散歩の時、我先に歩く柴犬は多い。リードを持つ飼い主さんの目に飛び込んでくるのは、巻き尾の下にドーンと鎮座する肛門だ。他の犬に比べてオープンになのに、私たち飼い主は意外と肛門の性質をよく知らない。というわけで、犬の肛門についていろいろ学んでみるとしよう!
肛門の構造と役割
犬も人間と同様、口から入った食べ物は「消化器」という管を通り、やがて肛門にたどり着く。肛門は排泄を司るところ。消化器系の末端で、食べたものが便となって出る最終地だ。
この肛門の周囲には、肛門をキュッと締める肛門括約筋、骨盤内の臓器を支える骨盤隔膜を形成する肛門挙筋などの筋肉が張り巡らされている。これらの筋肉はうんこをプチッと断ち切ったり、中のうんこや臓器が飛び出さないように守ったりする役割がある。
さらに犬の肛門の出口には人間にはない、犬ならではの肛門腺もある。
普段の肛門は黒っぽい皮膚でカバーされているが、いざうんことなるとその皮膚が開き、奥にある直腸とつながる粘膜部のピンク色が見えてくる。この肛門の皮膚と粘膜の移行部にあるのが肛門嚢の出口、肛門腺だ。肛門腺は臭い分泌液を出す人間にはない組織のこと。
犬はうんこと同時に排泄物にニオイをつけて、自分の存在をアピールしている。スカンクは緊張すると臭いニオイを発するが、犬の肛門腺もそれと同じようなもの。ただ現代に住む家庭犬には、必要ないものだと考えられている。
色も大きさも個体差だけど……
散歩で目にする、柴犬たちの肛門。サイズもマチマチのようだが、中には「ウチの子、ヘンなのでは?」と心配になることも少なくない。肛門の色は個体差があるので、一概にどれがいいとはいえない。
ただ、粘膜はメラニン色素の多さに左右されるので、鼻の周囲が黒々としている子は、肛門も黒い傾向にある。年とともに色素沈着が進み、黒ずんでくることもある。
肛門の大きさは去勢の有無、肛門のトラブルに影響を及ぼすこともある。
肛門の大きさも基本的に個体差が大きいもの。腸が太くてうんこが太い子は肛門も大きくなるだろうし、若いうちは肛門括約筋がしっかりしてキュッと締まっていても、年をとるほど緩くなり大きく見えるだろう。
また男性ホルモンが多い犬は、肛門周囲腺が発達しやすい傾向にあり、そのため肛門が大きく見えることもある。これらはあまり心配するものではない。
ただ中には肛門周囲腺腫などのトラブルや、性ホルモンや甲状腺の異常で肛門周囲の筋肉がゆるむ場合もあるので注意が必要だ。
肛門絞りをマスターしよう
2.肛門下側、時計の8時4時(高くても9時3時)に指をグッと押入れると、肛門と粘膜の間に肛門腺の入口が確認できる。
3.ティッシュを持ち、突っ込んだ指を横に広げ、奥から肛門を引き出すようにして絞る。ニオイが強烈なため、シャンプー時に浴室でやろう。
肛門嚢は人間にはない組織で、うんこにニオイづけするマーキングの意味もあるが、現代の人と暮らす犬にとっては基本的に必要ない。
しかし、必要ない組織ならトラブルの火種にもなるし、取ってしまえばいい……というのは早計なようだ。
手術の技術が未熟だと、肛門括約筋を傷つけてしまうことがある。筋肉が傷つくと肛門の収縮が上手くできず、垂れ流しの原因になってしまうことも。
分泌液が溜まりやすく、破裂を起こす危険性がある犬なら手術を視野に入れてもいいが、そもそも日本犬は肛門腺を分泌する管も開口部も広いため、あまり詰まることがなく、うんこと一緒に出ることも多いので、あまり神経質にならなくてもいい。
ただ肛門腺が溜まりやすい体質は犬によって違うので、獣医師やトリマーに意見を仰ぐことをおすすめしたい。
溜まりやすいタイプなら1~3ヶ月に1度、肛門絞りをしてトラブルを未然に防ごう。
肛門を愛でて病気を早期発見
肛門にフォーカスした今回の企画、いかがだっただろうか。肛門をただの「うんこの出口」と思っていた人は、考え方が改まったはずだ。
人間を含む多くの生き物は、食べることで命をつないでいく。食べたら当然、出る。生きていく上で排泄はつきものだ。
しかし、排泄機能が衰えれば、生きる楽しさも元気も半減してしまうだろう。肛門トラブルを早期発見するのは飼い主の役目。
肛門嚢が破裂する時、ひどい痛みから犬は悲鳴をあげる。ただ破裂する前の様子は外からは分からない。肛門を頻繁に気にするなどいつもと違った行動をとっていたら、肛門腺が溜まっていないか確認を。
肛門腺絞りやお尻を拭く際は、腫瘍などのしこりがないか感触を確認することも大切。
また、肛門の出口にできた大腸がんやポリープは排泄の時に見えることがあるので、トラブルを早期発見するためにも排便時には肛門をよく観察しよう。
うんこが出にくい、排泄時に痛がるなどの異変があったら獣医師に相談を。
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Shi‐Ba vol.77『みんな気になるアイツの平和と安全を守る! コーモントラブル110番』より抜粋
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