ジャンプした時に足を滑らせたなどでプードルが骨折や脱臼をしてしまうケースは意外と多い。プードルで気をつけておきたい骨と関節に関する病気にはどんなものがあるか詳しく紹介していこう。
1.体が小さい犬は骨も弱い
2.膝蓋骨内方脱臼
3.前十字靭帯断裂
4.レッグカルベペルテス病
5.環椎軸椎脱臼
6.下顎の骨折
7.撓骨・尺骨の骨折
8.その他の骨折
9.その他の脱臼
10.予防のためにできること
11.しっかり散歩を行うことで強い骨に育てる
体が小さい犬は骨も弱い
■骨の構造
それぞれの骨は、海綿骨といわれる軽石のように穴がたくさん空いた状態の骨に、その周りを硬い皮質骨が取り巻き、神経や血管が多く存在する骨膜で覆われている。
■骨の太さ
モコモコとした被毛に覆われているが、プードルは体が小さい犬ほど骨も細くなる。体重2㎏以下の犬であれば前足の撓骨で幅が4㎜、厚み1~2㎜程。つまようじの太さが2㎜なのでどれだけの細さかがわかる。
人間も犬も、体を構成するうえで骨はとても大切な役割をしている。体を支える軸であり、骨がなければ姿勢を保つことができないだけでなく、体を動かすこともできない。
例えば、軟体動物であるタコを想像すれば、体がぐにゃぐにゃしているし、ジャンプはできない。プードルも骨がなければ、タコと同じ状態となって、得意のジャンプはできないのである。
プードルは動きが機敏なタイプの犬が多い。ソファやイスなどに身軽に飛び乗ったり、高い場所から飛び降りた時に足を滑らせてしまうことも起こりうる。フローリングなど滑りやすい床で走り回っていれば、足に負担もかかりやすい。
スタンダードプードルは体が大きい分、骨はしっかりしているが、トイプードルなど体が小さくなるにつれ、骨は弱くてもろくなる。それだけにちょっとしたことで骨折や脱臼などのトラブルを起こしやすい。
そこで、プードルではどの部分に骨折や脱臼のトラブルを起こしやすいのか。愛犬をそれらのトラブルから守るためにするにはどんなことに気をつけておきたいかを知っておこう。
膝蓋骨内方脱臼
■膝のお皿が滑車溝から外れてしまう病気
・膝蓋骨の場所
膝蓋骨とは膝のお皿のこと。通常、四本の靭帯に支えられる形で、膝蓋骨は大腿骨の滑車溝にのっている。膝を曲げたり伸ばしたりした時には膝蓋骨も一緒に動くようになっている。
・膝蓋骨脱臼の種類
膝蓋骨が膝の内側へ外れてしまうのが内方脱臼であり、外側に外れるのが外方脱臼。プードルは犬種的に内方脱臼が多いといわれている。外傷などが原因の後天性の場合は外方脱臼も起こすこともあるので気をつけておきたい。
・膝蓋骨脱臼の原因と症状
生まれつき滑車溝が変形しているなどの異常、靭帯や大腿骨、頸骨の異常など先天性のもの。また、事故や足を滑らせたなど膝に無理な力がかかったことが原因の後天性のものがある。プードルは先天性が多く、症状は程度により違いがある。
・膝蓋骨脱臼の治療
治療は症状のグレードや原因で違ってくる。手術が必要となるのはグレード2以上だが、グレード1でもほぼ2に近い状態で、骨の成長期である生後11ヶ月以内ならば手術を行う場合もある。
膝蓋骨内方脱臼のグレード
グレード1
手で膝蓋骨の部分を押してみると、膝蓋骨が脱臼するが、手を離すと膝蓋骨は大腿骨の滑車溝の正常な位置に戻る。
グレード2
膝を曲げたり、手で押すと膝蓋骨が滑車溝から脱臼するが、膝を伸ばしたり、手で押せば膝蓋骨は元の位置に戻る。
グレード3
常に膝蓋骨が脱臼したままだが、手で押すと元の位置に戻る。だが、その手を離すと再び膝蓋骨が脱臼する。
グレード4
常に膝蓋骨が脱臼したままで、その部分を手で押しても、元の位置には戻らない。重度の場合は膝が曲がったままとなり、がに股になる
前十字靭帯断裂
■断裂すると膝に痛みが出る
・前十字靭帯断裂する場所
膝の関節を安定させるため大腿骨と頸骨をつなぐ靭帯にはいくつかある。前十字靭帯は、大腿骨の後ろ側から頸骨の前側に位置する靭帯。その部分が断裂することでトラブルを起こす。
・前十字靭帯断裂の原因と症状
膝蓋骨脱臼を発症し、それが原因で引き起こされる場合や事故などの外傷性のものが原因として挙げられる。痛みが出るため、損傷した側の足を上げたままでいたり、歩き方にいつもと違う様子が見られる。同時に半月板損傷を起こしていることも多い。
・前十字靭帯断裂の治療
断裂した状態の程度によっても違ってくるが、治療としては主に手術を行うことになる。手術にもいくつかの方法があり、予算や獣医師の考えなどにより、どの方法を行っていくかは相談しながら選択を。
レッグカルベペルテス病
■大腿骨頭が壊死する病気
・レッグカルベペルテス病が発症する場所
犬の後ろ足にあたる大腿骨の先端部分が大腿骨頭。骨盤と連結し、股関節を形成している部分であり後ろ足の付け根あたり。そのため発症すると痛くて歩きにくくなる。
・レッグカルベペルテス病の原因と症状
大腿骨頭の一部の血行が悪くなり、壊死を起こす遺伝性の病気。激しい痛みを出すとともに骨が変形してしまう。両足に起こることもあるが、片足に起こる場合が多い。歩き方がおかしい、足をあげる、腰や足を触られることを嫌うなどの症状が見られる。症状の発現は生後5~8ヶ月齢で多く見られるが、数ヶ月後には強い痛みはおさまるため、発見が遅れがちになる場合も。
・レッグカルベペルテス病の治療
根本治療には手術が必要となるが、症状の程度によっては運動制限や鎮痛剤などの内服薬を投与して痛みを抑えてコントロールできる場合もある。手術の方法にもいろいろある。以前は大腿骨頭を切除する手術が一般的だったが、最近は切除せず大腿骨頭を回転させて壊死していない部分を関節にはめる方法なども行われている。
環椎軸椎脱臼
■首を動かすと痛みが出る
・環椎軸椎で痛めてしまう場所
軸椎とは第二頸椎といわれる首の骨の部分。通常は骨は等間隔で形成されているが、間隔が開いてしまうと首を動かした際に周りの神経を刺激し、痛みを出す。
・環椎軸椎脱臼の原因と症状
首の骨の構造が先天的に弱く、安定が保たれないため、それにより神経症状を出す病気。抱いた時に首が動くことで痛みを出すため「キャン」と鳴いたり、歩き方がおかしいなどが主な症状となる。
・環椎軸椎脱臼の治療
症状の程度によっても違ってくるが、基本的に手術を行う場合が多い。手術の方法にも種類があり、上の写真のように間隔の開いた第一頸椎と第二頸椎の骨を一体化させ、ずれないようにする方法が一般的。
下顎の骨折
■高齢で重度の歯周病のある犬は要注意
・下顎の場所
口の下側の部分。犬の場合、人のように食べ物を歯ですりつぶすことはできないが、上下に歯を動かすことで食べ物を切り裂くことに適応している。下顎が骨折するとこれらの正常な咀嚼運動ができなくなってしまう。
・下顎の骨折 原因と症状
歯周病や噛みつきが原因で下顎を骨折してしまうケースも少なくない。高齢で歯周病が悪化している犬は注意を。症状は骨折の程度にもよるが、折れたところから顎が垂れ下がる。片方だけだと見た目にはわかりにくい場合も。痛みと噛み合わせが悪いため、食事がしにくくなる。
・下顎の骨折 治療
他の骨折と同様に、治療は手術を行うことになる。骨折の程度や位置を考慮しながら、それに合わせた手術方法を獣医師と話し合って選択していく。下顎の骨折は、歯周病にさせないことが予防につながる。日頃から歯の健康管理をしっかり行うことが大切。
撓骨・尺骨の骨折
■ジャンプなどした時に起こりやすい
・撓骨・尺骨の場所
前足首から肘の部分に位置する2本の骨が撓骨と尺骨。2kg程のトイ・プードルならば撓骨の幅は4㎜程しかない。尺骨はもっと細くて2㎜程度となる。厚みは撓骨で2~3㎜程。それだけに無理な力がかかると折れやすい。
・撓骨・尺骨の骨折 原因と症状
上で説明したように、前足首から肘までの間にある骨を骨折してしまうというもの。ソファなどから飛び降りた、足元がつまづいた、滑ったなどの強い衝撃で折れやすい。両足同時に骨折することもある。特に生後7~8ヶ月頃の元気な子犬は、はしゃぎすぎて起こりやすいので注意しておきたい。
・撓骨・尺骨の骨折 治療
骨折の治療は基本的には手術を行う。犬の大きさや骨の折れ方、骨折した部分の距離などを考慮しながら、手術の方法を選択していく。骨の太い犬では、金属の棒を骨の中に入れて骨をつなげる「ピンニング法」を行えるが、プードルでは金属の板とネジを使って骨をつなげる「プレート法」が選択される。
その他の骨折
・骨折の多い部位
プードルは活動的な犬が多いため、それだけに全身のどの骨も折れる可能性はある。骨折かどうかわかりにくく、レッグカルベペルテス病と勘違いされやすいものに「大腿骨頭成長板剥離骨折」がある。生後7~8ヶ月頃までの子犬に多い病気のひとつ。
・骨折の原因
大腿骨頭の成長板は大腿骨頭の周囲にある部分。高い所からの落下や交通事故など強い衝撃を受けたことで、その成長板が剥がれて、大腿骨頭が変形することで痛みを出す。他の骨折についても物理的にその部分に強い力が加わったことが原因となる。
その他の脱臼
・脱臼の多い部位
脱臼も骨折と同じように、関節のあらゆるところで起こる可能性はある。プードルで気をつけておきたいのは、大腿骨が股関節から外れてしまった状態になる「股関節脱臼」や「肩関節の脱臼」、「踵や手首足首の脱臼」、「顎関節の脱臼」などがあげられる。
・脱臼の原因
股関節脱臼は先天性のものもあるが、プードルの脱臼の多くは後天性によるもの。肩関節、踵や手首足首も含め、高い所からの落下や交通事故などが主な原因に。顎関節の脱臼は、よく噛みつく攻撃的な犬や硬いものをかじる犬に多い
予防のためにできること
・家の中の運動だけではなく、日光を浴びながら十分な散歩を行う。
・食事は偏りのないよう、バランスのよい食事を心がける。
・ジャンプした時に足元が滑らないかなど、室内の生活環境を整えておく。
・抱いた時に落とさないよう、抱っこの仕方に気をつけておく。
しっかり散歩を行うことで強い骨に育てる
プードルの関節や骨を丈夫にするには、バランスの良い食事と運動が大切だ。
足の骨などは特に、歩くことで骨に振動が伝わり、その振動によって骨密度が増えてくるといわれている。運動することで筋肉も発達し、骨も発達する。
体が小さいから散歩はそんなにしなくていいやではなく、小さいからこそ骨折から守るために散歩は欠かせない。
例え距離は短くても、走る、坂道をのぼるなどの内容を取り入れながら、ねばり強く、骨折しにくい骨に育てることを心がけてあげよう。
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プードルスタイル vol.18『骨折・脱臼から愛犬を守る!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。