・症状
舌の裏にある、唾液が分泌される唾液腺が何らかの原因によって炎症を起こし、塞がってしまう病気。唾液腺が詰まることで、本来なら排出されるはずの唾液がたまってしまい舌の裏が膨れてしまう。原因には傷など物理的なものや免疫がからんでいることもあるが、はっきりとした原因はわかっていない。舌が動かしにくくなるため、食べ物や水を飲み込みにくいなどの様子が見られる。

▼治療
治療には手術が必要となる。腫れている部分を切除し、詰まっている唾液腺を通すようにしていく。炎症を起こしている場合は、抗生物質などを用いて炎症を抑えていく。原因がはっきりとしていない病気のため、予防は難しいが、舌を傷つけることで引き起こされる場合があるため、できるだけ喧嘩や事故などを起こさせないようにすることが、少しでも予防につながることを忘れずに。

 

口の中の腫瘍

歯肉のまわりにできる腫瘍
【エプリス】

▼原因・症状
歯肉腫ともいわれ、歯肉の過形成が起こる病気。原因としては、物理的に何らかの刺激が常に加わっていることで引き起こされる。大きくなると歯がかくれてしまう。エプリスの場合、どちらかというと良性のものが多いが、中には悪性のものもある。勢いよく増えていくケースは悪性に相当することが多い。

▼治療
口の中に腫瘍のようなものができていたら、いずれの場合も、それが良性なのか悪性なのか、針生検あるいは一部を切除して病理検査してもらい診断をつけていく。治療としては、手術で摘出を行う。エプリスに悪性は少ないが、悪性であれば状態に合わせて治療を行っていくことになる。

 
黒い色をしていることが多い
【悪性黒色腫(メラノーマ)】

▼原因・症状
色素(メラニン)をつくる細胞が腫瘍化してしまう病気。遺伝的な問題や何らかの刺激などが原因となる。名前の通り、黒い腫瘍ができる。だが中には無色素性といって色素のない歯肉と同じような色のこともある。悪性度が高いほど発育が早いことが多く、1~2週間位でぶどうの房のようにポコポコと盛り上がってしまう。多くの場合、腫瘍が成長すると同時に口臭が異様に強くなる。また、食事などで患部が刺激されることでポタポタと出血が見られる。

▼治療
悪性黒色腫を含め、口の中にできる腫瘍は口腔内のどこにでもできる。腫瘍が小さく、口腔内の手前にできた場合だけは処置が必要だが、奥の方にできた場合は治療が難しくなる。大きく盛り上がって呼吸困難を起こしている場合は切除する場合もあるが、腫瘍の状態により、手術や抗がん剤、放射線治療が可能かを判断していくことになる。

 
口の粘膜にできる腫瘍
【扁平上皮がん】
 
▼原因・症状
口の中の粘膜が膨らんでポコポコとしたしこりができるものと、潰瘍になるものとがある。原因として、皮膚では紫外線の刺激が大きな原因となるが口の中では長期にわたる重度の口内炎や歯槽膿漏などの強い刺激が原因となっている。

▼治療
口の中にできた悪性の腫瘍は、種類はどうであれ、転移するスピードはそれぞれ違う。扁平上皮がんと判断された場合も、腫瘍の状態によって、どのような治療法を選択していくかは獣医師と相談しながら決めていくことになる。

 
歯肉にできる腫瘍
【線維肉腫】

▼原因・症状
歯肉にできる悪性の腫瘍。見た目は小さくても深部に広がっているものが多い。進行するにつれ顎の骨へと浸潤していってしまう。原因は他の腫瘍と同様に、遺伝的な問題や何らかの刺激などが影響していると考えられている。

▼治療
線維肉腫は、抗がん剤が効きにくいうえに予想以上に深部に浸潤していることが多いので、手術で摘出する際には入念な手術計画をたてる必要がある。放射線治療も有効。定期的に口腔内をチェックしてできる限り早期に発見することが大事。

 
血液のがんのひとつ
【リンパ腫】

▼原因・症状
血液中の白血球のひとつであるリンパ球ががん化した病気。リンパ腫にはリンパ球のタイプや発生部位によって多くの種類がある。はっきりとした原因はわかっていないが、環境要因や遺伝的な問題、ウィルスなどが考えられている。

▼治療
リンパ腫の場合は抗がん剤などによる薬物治療を選択していくことが多い。リンパ腫は年齢を重ねている犬だけに限らず、2~3歳の若い犬でも発症することのある悪性腫瘍である。

 

顎の腫瘍

犬の歯の病気

炎症から顎の骨が変形
【顎関節症】

▼原因・症状
顎の骨と頭の骨をつなぐ関節が何らかの原因によって炎症を起こし、さまざまな支障をきたす病気。原因にはいろいろあり、物理的に事故などで顎の骨が骨折や脱臼し、炎症が起こったことで骨が変形したり、重度の歯周病や耳の病気などから引き起こされることがある。症状は、口が開きにくくなるものから、全く開かなくなってしまうものまでと程度によっても違ってくる。

▼治療
程度にもよるが、早めに気づいて、状態が軽度であれば手術で治すことは可能。ただ、時間が経っていて顎関節がひどく変形しているなど、口が全く開かない状態になっていると手術でも完全に治すことは難しくなってしまう。もし、口から食事や水を摂ることができなくなった場合には、胃にチューブを通して(胃ろう)必要な栄養や水を補給をしていくことになる。

 
外傷以外にも起こりうる
【顎の骨折・脱臼】

▼原因・症状
固いものをかじるのを好む犬に多い傾向があるのが顎の脱臼。骨折は事故や喧嘩による外傷以外に歯周病や固いものをかじったなどが原因として多い。症状は程度にもよるが、脱臼も骨折も痛みと噛み合わせが悪くなるため、食事がしにくくなる。口のまわりを触られるのを嫌がることも。骨折の場合、折れたところから顎が垂れ下がる。骨折が片方だけだと見た目にはわかりにくいことも。

▼治療
脱臼の治療は麻酔をかけて、脱臼してしまった部分を元の位置に戻す処置を行う。元の位置に戻してあげれば普通に生活ができるようになる。骨折の治療は手術を行うことになる。骨折の程度や位置を考慮しながら、それに合わせた手術方法を獣医師が選択していく。骨折は歯周病にさせないことが予防につながる。高齢で歯周病が悪化している犬は注意しておきたい。

 

まとめ

口の中にできる病気には、予防できないものが多い。だが、歯周病が原因で引き起こされるケースもよくあるため、歯磨きで歯のケアをこまめにして、その際に口の中もよく見ておくようにしたい。

口を触らせてくれない犬であれば、歯磨きガムなどを利用しよう。かじらせることで歯周病予防にもなる。

それらとあわせて、最近、水を飲んでもこぼしてばかりいる、食事に時間がかかる、痩せてきたなど、とにかく普段と違うことに気づくのが病気の早期発見につながる。愛犬を病気から守るためにも、様子をよく見ておこう。

 
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Shi‐Ba vol.95『よく聞く歯のトラブル以外も知っておきたい 口の中にできる病気』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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