【外傷・ヤケド・骨折】愛犬の命を救う。もしもの時の応急処置講座

毎日平穏に暮らしていても、いつどこで愛犬が重大なトラブルに見舞われるかわからない。いざという時、飼い主が行ったほうがよい応急処置について、症状別に詳しく解説!

 

応急処置で命が助かることも

もしも愛犬が交通事故に遭った、高いところから落下した、異物を喉に詰まらせたなど、何かトラブルに見舞われた時、飼い主は何をすべきか。すぐさま動物病院へ駆け込むことが第一だが、心肺停止状態だったり、出血がひどいなど、一刻を争う状態であれば、病院へ向かう途中で手遅れとなってしまうケースも考えられる。

そんな緊急事態の時、飼い主自身が応急処置をすることで、命を救えることがあるかもしれない。応急処置を行えば必ず助かるという保証はないが、何もしないで死なせてしまうよりは、一縷の望みをかけて応急処置を行ったほうがいい。

そこで今回、いざという時のための応急処置の方法を解説していこう。

特にペチャは呼吸器系の問題が起こりやすい犬種。熱中症にかかりやすく、軟口蓋など気道系の病気を持っている犬もいるので、それが原因で心肺停止になることもある。部屋が25度でも熱中症の危険性はあるので、秋冬といえども油断はできない。

まずは、日頃から愛犬が安全な生活を送れるように心がけることが大切。そして、万一の時に備えて応急処置の知識も身につけておこう。

さらに、いつでもすぐに動物病院へ連れて行けるように、かかりつけの動物病院以外に、休日や夜間緊急の診療を行っている動物病院を見つけておくことも重要だ。

 

準備したいもの

ケガをした時の応急処置に、包帯、テーピング、ハサミ、ピンセットが役立つ。

ペンライトは口腔内や耳の中をチェックする時に便利。

愛犬の体温を知るために、ペット用体温計も常備しておこう。

エリザベスカラー手袋は応急処置中に飼い主の身を守るために準備しておきたい。

 

日頃からのチェック

健康時の様子を確認しよう

愛犬の体が「今日は何かおかしい」と察知するためにも、普段の体の状態を知っておくことが大切。普段から、愛犬とスキンシップをはかりながら肌の状態をチェックしておこう。皮膚がいつもと違う色をしていたり脱毛や炎症を起こしているなど、普段から愛犬の体を触っておくことで、何か異変が生じた際に気づきやすくなる。

また、何かあった時に歯茎や舌など、口腔内に異変が表れることもある。歯磨きのついでに歯茎や舌の色を確かめたり、日頃から口の中をチェックしておくと◎。

ペット用体温計を常備して、健康時の体温を計っておく習慣も身につけよう。

そして、すぐに処置を行わないと命に関わるのが心肺停止の状態だ。緊急時に心臓が動いているかどうかを素早く判断するためにも、日頃から愛犬のひじや内股を触って心拍を測っておきたい。心拍の早さは寛いでいる時はゆっくりで、興奮時は早かったり、その時の犬の状態によって異なってくるが、「この位置に触れると心拍が測れる」という場所を知っておくことが重要だ。普段はしっかり心拍が測れる場所なのに、脈が触れなかったり、著しく弱々しい状態であれば緊急事態。

もし心臓が止まっていたら、すぐに蘇生措置を行う必要がある。いざという時にすぐに心拍が確認できるように、あらかじめ心拍を測るトレーニングをしておこう。緊急時に慌てないためにも、日頃から備えておくと安心だ。

脈拍

ひじや内股で心拍を確認しよう
犬を立たせた状態で、ひじの位置もしくは内股で心拍を測る。指3本くらいをひじや内股に当てると、拍動を感じることができる。犬は心臓が真ん中にあるため、左右どちらでもOK。いざという時に手間取らないためにも、日頃から脈をとれる位置を確認しておくことが重要。

肌の色

普段の肌の色を知っておく
犬の毛を掻き分けて肌の色を確認する。肌が健康な状態であれば、通常は薄いピンク色をしている。赤かったり紫色だったり、普段の肌の色と違う場所がないか調べておこう。また、盛り上がっていたり、虫がいたり、触れると痛がる場所がないかもチェックしておく。

歯茎の色

いつもと違う色だと黄信号!
唇をめくって歯茎や舌の色をチェック。歯茎が蒼白だと貧血、チアノーゼと呼ばれる紫色だと換気不足の状況にある。赤いと歯肉炎、体温上昇、熱中症などが考えられる。普段から口の中の色を見ておくと、いつもと色が違う時に異変に気づきやすくなる。

 

抱き方・寝かせ方

安定感のある抱っこを心掛け担架を活用するのも〇

犬がケガをしたり、急に倒れて意識がないときは、すぐに動物病院へ連れて行こう。抱っこで連れていく場合は、犬を落とさないように、体全体で支えるように持つのが基本。

ただし、患部を触ってしまうと痛いので注意。傷口を包帯やタオルなどでカバーして手が触れないようにし、傷口を刺激しないような抱っこを心がけよう。担架で運んだほうがスムーズな場合もあるので、その場に二人以上いる場合はバスタオルを担架代わりにすると◎。

最近は担架用の取っ手が付いた介護マットも市販されているので、高齢犬など動物病院に行く機会が多い場合はそういったマットを準備しておくのもおすすめ。

正しい抱き方

体全体を支えて抱くと安定する
犬が負傷して歩けない時は、抱っこして動物病院へ連れて行く。犬を抱っこする際には、体の面で持ち、体全体を支える感じで抱くと安定する。ケガで出血していたり、骨折している場合は、患部に触れると痛いため、患部を触らないようにして抱っこをしよう。

担架の作り方

バスタオルを広げると簡易担架に
犬の意識がなかったり、寝たきり状態になっている時は、抱っこをするより担架で運ぶほうが楽な場合も。2人いる時は、バスタオルを広げて、両端を持てば担架代わりになる。大きく揺らしたり、犬を落とさないように気をつけて、慎重に運ぶようにしよう。

 

噛まれるのを防ぐ

犬の体に負担をかけずに噛まれないための工夫を!

普段はおとなしくて絶対噛まないような犬でも、ケガをすると、あまりの痛さのために興奮して、狂暴になることがある。

そんな状態の犬に顔を近づけたり、体を触ろうとすると、いきなりガブッと噛まれてしまうことも。

興奮している犬を落ち着かせることは難しいので、飼い主が噛まれないための工夫をすることが大事。ただし、犬に口輪をすると、興奮時の息苦しさを助長してしまうので、おすすめできない。

噛まれないためには、エリザベスカラーを装着するのがベスト。ワンタッチで装着しやすく、犬の体に負担がかからないので便利だ。噛み癖のある犬や、脚などを舐める癖のある犬は普段から活用しておくと◎。

エリザベスカラーをつける

エリザベスカラーで噛まれるのを予防できる
興奮して暴れている犬を落ち着かせるのは至難のワザ。無理やり押さえつけたり、体を撫でようとすると、ガブリと噛まれてしまう恐れがある。そんな時はエリザベスカラーを装着すれば、飼い主が噛まれるのを予防でき、犬の体にも負担がかからない。

 

外傷、ヤケド、骨折

外傷やヤケドはまず応急処置!骨折はすぐに動物病院へ

ケガをして出血をした際は、まず止血を行う必要がある。軽い出血や、静脈血の出血であれば、傷口を圧迫することで止血することができる。

ただし、動脈からの出血は勢いがあるため、傷口を圧迫しただけで止血するのは難しい。出血点より上の、心臓に近い場所を圧迫して止血する。その際、体へのダメージが少なくて済むように、幅の広い包帯やバンダナなどで縛って圧迫するのがコツ。

ただし、ずっと圧迫し続けると血行不良となり、皮膚が壊死してしまうおそれがあるので、止血したらすぐに動物病院に連れて行くこと

ヤケドはすぐに患部を冷やすことが大切。冷却後は患部を覆って保護することも必要だ。ヤケドの範囲によって、ガーゼやタオルなどを使って保護を。

このように、出血やヤケドは応急処置が必要だが、骨折の場合は応急処置が逆効果になることがある。

骨折した犬を触ろうとすると怒るので、無理に押さえつけて処置をすると、骨がずれて悪化することがある。

骨が皮膚を突き抜けて出血している場合は固定をしてテーピングで巻くことは必要になってくる。

しかし、そこまでの骨折でなければ、そのまま患部を触らずに連れていこう。動物病院でレントゲンを撮り、骨がずれていないことがわかれば、外科手術をしなくても外固定で治療が行える。

だが、骨がずれていたら、外科手術を行うしかない。患部を触らないように注意しながら、すぐ動物病院へ連れていこう。

■外傷・出血

【犬の様子】
・血が出る
・じっとしている
・触ると痛がる
・震える

【応急処置に役立つモノ】
・ガーゼ
・幅の広い包帯
・バンダナなど

動脈血の止血法

出血点の上を太めの包帯などでしっかり圧迫
動脈から出血すると、鮮血が拍動と共にピューピューと吹き出てくる。傷口の圧迫では止まらないため、出血点より上を縛る必要がある。その時に、細いヒモで縛ってしまうと、食い込んでその場所を損傷させるおそれが。太めの包帯やバンダナで巻いたほうがダメージが少ない。

軽い出血の止血法

清潔なガーゼを傷口に当てる
軽い出血の場合は、清潔なガーゼを傷口に当てて、あまり圧迫しないように気をつけながら、テープを貼って固定すればOK。犬が気にして取ってしまう場合はエリザベスカラーを装着するのがおすすめ。

包帯で圧迫を加えて止血をする!
静脈が傷ついてしまうと、黒い血液がじわじわと出てきてすぐには血が止まりにくい。その場合は、ガーゼを当てた上から包帯をやや圧迫を加えながら巻くと◎。ある程度圧迫を加えることで、出血を止めることができる。

■ヤケド

【犬の様子】
・触ると痛がる
・異常な鳴き方をする
・動き回る

【応急処置に役立つモノ】
・水
・軟膏
・包帯
・毛布や大きなタオル

患部を保護

ガーゼやタオルを使ってヤケドの部分を覆う
ヤケドで皮膚が露出すると痛みを伴うため、傷口を覆って保護してあげたほうがいい。ガーゼを当てるだけでは、時間が経つと傷口がガーゼにくっついてしまい剥がす時に痛いので、保湿性の軟膏を塗ったガーゼを当てるのがベスト。ヤケドが広範囲に及ぶ時は、タオルで患部を包むとよい。タオルの端が患部に当たると痛いので、傷の広さに合わせたサイズを選ぶこと。

患部を冷却

蛇口から水を出して患部にかけて冷却を
火や油などでヤケドした場合は、患部に水をかけて冷却を。水道の蛇口を開いて、患部に水をジャージャーかけて冷却を行う。薬品は種類によっては水をかけることで熱を持つケースもあるので注意が必要だが、基本的には水で冷やしたほうがいい。

■骨折

【犬の様子】
・触ると痛がる
・動かすと痛がる
・震えている
・足の場合はブラブラしている
・腫れが出る

【応急処置に役立つモノ】
・段ボール
・テーピング
・包帯

患部を固定する

段ボールやテープで固定する。
骨が皮膚から突き出ているほどの重症の場合は応急処置を。段ボールで芯を作って患部に当て、ガーゼや包帯を巻き、さらに上から硬いテーピングやガムテープなどを巻いて固定する。

病院へ行く

患部をいじらずにすぐに動物病院へ!
骨折時に患部を動かしたことで悪化させてしまうケースもあるため、できる限りいじらず、そのまますぐに動物病院へ連れていくのが望ましい。連れて行くときはできる限り患部に負担をかけないように心がけて。抱っこをする際は、患部を触らないように気をつけ、犬に負担がかからない体勢を意識しよう。

 

目に異物が入った、目に傷がついた

【犬の様子】
・目が開かない
・涙を流す

【応急処置に役立つモノ】
・目薬
・人間のコンタクト洗浄液

無理にいじったりせずプロに処置してもらおう

目に異物が入ったり、傷ついてしまった時、基本的にはいじらずに動物病院へ連れていくのが望ましい

目が傷つくと治るのに時間がかかり、角膜を破ってしまった場合は、失明したり、眼球摘出になりかねない。ちょっとゴミが入ったくらいであれば、洗ってもいいが、洗っても取れない場合はそれ以上いじらずに、動物病院で処置してもらおう。

無理に取ろうとして深く傷つけてしまうこともあるので、まぶたの裏に入っているなら、動物病院で麻酔をかけて丁寧に処置してもらったほうがいい。

洗い流して取れないようなら、動物病院で適切な処置を行おう。

目を洗う

体液に近い液体で目を洗うと◎
ちょっとしたゴミが入った時は、目を洗うことでゴミが取れることも。ただし、水道水は目にしみて痛いため、人工涙液や生理食塩水など体液に近い液体で洗うようにしたい。コンタクトレンズの保存液もおすすめ。また、人間用に市販されている目薬は犬には刺激が強いので犬用を使うようにしよう。

 
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PE・CHA vol.19『覚えておきたい緊急事態への対処法 愛犬の命を救う もしもの時の応急処置講座』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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