最近犬に増えてきたってホント?気がつきにくい胆嚢の病気と役割

胆のうにまつわる病気にもいろいろあるが、最近、胆泥(胆石)症などがよく見られるようになっているとか!?胆のうのある位置や役割、そして気をつけたい胆のうの病気について知っておきたい。
 

 

胆のうについて詳しく知っておこう

犬に増えている胆嚢の病気

■位置:肝臓に挟まれている
肝臓の内側右葉と方形葉の間にある。
 
■役割:消化機能を助ける
消化液の胆汁を貯めて排出させている。
 
■ポイント:すべての動物にあるわけではない
馬、鹿など胆のうがない動物も中にはいる。

 
▼胆汁を貯めておく場所が胆のう

胆のうにまつわる病気を紹介する前に、胆のうは体のどこにあってどのような役割をしているのかについて知っておくことが大切だ。

まず、犬の肝臓は先が6つの房(6葉)で分かれているが、その中の内側右葉と方形葉に挟まれるような場所に胆のうがある。一見すると、胆のうは空豆のような形をしており、袋状になっている。

では、体の中で、胆のうはどのような役割をしているのだろうか。大ざっぱに言えば、消化を促すための胆汁を一時的に貯め、濃縮する役目だ。具体的な働きは次の通り。

食べ物を消化する際に必要な「胆汁」という消化液は肝臓で作られている。その胆汁は、肝内胆管を通して、胆のうへと集められ、一時的に蓄えられる。

食事をすると、胆のう内に蓄えられ、濃縮されていた胆汁が総胆管を通って、十二指腸へと排出される。十二指腸で膵臓からの消化液などと一緒になった胆汁は、腸が栄養吸収しやすくなるよう食べ物中の脂肪分を乳化させる働きをしている。

人間にも犬にも胆のうはあるが、すべての動物にあるわけではない。「無胆のう動物」として、生まれつき胆のうが存在しない動物もいる。馬、鹿、ゾウ、ラクダ、リス、ラット、ヤマアラシ、ハトなどが無胆のう動物だ、これらの動物は、胆汁を貯蔵、濃縮をさせる胆のうがないため、肝臓で濃い胆汁が分泌されるようになっている。

胆のうがある犬にとっては、大切な器官のひとつ。何らかのトラブルを起こせば、体に大きな影響を及ぼす、胆のうの役割や仕組みを理解した上で、胆のうのトラブルについて、次で紹介していこう。

 

犬の胆のうの疑問

犬に増えている胆嚢の病気

■よく聞くけど……胆石って何?

胆石は、胆汁がたまって蓄積することで、胆汁が変質して結晶化したもの。含まれている主な成分は、胆管や胆のう内の細菌や剥がれ落ちた粘膜、胆汁塩酸、たんぱく質、マグネシウム、コレステロールなど。

人の胆石と比べると犬は硬い石であることは少なく、粟粒大から小豆代の大きさがほとんどだ。石になる前に泥状となる段階があり、人の場合、胆管が太いため、泥の状態で詰まることはない。犬の場合は泥状でも詰まることがある。

 
■胆石ができやすい体質ってあるの?

胆石ができやすい意外な犬種として、チワワ、プードル、シーズーがあげられる。胆石ができやすい体質は犬種にもよるが、遺伝的なものや食生活なども関係していて、これらが重なることでできやすくなると考えられている。

膀胱結石などは生後半年でできてしまう犬もいるが、胆石、あるいは石になる前の状態の胆泥は、早くて2、3歳。多くの場合は6、7歳以降に多く見られる。性別による違いはない。

 
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■トラブルを抱えやすい犬の特徴は?

総胆管や十二指腸の開口部が細い、体質的に胆石ができやすい体質をしていると、胆のうにトラブルを抱えやすくなる。

総胆菅内に石ができたり、十二指腸の開口部を通れない大きさや多量の石ができてしまうのが、一番の問題。ほぼ詰まってしまうと、本来排出されるはずの胆汁が肝内胆菅へと逆流し、肝臓に障害を起こす。悪化すると黄胆という症状がでる。

 

気をつけたい犬の胆のうの病気

犬に増えている胆嚢の病気

■胆泥(胆石)

どんな病気:
肝臓で生成され、胆のうに一時的に貯蔵されている胆汁が何らかの原因で変性し、泥状あるいは結石状となって、胆のうにたまり、たまに吐くなどのトラブルを引き起こす病気。

症状:
主な症状として、時々嘔吐が見られる。食欲不振、元気がないなど。なかなか気づかれない場合も多い。泥状のものをそのままにしておくと結石となる。結石が詰まって胆管閉塞を起こすと急性黄胆を起こし、最悪の場合、命に関わることも。

治療:
症状の程度で変わってくる。軽ければ、胆のうから胆汁の排泄を促す利胆剤の内服と食事療法を行っていく。場合によっては手術で胆のう内の清浄を行う。重度の場合は胆のう摘出手術が必要。

 
■胆のう炎

どんな病気:
胆のうの壁そのものが炎症を起こす病気。原因の多くは細菌感染といわれている。また、その他の原因として胆石が刺激して胆のうの壁に炎症を起こす場合がある。重症になると壊死を起こして胆のう壁に穴を開けてしまうことも。

症状:
急性と慢性とがある。急性の場合は、初熱の他、肝臓や腹部に痛みを出す。だが、犬の場合、痛みを出しているかの判断が難しい。なんとなく元気がない様子などで気づいて、診断してもらうと慢性化しているケースが多い。

治療:
原因や程度にもよるが、重度になると胆のうが破裂する恐れがあるため、抗生剤や消炎剤で炎症を止め、細菌感染を抑えていく。胆汁の排泄を促す利胆剤なども使う。

 
■胆のうポリープ(胆のう腫瘍)

どんな病気:
胆のう内部の粘膜面に腫瘍ができる病気。胆のうの病気の中で、そんなに多い病気ではない。良性と悪性があり、ポリープは良性のものを示す場合が多く、悪性の場合は腫瘍といわれる。

症状:
ポリープや腫瘍は、それができている場所や大きな発育具合によって、症状に違いがある。はっきりした原因もわかっていないが、刺激の受け方や体質、遺伝などと絡んでいるのではと考えられている。

治療:
良性か悪性かは、手術で胆のうごと切除し、病理検査で調べていく。もし悪性の場合であれば、他のガンの治療と同様に、腫瘍の種類によって抗がん剤などを用いて治療していくこともある。

犬に増えている胆嚢の病気
 
■胆のう粘液嚢腫

どんな病気:
胆のうの内側の粘膜からは粘膜が出ている。その粘膜が刺激(細菌感染など)、食事内容、体質などの影響を受けて変性してしまい、本来なら固まらないはずの粘液が石のように固まってしまう病気。

症状:
胆泥(胆石)症と症状は似ており、時々吐き気が見られる、食欲不振、元気がない、など。胆のう粘液嚢腫は胆のうの中だけで固まり、重度になると胆のうがふくらんでしまう。破裂のショックで命を落とす場合も。

治療:
胆のう粘液嚢腫は状態によっては急死することがあるため、早期の治療が欠かせない。基本的には胆のうを手術で取り除くことになるが、病気が進行するにつれ手術のリスクが高くなるため、気をつけたい。

 
■胆汁性肝炎

胆汁の排泄が閉塞されると、本来流れていくはずの胆汁が肝臓内に鬱滞する。その弊害として胆汁性肝炎を引き起こしてしまう。そのままにしておけば胆汁性となる。また、肝臓に炎症を起こすことで胆管炎や胆のう炎を引き起こす場合もある。

 
■膵炎・十二指腸炎

胆汁を排泄する胆菅と膵液を排泄する膵管は十二指腸に開口している。そのため十二指腸炎や膵炎を引き起こすと、その炎症で開口部が閉じてしまうことがある。結果として、皮膚が黄色く見える黄疸の症状がみられることがある。

 

超音波検査で胆のうの状態を調べておく

愛犬にさまざまな胆のうのトラブルを起こさせないためには、定期的に健康診断を行い、超音波検査を受けておくこと

胆のうの状態は、血液検査やレントゲン検査ではわからない。超音波検査を行えば、胆のうの大きさや中の構造、胆泥や胆石があるか、ポリープのようなものができているか、胆のう粘液嚢腫になっているか、などの区別ができる。

もし胆のうにトラブルを起こしていても、初期の段階では、なかなか気がつかない場合が多い。病気が発見された時には、すでにかなり進行していたというケースも少なくない。

6、7歳以降は年に1~2回、超音波検査を受けるように心がけておこう。

 
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コーギースタイル Vol.37『最近犬に増えてきたってホント?胆のうの役割と病気』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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