飼い犬は人が与える水を飲んで一生を過ごす。そう考えると食事と同じくらい、犬に飲ませる水も重要だ。今回は水に関することを徹底調査する。
硬度が低い軟水が一番?
最近はミネラルウォーターや浄水器など、さまざまな種類が登場している水。選択肢が多い分、犬に何を飲ませた方がいいのか迷ってしまう。
基本的なことだが、人が飲めること、飲んでおいしいと感じる水が一番。日本の水道水は軟水で水質が安定しているので、飲み水として適している。
ただし、地域によって水質が若干異なるので、水道局に水質検査を依頼してもいい。井戸水やマンションに多い貯水タンクを通した水を使用している場合は、特に検査をおすすめしたい。
もし水道水がおいしく飲めないのであれば、浄水器を通した水にしてもよいだろう。膀胱結石など泌尿器系の病気になりやすい体質の犬は、ミネラル(カルシウム)が悪影響を及ぼす可能性があるので、尿検査をして愛犬の体質を調べておくと安心。
結石ができにくい体質であればミネラルウォーターでもよいが、硬度が低い軟水を選ぶこと。
日本に住む犬は軟水に慣れた体質なので、硬水を飲みすぎると下痢をしてしまう。ミネラルや不純物を機械で取り除いた純水と呼ばれる種類の水もある。しかしミネラル成分0%の純度が非常に高い水は、飲んでも吸収ができず、下痢を起こしてしまうケースがあるため、避けた方が無難だ。
また、愛犬の健康を考えると、時には泥水をすするような、野性的な生活をさせた方が丈夫になるのではと思う方もいるかもしれないが、全然丈夫にはならない。むしろ胃腸障害やレプトスピラ症のような伝染病、寄生虫の感染の危険がある。飲んだらすぐに病気になる可能性は低いが、リスクを冒す必要はない。
行き届いた生活が健康につながるということだ。無謀な行為は慎みたい。
飲み水の種類は変える?
犬の体調や季節によって、飲み水の種類は変えた方がいいのだろうか。
下痢など胃腸によくない症状が出ているなら、ぬるめのお湯をあげるといい。症状が続くなら動物病院で診断をしてもらった方が安心。特に暑い時期は細菌の繁殖力が強まることもあり、胃腸症状で動物病院に来る犬が4割を占める。
飲み水が原因とは限らないが、できれば1日3回以上水を取り替えて、常に新鮮な水を飲めるように意識してあげたい。
犬と水にまつわる疑問
Q.井戸水をよく飲むのはおいしいから?
A.味が好み、食事の問題、病気の可能性が
単純においしい、味が好みということも考えられるが、食事やオヤツの味が濃い、水を多く飲む病気の可能性もある。運動量を減らす、食事を変える、オヤツを変える、これらを1~2週間ずつ順番に試して飲む量を確認。まったく量が変わらなければ、糖尿病やクッシング症候群の検査をおすすめしたい。
Q.暑い日の散歩前後に氷を食べさせているが……
A.少量ずつ水分補給できるよい方法
暑い時期にこまめに水分補給をすると熱中症予防になる。氷のひんやりした感触やカリカリしたかみごたえを好む犬は多く、水は飲まなくても氷やかき氷は食べる犬もいるので、水分補給の方法としてもおすすめ。また、運動の直前に水を多く飲ませると胃捻転などの危険があるが、氷のように少量の水分なら安心。
Q.入浴剤入りの風呂から上がると人を舐める……
A.入浴剤は犬に悪影響があるので避けて
犬はお風呂に入った人を舐めるのが好き。はっきりした理由は不明だが、体があたたまると脂肪酸が出るので、そのニオイが好きなのかもしれない。しかし入浴剤は犬にとって中毒のもと。少量であればともかく、回数を重ねると肝臓に悪影響が出るので舐めさせないようにしよう。
Q.きれいな山の川の水も飲まない方がいい?
A.近くに民家がない山奥なら大丈夫かも
ヤマメが住んでいるような川や、人が飲める清水が湧くのような場所なら犬が飲んでもいい。また、山奥を流れる源流、清流なら大丈夫なはず。しかし、近くに民家や畑があるような場所は、排水や農薬が流れ込んでいる可能性があるので飲ませない方が無難。見た目がきれいでも水質がいいとは限らない。
牛乳は犬に飲ませても大丈夫?
牛乳に含まれる乳糖を消化する分解酵素を持っていない「乳糖不耐症」と呼ばれる体質の場合、牛乳を飲むと下痢をしてしまう。
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする人も実は同じ理由。犬に飲ませても下痢をしなければ大丈夫。
乳糖不耐症であっても、あらかじめ乳糖を分解した牛乳なら飲ませても問題ない。ただし水分補給は水が基本。
理想の器、場所、タイミング
日本の犬におすすめの水は軟水。では水を入れる容器は何がいいのだろうか。日本犬の大きさを考えると、サークルなどにつけるボトル型容器は適さない。少量ずつしか水を飲めないので、犬にとってストレスになる。ボトル型でもいいのはリスやウサギのような小動物まで。
おすすめは重量があって安定する白磁の陶器、ガラス、ステンレス。ニオイが少ない材質の方がいい。例えば、ステンレスの金物臭が苦手な人がいるように、犬にも好みがあるかもしれない。清潔を保つために、凹凸がなく洗いやすい形状であることも大切。
食器と違うのは、多頭飼いをしている場合でも頭数分用意しなくていいということ。猫など犬以外の同居動物も共用OK。もし相性に問題がある場合は、住み分けているスペースに合わせて置いてあげればよい。また、病気の動物がいる時は感染を防ぐために必ず分けること。
また、水の置き場所に関してだが、犬がどのような飲み方をするかで置き場所が決まる。本来、犬は立った状態で首を曲げ、足元にある水を飲む。野生動物が水を飲んでいる姿を想像するとわかりやすい。
食道拡張症や脊椎に障害がある犬は、首を曲げないように台の上に載せるように指導をするが、健康な犬であれば載せる必要はない。もし載せる場合は、体高の半分程度の高さで十分。高すぎると飲みにくくなってしまうので注意。どちらにしても雑菌の繁殖を防ぐために、直射日光が当たらない場所に置こう。
犬に水を与えるタイミングは、いつでも自由に水を飲めるようにしておくことが基本だが、飲ませない方がいい時もある。運動の直前や散歩中に水を大量に飲ませると、胃捻転や吐き気を起こす可能性がある。胃捻転は大型犬に多く、発症すると死亡する危険が。水分補給は大切だが、飲ませる時は少量にとどめておくことが大事。日本犬は胃捻転を起こすケースは多くはないが、発症しないとは限らない。
愛犬が飲む水は飼い主が選び、量を調節し、しっかり管理してあげることが健康につながるのだ。
【飲みぐせ拝見!】がぶがぶと?お上品に?水の飲み方から分かる犬の健康
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Shi‐Ba vol.49『体の70%は水だから、もっと知りたい 犬に飲ませる水の種類・置き方タイミング』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。