愛犬のうんちが出るとなぜかホッとする飼い主さんは多いはず。人間でも辛い「便秘」。はたして犬の便秘とはどんなものなのかじっくり考えてみよう。
犬の便秘とはどういうものか?
本来、毎日排便を行うというのが正常な生理機能として考えられている。
便秘とは、うんちの量がある程度たまっていて普通なら便意をもよおすものが、便意をもよおさないという状態のこと。また、便意をもよおしても、なかなかうんちが出ないというのも便秘に含まれる。
よくあるのが、散歩に出たときにしかうんちをしない、逆に散歩中はうんちしないけど家のトイレでするというのは、便秘とはいわない。その場所ではしたくないから我慢しているだけのこと。それが家に帰ってきてもしない、散歩中もしないというのが便秘である。
便秘になりやすい犬種は?
日本犬、洋犬などという犬種は全く関係ない。便秘になるかならないかは、その犬の体質によるもの。
例えば同じドッグフードを食べていても、便秘になる犬、ならない犬がいるのは、その犬の腸の吸収機能や運動機能によって違ってくる。
また、うんちをしたいという感覚が敏感なのか鈍いのかによっても違いがある。
犬は比較的便秘は少なく、どちらかというと猫の方が多いようだ。
知っておくと絶対安心!犬が便秘になった時の家や動物病院での対処法
排便の回数と犬の年齢について
年齢によって1日に出るうんちの回数は違いがある。子犬の場合は1日5~6回することも。それは食事の回数が多いということも関係するが、成犬に比べると腸管が短い上に消化機能も発達していないため。こまめに食べてこまめにうんちをするのが子犬だ。
そして成犬になるにしたがい、1日1~2回というのが多くなる。10歳をすぎると数日に1回しか出ないという犬も中にはいる。これは老化現象として脊椎に神経マヒやしびれが起こってくると感覚が鈍くなりがちになるからである。
中年までの年齢にも関わらず、うんちが何回も出ないという場合は、何か異常が考えられる。
まずは食事の内容がどうなのか、その犬の体質(腸の吸収機能や運動機能、便意が鋭敏なのか鈍いのか)以外に、便秘になる原因として考えられることには神経や筋肉に問題があったり、病気に関連している可能性もある。もしかしたら病気が隠されているかもしれないと疑うことが大切。
便秘から分かる犬の病気
□神経の障害
感覚が鈍くなることで便秘がちになる
変形性脊椎症や椎間板ヘルニアなど脊椎の神経に障害がある場合には、うんちをしたいという感覚が鈍くなってしまうため、便秘がちになる。脊椎の障害は年齢を重ねるにしたがい、老化現象のひとつとして加わる場合も多い。足やおしりの感覚も鈍くなってくるため、うんちの回数が減ったり、逆にお漏らししたりすることもある。
□甲状腺機能低下症
代謝が落ちてくることでうんちが出にくくなる
年齢とともに甲状腺ホルモンの分泌が低下してくるために起こる病気が甲状腺低下症。体の代謝が落ちてくるため、若い頃に比べて腸の機能も低下し、動きが鈍くなってきてしまう。そうなれば当然、うんちが出にくくなったり、うんちの感覚が空いてくる。この病気は急激に悪化するのではなく何年もかけて症状が進行していくため、老犬に多い。
□会陰ヘルニア
下痢と間違えられやすいがうんちが出なくなる病気
年をとった未去勢のよく吠えるオスに多い。骨盤の中に大腸とそこについていた筋肉が、強い腹圧で避けて空洞ができてしまう病気。大腸の支えがなくなるので、力むと腸が空洞内でS字になってしまうため、うんちを出したくても出せない状況になってしまう。うんちが細く柔らかい少量の下痢便状に出てくることもあるため下痢と勘違いされる場合も。
□骨盤の異常
なかなか出ない時は骨盤に問題がある場合も
うんちは腸から骨盤の穴を通って排出されるもの。過去に骨盤骨折を起こして骨盤が内側に変形していたり、先天的に骨盤の発育が悪く骨盤の穴が狭くなっている(骨盤狭窄)場合、うんちが出しにくくなる。いきむ格好をしているのになかなかうんちが出にくい場合には骨盤の構造に問題があることも考えられる。おかしいと思ったら調べてもらおう。
□前立腺肥大
男性ホルモンの影響で未去勢のオスに起こる病気
中年齢以降の未去勢のオスで考えられる病気に前立腺肥大がある。会陰ヘルニアを起こしている犬は前立腺肥大も起こりやすい。前立腺が肥大することで直腸が圧迫され便秘になったり、出たとしても形が扁平状になる。人間の前立腺肥大と違い、犬の場合、どちらかというと排便障害がほとんどだが、なかには尿道が圧迫され排尿障害がでる犬もいる。
□巨大結腸症
猫に多い病気だが犬でも可能性はある
骨盤の穴よりうんちが大きくなると当然うんちが通ることはできなくなる。通れなくなってしまうことで腸管が次第に太くなり、そのために腸を動かす神経がマヒしてしまう病気が巨大結腸症だ。猫に圧倒的に多く見られる病気であり、犬ではめったに見られないが、このような病気があることも知っておくとよいだろう。
便秘が引き起こす病気
便秘を繰り返していると病気を引き起こす可能性がある。どんな病気があるのか知っておこう。
肛門裂傷・脱肛など
人間の場合、便秘が続いた後、硬くなってしまったうんちを出すときに、いきみ過ぎて切れ痔になったり、脱肛が起こることがある。
犬の場合には人間のような「痔」という病気はない。だが、やはり硬くて太いうんちを出すときに肛門が切れてしまうことがある。この場合は肛門裂傷という病名となる。また、いきんだ時に腸や肛門の粘膜が突出する脱肛も起こる可能性はある。
犬の場合にはそれ程ひどい便秘というのはめったにないが、便秘を繰り返し起こしてうんちを詰まらせておけば、次第に内臓を圧迫し、最悪の場合、死に至る可能性もあるので注意しておきたい。
便秘に関する素朴な疑問
Q.留守番が長いと便秘になりやすい?
犬の留守番の時間が長いからといって、すぐには便秘にはならない。基本的に健康である犬なら1日1回うんちが出ていれば問題ないので、何時間ごとにうんちをしないと異常ですよ、ということはない。
1日1回うんちが出ない、便意が起こらないというのが便秘の状態。ただ、便意が起こっているのにうんちを出すのを我慢することを重ねていけば、次第に神経や筋肉の感覚に異常をきたしてマヒを起こし、便意をもよおさないような体のしくみにおわってしまう可能性がないとも限らない。
でも、これはよほどの場合。どうしても我慢できなければうんちをしてしまうのが普通。
Q.運動不足だと便秘になるの?
うんちは直腸で形が作られ、量がある程度溜まってくると押されて肛門括約筋の近くまでくる。そして直腸が膨らむことや肛門括約筋が刺激されることで神経が脳に伝達し、うんちを出しなさいという指令が脳から出るというのが排便までの流れだ。
小腸から大腸までは距離がある。腸がゆっくりとしか働かなければうんちとして出てくるまでに時間がかかる。運動をすることで腸の活躍がよくなり、腸がよく働けばうんちをどんどん送り出す。
運動をしないからすぐ便秘になるわけではなく、うんちを送り出すスピードが速いか遅いかだけの違い。
Q.処方食や薬の影響で便秘になることはある?
なにを目的にした処方食なのかによって違いはある。うんち自体のかさを増やさないように工夫していたり、メーカーによっても変わってくる。
くすりの種類によっては腸管の運動機能を落としたり、消化機能に変化が出る場合がある。
心配ならば動物病院で薬の説明をよく聞いておこう。
Q.便秘の時に牛乳やヨーグルトをあげると出やすいの?
牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素を持っていない犬だと逆に下痢を起こす可能性があるので様子を見ながら与えよう。ヨーグルトも乳製品のアレルギーも持っていなければ与えても問題ない。
ただし、無糖のものを選ぶのはもちろん、うんちの状態を見ながら与えることが大切。
Q.便秘のときはフードをふやかすとよいと聞いたが……
普段ドライフードを与えている場合、便秘気味の時に少しでも多く水分をとらせる意味でふやかした方がいいのではと考えてしまうが、実際はふやかしても効果はない。
水分よりも油分をとった方が腸の働きを調整してうんちが出やすくなるケースはある。
肥満になる可能性があるので量に気をつけて使わなければいけないが、オリーブオイルをフードにかけたり、食用できる黄色ワセリンなどを加えても腸の働きをよくする。
Q.雨などが嫌で散歩が短くなると便秘になる?
雨が嫌いな犬だと雨の日の散歩は普段よりも短くなり、うんちをしないで帰ってくるというパターンは多い。雨の中でうんちをしたくないのは我慢しているだけであって便秘ではない。
我慢が長く続けば便秘に移行する可能性もあるが、長雨が続くくらいの期間なら心配ないだろう。
Q.便秘になりやすい食生活や住環境などはあるの?
食材が一番影響してくる。肉類ばかり与えていたり、うんちのもととなる材料が少ない食材を与えていれば、うんちの回数が少なくなり、硬くなりやすいもの。
住環境の場合では、トイレが自由にできない、散歩の回数が少ない、安心できない環境におかれていれば我慢することも多くなってしまう。
我慢が何年も積み重なれば異常をきたす場合もあるので注意を。
Q.便秘の時にビオフェルミンをあげるとよいと聞きましたが
ビオフェルミンは腸内の細菌環境を整え、腸管の運動をある程度抑制する働きを持っている。
下痢をした場合に整腸剤として与えるのは問題ない。ただ、便秘気味の犬に与えてしまうと腸管の運動を抑制してしまうので、逆により便秘になる可能性が高くなる。作用としては弱いので与えても害はないが、どちらかというと便秘のときにはあまりおすすめしない。
Q.便秘のときはフードを切り替えた方がいい?
うんちはある程度たまらないとでないもの。うんちになりやすく腸管をよく動かすような成分を与えていればうんちは出しやすくなる。腸管をよく動かすことで便意を早くもよおす。
そのためには繊維質を多く含んだものに変えてあげるといい。
ただし、フードによってはうんちの量を少なくする工夫をしているものもある。フードの表示をよく読んで選ぶようにしよう。
Q.便秘がちな犬には野菜を積極的にあげたほうがいいの?
便秘がちな場合、腸をよく動かすためにと野菜をあげるのはかまわない。野菜の中でも繊維質が豊富なものをあげるほうがより効果的。
さつまいもやバナナは腸管をよく動かす。あとは大根やごぼうなどの根菜類など。カロリーやフードの栄養バランスを崩さないようにして与えよう。
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別
Shi‐Ba vol.49『中年以降のオスの便秘にはコワ~い病気が隠れていることも……我慢番長と学ぶ便秘の真実』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。