柴犬は、番犬の仕事に最も向いた犬種と言われている。縄張り意識の強さ、相手が根負けするまで吠えつづける執念深さ、といった必要条件に適合した気質だったとか。でも、最近はハイテクなセキュリティー機器も普及して、番犬の仕事も激減。室内飼いの犬も増えている。状況的に、番犬仕事もやり辛い。また、柴犬の性格も昔よりはカドも取れて、いいヤツになってるようだから「いまどき」は番犬の事情も違ってきてる、かな!?
日本犬の番犬事情
柴犬は番犬に最適の犬種。それが昔からの定説だった。なぜ、そのような適性を有していたのか?
柴犬は用途にあわせて改良された犬ではない。番犬向きの気質や能力も、日本人と一緒に暮らす間に自然と身についたものだ。
山深い山村に暮らし、日本犬としての純血を守ってきた犬たちが、現在の柴犬のルーツ。山村では、放し飼いにされた犬たちが村の入口にいた。余所者が入ってくれば、警戒してしばらく後をつけまわし監視する。村にとって危険な者だと判断すれば、吠えて村人に教える。そんな気質が、現代まで受け継がれてきたのだろう。
昭和30年代頃までは、日本も現代より治安が悪かった。空き巣や強盗も多かったから、番犬は必要だった。敷地に入って来た不審者には有無をいわせず噛みつくような獰猛な犬のほうが、求められる状況もあったのだ。
また、昔の人は鷹揚だったため、間違えて近所の人の噛みついても、菓子折のひとつも持って謝罪に行けば、問題になることも少なかった。
しかし、現代はそういったわけにはいかない。勝手に家の敷地に入ってきた者にも、それに噛みついたりしたら問題になる。
また、都市部の住宅事情では、うるさく吠えれば近所迷惑で肩身が狭い。
治安も良くなり、ハイテク機器のセキュリティー・システムが普及した現代では、番犬の仕事も不用。
むしろ、マジメに番犬されては困る……最近は、そういった事情を犬たちも察してか?昔ほどには番犬という仕事に意欲をみせずに、あまり吠えない柴犬も増えているという。
また、ブリーダーも飼う側の事情を考えて犬を交配するため、吠えないおとなしい犬を選んで交配させているのかもしれない。
めったに吠えない。が、家族以外の者を選別する意識は、強くなる傾向にある? 番犬としての鋭いセンサーは衰えず。普段はおとなしいけど、やる時はやる。実際、そうなれば理想の番犬なのだが。
番犬することの意味と対策
自分の所属する群れを外敵から守ろうと、迫ってくる危険を吠えて仲間に知らせるオオカミの本能。人はそれを利用して、犬に番犬という仕事を与えた。だが、その職務に忠実すぎて、誰彼かまわずうるさく吠えつづけるのは、今時の住宅事情では問題がある。ほどほどでちょうど良い。それにはどうればいいのか?
まずは犬が飼われている環境。柵で囲われた庭などで飼われていると、柵の内側は仲間、外側の者は敵という認識を強くする傾向がある。
また、柵があるため、敵はそう簡単に中に入って来れないだろう。と、強気になって吠えてしまうこともあるのだ。犬小屋を柵の外が見えない場所に設置するなどの工夫で、ある程度の改善は期待できる。
未去勢オスには、縄張を守ろうとする本能が強く出て過剰反応する傾向がある。その場合は、去勢するのもひとつの解決策だ。
来客や配達の人が家の敷地に入ってきた時、飼い主が出てきて「やめて」といっても、吠え止まずになおさら激しく吠えつづける犬も多いのは、犬が正しく理解してないから。飼い主が制止したつもりでも、犬からすれば主人が加勢して一緒に外敵と戦ってくれてると思って、なおさら張り切って吠えるわけだ。
この場合、飼い主の立ち位置が問題。来客と向かい合った状態で犬の後ろから“やめて!”と言っても、犬は後方から応援されていると誤解しやすい。この場合は、来客と犬との間に入り、犬の方に顔を向けて制止しよう。
また、来客が用事が終わって帰るまで吠えつづけた犬は、自分の吠え声で敵を追い払ったと錯覚する。それで味をしめて、次からはさらに執拗に吠えつづけるというわけ。そんなクセをつけないうちに、できるだけ早く止めさせるようにしなくてはならない。この場合、声で制止するよりも、大きな音をたてるほうが効果がある。犬が驚いて吠え止んだ瞬間に、ほめてオヤツを与えるなどするのもいい。
飼っているだけでは、ほどほどの番犬には育たない。飼い主側にもそれなりの努力や工夫も必要だ。
また、室内飼いされている犬も、本能で自然と番犬仕事をしてしまうもの。室内飼いにされていると、家族とその他の人間を選別する意識は外飼いの犬よりも強くなることがあり、そのぶん来客に過敏反応してしまう犬もいる。
室内飼いの犬のムダ吠えをやめさせるのにも、これらの方法が応用できるそう。
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今時の番犬仕事はけっこう難しい
ひと昔前までは、姿形や態度でアブないヤツはすぐに判断できた。不良のヤンキーやその筋の人は一目瞭然、泥棒も大きなフロシキ背負って泥棒髭を生やしてた。でも、最近は難しい。おとなしそうな好青年が突然キレて、とんでもないことやらかしたりするし、判断が難しいのだわ。
また、昔は夜中になればフツーの人はみんな家に帰って晩飯食うか寝てるかしてたもの。夜中フラついてのは泥棒とかに相場は決まってたものだが、今時は若い女子だって平然と深夜に町歩きしてたりする。
人間様でさえ怪しい人物の判断に迷うご時世なだけに、それを犬にまかせてもなぁ。無理ってもんだよ。マジメに番犬仕事しようものなら、隣近所に迷惑だと怒られる。吠えずに泥棒に入られて「役立たず」と侮辱されたりもする。室内飼いだったりすると、外の情報が不足してるから、不審人物を見極めはさらに難しいんよ。いまどきの番犬、マジ大変。そこんとこの事情、わかって欲しいのだが……。
チワワとかヨーキーみたいに愛想ふりまくだけの愛玩犬なら、そんな期待もされてないから楽なんだけど。「柴犬は番犬に最適」って固定観念があるから、飼い主もそれを求める。そんなに期待されたら、頑張らないと。よーし、気合い入れて吠えてみるか! 何、やっぱうるさいって? これでまた支持率低下。
ドーベルマンくらいなコワモテなら、見ただけで充分に相手もビビるから、吠える必要もないんだけどね。柴犬ってのはソンな犬種だな。
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Shi‐Ba vol.65『吠えるのは近所迷惑?家を守るのは仕事?いまどき番犬やっています!』より抜粋
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