なぜ草を食べる?そもそも食べさせていいの?草食犬の取り扱い説明書

生野菜をあげても食べないくせに、散歩の途中で必死になって草や葉っぱを食べる日本犬は多い。なぜ食べるのか、食べさせない方が良い草、食べた後の注意点など気になることを根掘り葉掘り探ってみた。
 

 

犬はなぜ草を食べるのか?

■胃をスッキリさせるために食べるのが主な理由

犬が草を食べる理由

首がグエッとなるまでリードを引っ張って食べる様子を見て「それほどうまいのか?」と疑問に思うほど、草を食べる時の犬は必死だし、すごい顔をしている。

一般的に犬が草を食べる理由は、胃がムカムカする時に胃の中をスッキリさせるためと言われている。

その他には、草のにおいや噛み心地が好きで食べていたり、お腹が空いているので食べているということも考えられる。

同じ草が生えていても食べる場所が決まっている場合は、よく食べる場所の土が良くて、犬的にはそこの草がおいしいから食べている、という説がある。

ちなみに、春から夏にかけての新緑の季節は新芽が多いので、犬にとっては草がおいしい季節のようだ。

 
■食べて良い草、ダメな草を本能で嗅ぎ分けてはいるが……

ところで、犬が草を食べる様子を見ていると、同じような形の草でも、エノコログサ(通称=猫じゃらし)の葉は食べるけれど、そのすぐ横に生えている似たような尖った葉先の水仙を食べることはまずない。

基本的に毒性のある植物を犬が自ら食べることはほとんどないと言っていい。彼らは草の匂いを嗅ぎ、本能で食べられる草と食べてはいけない草をある程度区別していると思われる。

ただし、例外もある(後述にて詳しく紹介)ので十分な注意は必要。

 
■草を食べすぎる犬は病気との関連性も疑うべし!

草を食べる犬

草をよく食べる犬もいれば、全く食べない犬もいる。また、日によって草を食べる時と食べない時もある。

健康な犬の場合は、食べすぎたり体に合わないものを食べた後に草を食べたがる、ということが多い。人間で言えば、食べすぎた後に胸焼けがするので胃腸薬をのむ、という感じ。

しかし、あまりにも犬が草を食べすぎる場合は注意が必要なことがあるらしい。

寄生虫がいたり、肝臓、腎臓などの内臓障害があったり、精神的なストレスを抱えている犬が、草を異常に食べることがある。

また、年齢の高い、太り気味の犬が草をたくさん食べる場合は、クッシング症候群を疑うことも。

今まで全く草を食べなかった犬が急に食べるようになった、いつになく異常な量の草を食べるなど、草の食べ方の変化が体のトラブルのサインとなって出ていることもあるのだ。

 
■食べ方、食べる量を飼い主がきちんと観察しておこう

基本的に犬に草を食べさせなかったとしても、健康上全く問題はない。

よくよく考えれば、草を食べた後、特に夕方の散歩で食べると、真夜中や明け方に吐かれて、眠い目をこすりながら後始末をしなくてはならないし、草がうんこと一緒に出てきた時には、キムチ鍋のニラみたいなのが肛門からぶら下がって、それを取ろうとしてやると、犬がパニックになって首輪が抜けそうになったり。犬が草を食べたことによって引き起こす飼い主への負担の方が大きいくらいだ。

ただ、健康な犬の場合は「嗜好」という点で、草を食べることが楽しみになっていることもあるだろう。また、昔の日本犬たちもおそらく山野を駆け巡っては、自分の体調に合わせて草を食べていたんだろうな、と考えると、「草食一切禁止」にするのも忍びない気もする。

草を食べさせたい飼い主としては、どんな草を、どのような様子で食べるのか、日頃からきちんと観察しておき、「最近、異常なくらい草を食べる気がする」 と感じたら、動物病院に行って獣医師に相談したり、健康診断を受けるなどして、草と上手に付き合っていくのがいいだろう。

 

草食柴犬図鑑

食肉目イヌ科大口属
草を食べる犬

散歩中に草を見ると、大口を開けて元気よく食べるのが特徴。においにはあまりこだわらず、「そこに草があるから」食べる直球派。

 
食肉目イヌ科グルメ属
草を食べる犬

食べた後によく咀嚼し、目をつぶりながら草の青臭さを堪能するグルメなタイプ。食べ終わるまで散歩が進まない。

 
食肉目イヌ科においこだわり属
草を食べる犬

神妙な面持ちで草のにおいを嗅ぎ続ける黒柴氏。「どれ食べても同じじゃね?」という外野の声もどこ吹く風、運命の草を探し続ける。

 
食肉目イヌ科グルメ属
草を食べる犬

「散歩だからとりあえずにおい嗅いで、気が向いたら草でも食べっか」的なライト感が漂う。草を見つめる目も穏やかだ。

 
食肉目イヌ科思索属
草を食べる犬

木の根元のコケのにおいをじっくりと嗅ぎ続ける男。彼の周りでは時間は止まり、コケを嗅ぐ静かな鼻息だけが聞こえるのだった。

 
食肉目イヌ科孤独属
草を食べる犬

生い茂った草の中に顔を突っ込む無言のその姿。まるで「今は話しかけないでくれ」と飼い主に語りかけるようだ。顔、ムズムズしないの?

 
食肉目イヌ科気まぐれ属
草を食べる犬

散歩の途中に急に駄々をこねたように立ち止まり、とりあえず目の前の草を食べてみる気まぐれ系。草が食べたいわけではないのがポイント。

 
食肉目イヌ科通だね属
草を食べる犬

人間でもにおいが独特だから、食べるのが苦手な人が多い菜の花。でもこのお方はわりと平気な感じでムシャムシャ。通だな。

 

犬に食べさせないほうがよい草は?

草を食べて中毒を起こし来院する犬は意外にも少ない。しかし、食べない方が良い植物を好んで食べる場合もある。犬がよく植物を食べる場合は、その種類や毒性を図鑑などで調べておくことも大切だ。

そして、葉を食べるとNGなもの、樹液に触れるとかぶれるもの、花や実が危険など、毒性のある部位も植物によって異なる。

特に葉が危険な場合は花が咲いていない時も葉の形状に注意したいし、街路樹を切り倒した後の切り株のにおいを嗅ぎに行った時に樹液に触れることもあるので、気をつけよう。

どうしても食べさせたいのであれば、雨上がりのきれいな草、排気ガスのかかっていない所、他の犬がたくさん来て排泄などをしていない場所を選んだり、きれいな場所の草を取ってきて、庭に植えて育てる方法もあるだろう。

ただし、健康な犬でも草の食べさせすぎは胃腸障害などを引き起こすこともある。適度なタイミングで飼い主が犬を草から引き離すのが賢明だ。

また、散歩中に草むらの中に顔を突っ込んで草以外の何かを誤食し、救急で運ばれる犬はとても多いし、ダニやノミ、草の実が犬の体に付着することもある。やはり、草の深い所には犬を近づけない方が得策だ。

こう考えると、犬が草を自ら食べなくなれば、飼い主としては安心できる。

フードの種類を変えたり、手作り食にして繊維の多い野菜を入れてみたら、草を食べるのが減ったというケースもある。

総合的なバランスを崩さないように獣医師と相談し、ゴハンの内容を変えながら、その中で草への食いつきを見ていくのもいい。

 

散歩中や庭でよく見かける要注意な植物例

草を食べる犬

【クリスマスローズ】
中毒が多いキンポウゲ科(トリカブトもこの科に属する)。食べると胃腸障害をはじめ、心臓麻痺や最悪の場合は死に至ることも。かなり危険。

 
【ジャーマンアイリス】
アヤメ科。菖蒲やアヤメも胃腸障害を引き起こす。

 
【シャクナゲ】
毎年散歩コースに美しい花をつける植物。ツツジ科の植物は葉、根、花の蜜まで口に含むと下痢、嘔吐、神経麻痺などの症状を起こす。

 
【スズラン】
スズラン科。嘔吐や下痢、不整脈、心不全などの症状が出る。

 
【ツタやアイビー】
ウコギ科。中毒症状は下痢や嘔吐、皮膚への炎症など。

 
【ツツジやサツキ】
いずれにせよツツジ科で有毒植物。

 
【ボタン】
ボタン科。樹液で皮膚がかぶれることも。

 
【アジサイ】
アジサイ科。過呼吸や痙攣、麻痺など。切り花を生けた花瓶の水も危険。人間も料理の飾りとして出された葉を食べて嘔吐やめまいを起こしたケースがある。

 
【シクラメン】
サクラソウ科。毒部位は根茎。皮膚炎、嘔吐、下痢、痙攣などを引き起こす。

 
この他にもヒガンバナ科やユリ科、キョウチクトウ科の植物は中毒を引き起こす危険がある。街でよく見かけるものでは、オシロイバナ、ニセアカシア、ホウセンカ、フジ、フジバカマ、ユズリハ、トチノキなどの植物も要注意。近寄らせないほうが良いだろう。

 
食べたり触ったりすると危険!犬の日常生活に潜む危険な植物

 

犬が草を食べた後に気をつけたいこと

草を食べる犬

草を食べて吐くのはよくあることだが、この吐き方にも注意が必要だ。

個体差や食べた草の量にもよるが、通常なら吐くのは1~3回位。しかし、5回以上吐く間隔をあけて何回も吐く、などは要注意。

またひどい下痢が始まったり、嘔吐物に血が混ざっているのも命に関わる可能性があるので、すぐに動物病院へ行こう。あまりにも吐き気がひどい場合は、農薬や殺虫剤がついた草を食べたことにより有機リン中毒を起こしていることも考えられる。

散歩中に草を食べた直後、腰が抜けたり痙攣をする縮瞳している(過度に瞳孔が縮まる)、泡を吹くなどの症状が出たら、家に帰らずそのまま近くの動物病院に駆け込むこと。数分の差が犬の生死を分けることもある 万が一のことも考えて、このことは頭の片隅に必ず置いておいてほしい。

さて、今述べたような重篤な場合でない限り、草を食べて吐いた後にケロっとしている犬は多いもの。ゴハンをあげていいか悩むところだが、普段と変わらないようであれば、あげても構わないそう。

ただしその場合は、すぐにあげずに、数時間経ってからいつもの半分や三分の一の量をあげて様子を見て、吐かないようなら残りをあげるようにすると良い。

また、草を食べた後は、キムチ鍋のニラみたいな草が肛門からぶら下がっていることもある。肛門に傷がつかないか心配にはなるが、草で肛門に傷がつくことはほとんどない。

それよりも意外に多いのが、鼻に草が吸い込まれているケース。何かの拍子で噛み切った草が鼻の穴に入り、くしゃみをよくする、片方の鼻の穴から透明ではない鼻汁(場合によっては白や黄色の膿)が出ている場合は要注意。動物病院で処置をしてもらおう。

 
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Shi‐Ba vol.89『なぜ食べる?そもそも食べさせていーものなのか そこん所をいろいろ知りたい! 肉も好きな草食柴犬の取扱説明書』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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