いざ引越しが決まったら、はたして愛犬に対してどんなことをしてあげたらよいのだろうか。犬連れの引越しで準備しておきたいこと、新居選びのポイントや、引越し当日や引越し後の注意などを詳しく紹介。これで愛犬と一緒の引越しも安心してできるはず。
引越し準備
引越しすることが決まったら、事前に愛犬にしておきたいトレーニングや飼い主の準備にはどんなものがあるだろうか。これらを準備しておけば飼い主も犬も安心だ。
1.トレーニング
日頃からクレートに入ることに慣れている犬なら心配ないが、そうでない場合、ぜひ引越し前にクレートトレーニングをしておきたいもの。
引越しの際に、車や電車、飛行機などで移動のときもクレートに入っていなければならない。
そうでなくても引越し当日は人の出入りが激しく、落ち着かない環境に置かれてしまう。
そんな時もクレートが愛犬にとって好きな場所であり、安心できる場所になっていれば、愛犬にかかるストレスも半減する。
また、乗り物のトレーニングでもできるようなら、事前にしておきたい。
いきなり長時間の移動で緊張してしまうと、乗り物酔いにつながってしまう。
少しずつ近場から時間や距離をのばして慣らしておこう。
2.飼い主の心構え
引越しに伴って、新しい環境で考えられるであろう愛犬のさまざまなストレス。もしもの時のために、飼い主はできるだけのことをしておきたい。また、新たな気分でしつけをもう一度できることもある。犬が混乱しないよう飼い主はしっかりと心構えを。
【人慣らし】
柴犬など日本犬は、見知らぬ人との接触が苦手な犬が多い。引越し前から、できるだけ人慣らしをしておきたい。
例えば、公園で子供たちが遊んでいるところを見せたり、近所の人からごほうびをもらうよう心がけてみたり、少しずつ人に慣らしていこう。
【体のケア】
ストレスが増えると毛が抜けやすくなったり、肉球に汗をかきやすい。指の間が臭くなったりするので、足を洗った後は乾いた布でよく拭くこと。
そのためにも体にブラシをかけたり、足拭きに慣らしておくことが大切。
【トイレ】
室内でトイレをしていた犬の場合、場所が変わることでトイレの失敗が起こる可能性がある。でも失敗するのは仕方がないと思っておくことで飼い主の気持ちも違ってくる。
新しい家に行ったら、トイレトレーニングを初期の段階に戻るなどして、誘導してあげよう。
【室内トイレへの道!】日本犬を外ションから部屋ションに導くトレーニング
【ピンポン吠え】
今までの家でピンポン吠えをしていた犬にとって、引越し先でピンポンの音が変われば、それを直せるかもしれない絶好のチャンス。
新しい環境を上手に利用して、ピンポンが鳴ったら、愛犬がクレートに入ることを関連づけるトレーニングの仕方を飼い主はあらかじめ覚えておこう。
新居選びのポイント
新居を探す際には、犬はもちろんのこと、散歩コースになる周囲の環境もよく見ておきたい。
■一戸建ての場合
階段が多い家よりも、できれば段差の少ない家のほうが理想的。また、窓から出入りできる庭があるとよりベスト。
■マンションの場合
犬の飼育が認められているのは当然のこと。上下、両隣の住民が犬嫌いではないことも重要なポイント。
1階は庭があったり、エレベーターを使わずに済むのでなにかと便利。
■周囲の環境
土のある公園が近くにあるなど、遊ばせる場所はできるだけ多いほうがいい。
繁華街よりも、音の少ない静かな場所のほうが犬も落ち着ける。
また、今までより通勤時間が増えると、それだけ愛犬とかかわる時間が少なくなってしまう。そのようなことも考慮しておきたい。
海外への引越し
引越しが決まってから、愛犬の性格を変えるのは不可能なこと。飛行機での移動や検疫所で少しでも愛犬にイヤな思いをさせないよう配慮していきたい。
■移動の際
飛行機に鳴らすというのは、なかなか難しい。そのためにもクレートに入ることを慣れさせておくというのは大切。
■検疫所にて
国によって検疫所にいる期間やシステムに違いがあり、係留期間にストレスを受けて病気になるケースもある。
預ける時に「うちの犬はこういう性格なので、こういうところに注意してください」と伝えておくだけでも何も伝えないよりかは違いがあるはず。
係留期間の際に少しでもストレスを和らげるために、ここでもクレート慣らしが必要だ。
引越し前に必ずチェック
新居も決まり、引越しに伴う手続きのことも調べたら、引越しに向けて最終チェックを。
■動物病院
引越し後に体調を崩すことも考えられるため、できれば事前に新居のちかくの動物病院を調べておこう。下見の際にご近所の人の評判を聞いておくとよい。
■首輪に名札を
万が一のことを考えて新しい住所を書いた名札を首輪につけておくこと。また、首輪やリードの金具が甘くなっていないかのチェックも忘れずに。
引越しの手続きについて
引越しの際は荷物の準備などでも大変なのに、やっておかなければならない手続きは色々あるもの、忙しいからとつい忘れがちになるのが犬にまつわる手続きのこと。いざという時に慌てないためにも不明な点は事前によく調べておこう。
■国内
人間が住民票を移動するように、犬も引越しした場合、手続きが必要となる。
転居先の地域にある役所へこれまでの鑑札を持っていけば、無料で新しい鑑札をもらえる。
住所変更をしておかないと、狂犬病予防注射の案内が届かないので忘れずに。
知っておくべき犬に関する法律。迷子・引越し・死亡した際の手続きについて
■海外
日本から海外へ愛犬を連れて行く場合、さまざまな手続きをしなければならない。まず日本を出るためには、
(1)国際標準化機構(ISO)規格のマイクロチップを装着する。
(2)狂犬病不活化ワクチンを接種(生後91日目以上で接種のこと)。
(3)狂犬病予防注射を再接種(前回の接種から30日以上、1年以内に)。
(4)狂犬病予防注射の再接種の後、採血し、日本の農林水産省が指定する検査施設にて狂犬病に対する抗体価の検査を受ける。
(5)日本出発の7日前までに輸出検査を受ける動物検疫所へ連絡。
(6)出国当日、動物検疫所へ(1)から(4)の内容について記載された証明書を提出。
検査を受けた後、動物検疫所発行の輸出検疫書を取得する。入国する国の手続きはその国によって違いがあるため、受け入れ先の大使館や検疫局へ確認しておこう。
引越し当日の注意
当日はどうしても引越し業者の出入りや家族もバタバタして落ち着かないもの。新居へ移ったら、まず愛犬にどんなことをしてあげたらよいのだろう。
■まずは家に鳴らす
引越し当日は家の中でゆっくりと過ごさせてあげよう。もしも部屋の隅で愛犬がじっとしているなら、その場所にクレートを置いてあげるなどして、犬が自分のスペースを見つけられる時間を作ってあげたい。
家の中でリラックスできるまでには、犬によっても違いがある。半日で落ち着く場合もあるが、1~2日かかることも。家に慣れてきたら、犬の様子を見て少しずつ外へ出てみよう。
■外飼いの場合
犬小屋や中に入れていた敷物など、愛犬が今まで使っていたものはそのまま持ってきてあげたい。
そして、新居での犬小屋の位置にも配慮を。できるだけ外部からの出入りが少なく、家族の顔が見え、声が聞こえる範囲につないであげよう。慣れるまで、夜寝るときは玄関に入れてあげて。
引越し後のトラブル
引っ越し後に起こりがちなトラブルには、ストレスによる食欲減退やさまざまな体調の変化などがある。どんな場面においても飼い主がしっかりケアをしてあげること。また、引っ越し先で迷子になるケースも多い。あらかじめその対策もしておこう。
■食欲減退
緊張した状態でいると食欲が落ちる犬は多い。そんな時、いつも通りの食事量を出して、犬がうんざりしてしまうと、新しい環境の印象が犬にとって悪いものになってしかねない。
引越し後の数日間は、食事の量はいつもより少し減らし気味に。好きなものをプラスしてあげてもよい。
■体調の変化
食欲減退の他にもストレスがかかることで多く見られるものに、脱毛、軽い嘔吐、下痢などがある。
ひどい場合では、うごかなくなる、震える、落ち着きがなくウロウロする、吠え出すことも。様子が変な場合は必ず動物病院へ。
■迷い子対策
新しい場所での散歩は、ストレスからリードを引っ張って歩くことがある。万が一のことを考えて、名札は必ずつけておくこと。
またご近所で挨拶まわりに行く際、連れて行けるようなら犬も同伴して。難しい場合は犬の写真を持っていき、犬の顔を覚えてもらおう。
「早く慣れる」ような工夫を飼い主がしてあげよう
引越しは飼い主にとって大変なことである。飼い主の気持ちがいつもと違うというのは、愛犬に伝わるもの。家も変わって、飼い主の様子も変わったのでは、犬にとってかなりのストレスになる。
そのためにも、まずは飼い主が早く新しい環境に慣れて、リラックスすることが大切である。
荷物を動かしている間、愛犬はクレートに入れ、おいしいものをかじらせて、一番静かな部屋で待ってもらう。そうすることで、飼い主も落ち着いて作業ができる。
人間だっていつでも室内に段ボールが置きっぱなしでは居心地が悪い。それは犬も同じ。いつもの家具やなじみのあるものが少し部屋に置かれてから、愛犬を出してあげたい。
新しい環境にすぐになじむ犬もいれば、時間がかかる犬もいる。愛犬を早く新しい家に慣らそうではなく、早く慣れるような工夫をしてやらなければならない。
愛犬が少しでも快適にいられるように、居心地のよい場所をつくってあげよう。
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Shi‐Ba vol.33『トラブル知らずの犬連れ引っ越し術 0148 シーバ引越しセンター』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。