今回は、みなさんが気になる犬の医療費についてじっくり考察。もやもやした疑問に答えていく。
聞きづらい医療費について聞いてみた!
一般的に、動物病院の医療費は高いイメージがある。これは一律料金ではない自由診療制度と、人間のような国民皆保険制度がないのが、大きな理由。ついつい人間の医療費の3割負担と比べ「うわっ高い」となってしまう。
急なケガや病気で、思わぬ出費をした経験を持つ飼い主さんは、きっと多いはずだ。だからこそなるべく医療費を安く抑えたい気持ちも、もしもの時にどれくらいの医療費がかかるか知っておきたい、という気持ちも理解できる。
ただ実際は、飼い主同士で踏み込んだ話はしにくい。「かかりつけの獣医師にお金の話をするのはちょっと気が引ける」という意見もちらほらある。
そこで今回の特集では、みなさんが気になっている医療費について、独自のルートで取材。さらにペチャの飼い主さんにも協力してもらい、トータルでどのくらいの医療費がかかったかも調査。普段聞けない話も、できる限り切り込んでみた。
ここで紹介する医療費の情報は、きっといざという時の、お金と心の準備に役立つはずだ。
医療費などの値段について
編集部周辺の飼い主に医療費について徹底リサーチし、平均値を出してみた。実際は、動物病院ごとに異なることもあるので、参考程度に頭に入れておいてほしい。
診療・入院・治療
初診料 1,000円
再診料 500円
入院治療1日4,000円
レントゲン
1枚2,000円(撮影料、読影料込)
超音波検査
腹部 3,000円
心臓 5,000円~10,000円
内視鏡
胃の中を観察する 15,000円~
異物を除去する 50,000円~
生検 20,000円~
アレルギー検査
アレルギー検査 7,000円~18,0000円
通常のアレルギーの検査 10,000円
リンパ球反応テスト 18,000円
※外注検査のため、検査会社と項目によって変わってくる。
注射代
入院時 500円~
通院時 1,000円~
薬剤や量によって金額が異なる。
血液検査
セット価格※16項目+CBC(血球計算検査)7,000円
尿・便検査
尿検査 1,500円
便検査 1,000円
※8項目の試験紙と尿比重、尿沈殿を含む。塗抹検査をする場合は+500円、穿刺尿をする場合は、超音波代や穿刺尿代が別途かかる。
エリザベスカラー
1,500円
予防接種
狂犬病予防接種 2,750円
ワクチン(8種) 7,000円
薬代
抗生物質 1日分300円
ステロイド 1錠60円
下痢止め 1日200円
駆虫剤(滴下剤) 3本3,600円、6本6,480円
フィラリア1回分1,000円
お手入れ
爪切り 500円~
肛門絞り 500円~
毛のカット 500円~
歯石除去
トータル約50,000円
内訳
歯石除去・研磨 13,000円
血液検査、レントゲン、心電図などの術前検査代 17,000円
麻酔代 1時間10,000円
術中点滴、注射代 5,000円
抜歯をする場合は別途(犬歯1本2,500円、切歯1本1,000円)
耳
耳垢の検査 1,500円
染色してマラセチア、細菌、ダニなどがいるかどうかを見ていく。
耳鏡検査 500円
耳の中をライトで照らして覗き、確認する検査。
耳そうじ 1,500円
※汚れの程度によって異なる
目
ドライアイの検査(両目) 10,000円
眼圧の検査(片目) 1,000円
スリットランプ(両目) 1,000円 目の表面や虹彩、レンズを見る検査。
フローレス眼検査試験(両目) 3,000円 ※眼底カメラを使った場合
※医療費はあくまで小型/中型の短吻種のケースです。金額は一例であり、医療費の水準を示すものではありません、医療費の金額は動物病院によって大きく差があります。
医療費にナットク!Q&A
Q.人間の病院と同じように大学病院や大きな動物病院の医療費は高いの?
町の動物病院だと、高額な医療機器を置けないので、どうしても対応できない特殊な検査や治療がでてくる。そういう場合は、紹介状を書いて、大学病院へ行ってもらう。
大学病院の場合、MRIやCTなど高度な検査機器があるので、病状をより詳細に知ることができる。基本的に初診料、薬代はそれほど変わらないが、高度な検査や治療を行うので、大学病院が高いというイメージになるのだろう。
Q.動物病院の医療費って一般的にどういう基準で決めているの?
基本的に一から自分で決めるというより、修業時代の動物病院の料金を参考にしたり、周りの動物病院の料金を参考にしたりしている所が多い。
また、例えば高額な検査機器などを購入した場合、何回くらい検査をすればペイできるかを考慮して料金は設定している。
Q.ペット保険は入ったほうがいいのか。それとも入らない方がお得なのか
万一のために保険に入る人は多いだろうが、かからなければ払い続けるだけ。パピーの時に入れば掛け金は安いが、長期間払い続けることに。高齢になると病気を発症しやすいが、高齢では入れて入れない保険も多い。
ほとんどの場合、慢性疾患ではお金はでないので、その辺も考慮した方がいい。結局ペット保険に入るかどうかは、飼い主さんが保険に何を求めるかによる。
Q.医療費が高いほどやはり高度な治療?
動物病院は、自由診療なので、各院によって基本料金が異なる。そこだけを見ると、医療費が高いからよい治療かというと、決してイコールではなく、逆に安いから悪い治療ということにはならない。
ただし、高度な治療を行っているから必然的に高くなる動物病院はある。高度な医療機器と腕が良い獣医師がいて、支持されている動物病院は、高くても結果が伴う医療を提供している所が多い。
Q.根本的に医療費を安く済ませるためにはどうしたらいいのか?
医療費を安くする病院選びや治療は気になる所だろうが、根本的な部分で考えれば、大切なのは「できるだけ治療しないですむ生活」を送ること。
つまり、普段から食事や運動などの健康管理をしっかりして、ワクチンやフィラリアなどの予防を行い、病気にかからない体をつくるということ。
また、健康な体調を維持していれば、病気になっても回復しやすくなり、その結果、医療費も安く済む。
Q.犬の種類や大きさ、性格によって入院費や医療費は変わるのか?
入院費や、スペースの問題があるので、大きさによって入院費が異なる。
薬も、犬の体重によって異なる。例えば5㎏と10㎏を比べると体重が倍なので、当然薬も倍必要になり、金額も増える。
暴れてしまってスタッフの手間がかかるなど、性格による料金の変化は基本的にはないだろう。
ただし、あまりにも激しい場合、鎮静剤が必要になり、その分の料金が加算されることはあるかもしれない。
Q.入院が長引きそうな時、獣医師に予算の相談をしたほうがいいのか?
治療が長引けば、それだけ経済的な負担にもなるので、まず獣医師に相談しよう。
「どれくらい用意すればいいですか」や「この治療はどれくらいかかりますか」などと質問してもらえば、獣医師も説明しやすい。
世代によって「お金の話を先生に聞くのはちょっと」という方もいるかもしれないが、気兼ねなく聞こう。予算を考慮し、第2、第3治療を選択していくことができるようになる。
Q.ペチャの場合は医療費や入院費が高いイメージだがそれには理由があるの?
短吻種のペチャは、口の中の軟口蓋が長くなりがち。そのため、イビキをかいたり、呼吸器疾患を抱える犬が多くなる。
治療となると当然、獣医師は神経を使う。手術の前に麻酔に耐えられる体か検査をする場合もあり、それらの料金が加算されることで、ペチャの医療費が高くなるケースはある。
ちなみに獣医師は麻酔をかける際、リスクが高いことを飼い主さんに伝えなければならない。
Q.ペチャ犬がかかりやすく医療費が特に高額な病気はどんなものがあるのか?
ペチャ特有で多いのは呼吸器疾患。最近は長生きするので慢性疾患も多い。
どちらも高額というよりは、持続的に医療費がかかるので、トータルで見ると、生涯医療費がそこそこの金額になる。
また、呼吸器不全が心臓疾患につながったり、高齢になると腫瘍の問題も出てくる。
外科手術や放射線治療など、治療法によって高額になることも。ちなみに白内障の手術だと片目で20万から30万かかる。
Q.もし想定外の金額を請求されたならば、払う義務があるのか?
飼い主さんが「法外」と感じるのは、獣医師とのコミュニケーション不足が原因。請求されれば支払う義務は発生するので、トラブルを避ける意味でも、前もって医療費については相談しよう。
もし金額を示さないなどで不信感を抱いたなら転院をおすすめする。
Q.同じ病気で違う病院に行って医療費が大きく異なるのは、診療内容が違うのが1番の理由?
一つは病院による医療費の基本設定が異なること。その他に考えられるのが、それぞれの獣医師が修業期間中に学んだ、病気の治療に対するアプローチが違うこと。
例えば、犬が膀胱炎だとすると、獣医師Aは、しっかり検査をして完全に診断を下すまで治療をやらない。一方、獣医師Bは投薬で何とか治療を施そうとするなど。また、薬の種類や量、日数なども獣医師により違うので、料金も変わってくる。
Q.お会計の時に医療費が足りなくなった場合、どうすればいいのか?
急に症状が悪化したり、深夜に飛び込んできたりで、手持ちのお金がない飼い主さんは多い。
いまはたいていクレジットカードをお持ちなので、多くの動物病院はカード対応をしている。
あとはコンビニのATMでお金を降ろしてきてもらうケースも。
トラブルを避けるため、普通はツケ払いは行っていないだろう。
信頼関係を築けるかかりつけの動物病院を探そう
安さを追求するため、ワクチンが安い、検査が安い、治療が安いという風に、動物病院を使い分ける飼い主さんがいる。それは一概に否定はできない。
ただし、獣医師との信頼関係を考えると、かかりつけの動物病院で一通りの治療をしてもらうのがいい気もする。熱心に通う飼い主がいれば、獣医師だって一生懸命診たくなるのが人情。
また都会なら“掛け持ち”もたやすいが、地方だと数も限られてくるので難しいだろう。とにかく信頼できる獣医師を見つけるのが先決。
何でも気兼ねなく話せる関係を築ければ、その延長線上で治療費のことも相談できるはず。
最後によい動物病院の選び方をお伝えしておこう。
多くの病気の治療法には複数のアプローチがある。また、場合によって途中で治療や検査を加えなければならなくなることもある。
それらの説明をきちんとして、飼い主に治療法を選ばせてくれるのが、よい獣医師だ。治療法を選べれば、必然的に費用も選べる。
さらに飼い主と獣医師の相性も重要なポイント。信頼関係がベースになるので、相性がよくないなら転院を考えてもいいかもしれない。
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PE・CHA vol.18『医療費についてのもやもや独自に取材してみました。』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。