足腰が弱ってから運動習慣を身につけ、筋肉を鍛えるのは簡単ではない。若いうちからの運動習慣で体力&筋力向上を目指そう。
丈夫な足腰作りを習慣に!
人間と比べると犬の老化は早く、犬の6歳は人間の40歳に相当する。まだまだ子供だと思っていた犬は瞬く間に年をとり、それに伴い体力が低下していく。
とはいえ運動量を簡単に減らしてはいけない。運動を極端に控えると筋肉はやせ、ますます動きが悪くなってロコモになりやすくなる。
無理は禁物だが、犬の体調を見ながら、散歩のバリエーションを増やしたり、筋肉に適度に負荷をかけるトレーニングを加えたりして、足腰を鍛えよう。
また、筋力トレーニングなどの運動をする前は、ストレッチを加えるといい。ストレッチは固まった筋肉をほぐし、関節の可動域を広げ、運動をスムーズにするので、散歩やトレーニングの前に取り入れるといい。
ストレッチによるスキンシップでどんなところを触られても平気なようにしておけば、仮に介護状態になった時もお世話がスムーズ。また、触ることで見た目だけではわからない筋肉のやせ細りを発見することができる。
ストレッチや筋力トレーニングを毎日全部こなすのは難しいので、その中からひとつチョイスし、散歩やしつけの中に組み入れてみよう。例えばスクワットは、散歩途中の信号待ちなどにコマンドをかけて座らせてもよい。
まずは愛犬の筋力チェック
以下のA~Cのチェック項目のどこに多くチェックがつくか確認してみよう。そうすることで愛犬の弱った筋肉がどこか推測することができる。
A
□歩くスピードがスロースペースになった
□全体に痩せてメリハリがない
□起伏のあるところを歩かせるとふらつく
Aのチェックが多い人は……
→体幹の筋肉が弱い
慢性的な運動不足などにより全身筋肉量が少ないと、ふらついたり転倒してしまうことも。たくさん歩いてバランスよく筋力アップを。
B
□段差や坂道をスムーズに昇ることができない
□オスワリから立ち姿勢まで、時間がかかる
□歩行中、後ろ足がもつれることがある
Bのチェックが多い人は……
→後ろ足の筋肉が弱い
前足に重心をかけているため後ろ足から筋力は落ちていくもの。スクワット(後述で解説)など後ろ足を意識して使うような運動を加えよう。
c
□首が垂れてきた(下がってきた)
□前足の歩幅がとれていない
□背中が丸まってきた
Cのチェックが多い人は……
→首~背中の筋肉が弱い
首~肩、背中の筋肉が弱ってくると、頭が下がり、背中が丸くなり、落ち込むような姿勢に。ひも引き(後述で解説)などで鍛えよう。
ストレッチ
より効果的に運動するためにも運動前はストレッチをして関節の稼動行きを広げよう。血行を促進するために先に温しっぷをしてから行うとよりよい。
1.足先
体の末端である足先をストレッチ。足先まで神経が行き渡り、足の指で地面をしっかり踏みしめることが可能に。
足の指1本1本を指先でつまんで優しく上下に動かす。指の間を開くようにすると血行がよくなる。
手のひらを犬の肉球に当て、外側に反らすようなイメージで足首をしっかり伸ばす。次に手のひらに犬の足の甲を当て、内側にゆっくり曲げる。
2.後ろ足
筋肉が落ちやすい後ろ足は、足首とひざ、それぞれをゆっくり曲げ伸ばしするストレッチを加えよう。
足首の上下に手を添え、ゆっくり曲げ伸ばし。同様に、ひざの上と下に添えて曲げ伸ばし。ひざを痛めていたり、嫌がったりする場合は無理にやらないこと。床に寝かせてやってもOK。
股関節・・・前ももと足首に手をあてて、ゆっくりと後ろに押す。10~20秒キープ。
※足先→足首→ひざ→股関節の順でストレッチ。
3.前足
後ろ足と同様に前足も手首とひじのストレッチを行おう。床に寝た状態だとやりやすい。
後ろ足と同様、手首の上下に手を添え、ゆっくり曲げ伸ばす。次にひじの上下に手を添え、ゆっくり曲げ伸ばす。
肩関節・・・ひじ~二の腕と手首に手をあてながら、ひじが顔の近づくまで押す。10~20秒キープ。
※足先→手首→ひじ→肩の順でストレッチを。
筋力トレーニング
遊びやしつけの要素を織り交ぜながら、筋肉を鍛えよう。特に弱りやすい後ろ足のトレーニングを意識して取りいれよう。
室内で行う場合は、すべらないためと、足の踏ん張りが利くように、ヨガマットなどを敷くといい。また、スクワットや腕立てふせは、散歩に途中にある坂道で行うと負荷がかかって効果的だ。無理せず楽しくやろう。
【後ろ足】スクワット
立ちの姿勢から、オヤツで誘導し、ゆっくり座らせて、後ろ足を強化。
鼻先に持っていったごほうびで、ゆっくり押すような感じでオスワリさせる。立つ→オスワリ、をゆっくり5回繰り返す。
【後ろ足】ポールまたぎ
筒状に丸めたバスタオルをポール代わりに置き、飛ぶのではなく、歩いてまたがせる。
ごほうびなどで誘導し、ゆっくり歩かせながらポールをまたがせる。5往復を目標に。後ろ足は引っかかりやすいが、それが後ろ足の意識につながる。
【足~背中】棒くぐり
体高より低い位置にセットした棒をくぐらせる。背中の筋肉の強化にも。
首から下の位置に棒をセット。オヤツで誘導しながら、下をくぐらせる。
【全身】マット歩き
不安定な足場の上では、バランスをとりながら歩くので、自然と体幹の筋力アップにつながる。
クッションやビーチマット、低反発のマットの上を往復させる。
縦断させたら、次は横断させるなど、バリエーションを変えて歩かせよう。
【前足】腕立て伏せ
オスワリ→フセを繰り返し、前足の筋力を強化しよう。
オスワリさせた後、鼻にごほうびを近づけ、その手をゆっくり床に下してフセをさせる。フセをしたら、ほめてごほうびを与える。このオスワリとフセを5回繰り返す。
【全身】体幹
立ったままで前片足や対角線の足を上げる不安定な姿勢は、全身のバランスを保ち、体幹を鍛える。
立ち姿勢のまま片前足だけを持ち上げてオテをさせ、5~10秒キープ。逆足や後ろ足も同様に行う
犬の様子を見てできそうなら右前足・左後ろ足を同時に上げ、5秒キープ。逆対角線も同様に。
※足を持ち上げても他の足が動かないように行うのがポイント
【首~背中】ひも引き
遊びでも取り入れるひもの引っ張りっこは、首や背中を鍛えるトレーニングに。力を入れすぎないよう注意。
引っ張りっこは、足を踏ん張るので脚力の強化にもつながる。
早いうちからの取り組みがロコモ防止に!
老年期から慌てて筋力アップを図ろうとしてもうまくいかない。
体力がある若いうちから適度な運動習慣を身につけて、筋肉を鍛えよう。運動に加え、馬肉や鹿肉や豚肉、鶏ササミなど、筋肉の元となる良質のたんぱく質を摂ることも大切。
また、加齢により感覚も衰えてくる。柴犬は飽きっぽい傾向があるが、それに拍車がかかることもあるわけだ。
五感が鈍くなると外に出るのが嫌になり、ガンコな性格になることもある。上に挙げた筋力トレーニングは、筋力アップはもちろん、考えたり、平衡感覚を養ったりする中で五感を刺激し、脳を活性化させる“脳トレ”の要素もある。認知症予防も期待できるので、楽しく続けてみよう。
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Shi‐Ba vol.85『足の衰から老化が進行する!?ロコモティブシンドロームの予防 筋トレ ストレッチ』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。