犬がパニックになれば、家族はもちろん、その場に居合わせた人や犬、また犬自身に危険が及ぶことも考えられる。パニックが起きる前のボディランゲージを学び危険を回避しよう。
1.想定されるパニック時の危険
2.犬がパニックになる原因
3.犬からのストレスサイン
4.ストレスをなくすための行動
5.STOP!パニック!3つのポイント
6.トレーニングや社会化で犬と向き合うこと
想定されるパニック時の危険
1.噛みつかれるなど、飼い主にとっての危険
一番身近にいる飼い主や家族に危険が及ぶ可能性は非常に高い。例えば急に噛みつかれたり、飛びかかられることによって怪我をしたり、持ち物を壊されたり、あるいは散歩中のリードがからまって事故につながったりなど。また犬の落ち着かない態度にストレスを感じることも。
2.怪我、事故、騒音など周囲にとっての問題
屋外や、家での来客中に犬がパニックになることも多いが、その場合は他人や他の犬にも迷惑がかかってしまうかもしれない。噛みつかれたり飛びつかれたりすることによる怪我や事故につながる可能性が考えられる。また犬が激しく吠えることで、近所に騒音として迷惑がかかることもある。
3.犬自身にとっての問題
そもそも犬がパニックになる原因は、不慣れな状況や苦手なことをされた時などに感じる強いストレス。したがってパニックになる機会があればあるほどに、犬自身の精神的な負担も大きくなる。また他者に噛みついたり、飛びついたりして、犬自身が怪我をする可能性も高くなる。
犬がパニックになる原因
人間の場合、パニックといえば、動悸が激しくなったり、ふるえたりして日常生活に支障をきたす大事の状態がイメージされるかもしれない。
ここでは犬について、それよりは軽い、本能的に噛む、逃げる、固まるなどの、いわゆる『パニクる』状態をパニックと定義して説明しよう。
犬がパニックになるのは、本能的行動を制御している脳の部分=前頭前野がストレスなどの原因で働かなくなるため。すると噛む、逃げる、かたまるなどの本能的行動に出る。
犬がパニックとなるストレスの原因は、大きく分けて3つ。叱られた時、くわえているものを無理にうばわれた時、爪切りやブラッシングなどの嫌なことをされた時、があげられる。
飼い主さんがいけない行動を叱っても、言葉の通じない犬には不快な気分しか伝わらない。なぜ叱られたかわからないので、その原因を今やっている行動か、直前にやっていた行動と結びつけるが、だいたいは飼い主さんの思惑と違っている。仮にあっていたとしても、犬は毎回叱られないと、その行動がいけないとは理解できない。
そのため、叱られるたびに犬は不快になり、理由もわからずストレスを感じてしまうのだ。
こうした時に噛んだり、逃げたりするのは、犬にとってはストレスを避けるための自然な行動。ただし人間社会においては、こうした本能的行動は好まれない。そこでパニックの原因として想定されるさまざまなストレスに、あらかじめ弱い刺激から慣らしていく『社会化』をしてあげよう。
よく、噛む犬は日本犬に多いなどと言われるが、それは育て方の問題。飼い主さんがうまく人間社会に慣らしてあげさえすれば、パニックになりにくい犬に育てることができる。
犬からのストレスサイン
・あえぎ声を出す
・肉球に汗をかく
・瞳孔が開く
・食べない、嘔吐、下痢
・よだれを流す
・体が硬直する
・脱毛する
・フケが出る
ゴハンを食べなくなったり、嘔吐下痢をするのは、交感神経が優位になると脳に血液が集中し、消化器の血液が不足してその働きが悪くなるため。
上記のようなシグナルが出たら、犬がストレスを感じているものと距離をおいたり、視覚情報などをさえぎったりすることで、パニックになるのを防ぐことができる。
愛犬の気持ち伝わっている?ボディランゲージ解読法【カーミングシグナル編】
ストレスをなくすための行動
・相手を攻撃する
・身近なものを攻撃する
・体を振る
・地面のにおいを嗅ぐ
・まばたきをする
・手を出すと怖がる
・背を向ける
・耳をたおす
・尾を下げる
攻撃的な犬は、日常的に支障があることはもちろん、災害時などには里親が見つかりにくく、殺処分の対象となることも。そうならないために原因として想定されるストレスに、少ない刺激から慣らしていくことが必要だ。
一方、そうしたストレスにあえてどっぷり浸からせて慣らすしつけ方法もあるが、逆に犬が鋭敏化し、よりパニックを起こしやすくなるリスクも。
STOP!パニック!3つのポイント
1.トレーニングを積み重ねて好ましい行動を教える
アイコンタクトやクレートに入ることを教えておくと、犬の行動をコントロールしやすく、パニック予防につながる。叱っても犬は理解できないので、ほめながら教えていこう。
2.できれば生後4ヶ月までにさまざまな刺激に慣らす
警戒心より好奇心が勝る社会化期に、花火の音、車の振動、よその人、近所の犬など人間社会のさまざまな刺激に慣らす。成犬になっても時間をかけて慣らすことはできる。
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3.これから飼う場合は早期離乳でない犬を迎える
生後45日まで親兄弟と過ごした犬は、犬同士のコミュニケーションの基礎を学んでおり、ストレスへの耐性も強い。社会化もしやすい傾向にある。
トレーニングや社会化で犬と向き合うこと
犬のパニックの予防の仕方について、上にポイントをまとめてみた。トレーニングは、犬を番犬でなく愛玩犬として飼うなら必要なこと。
人間の場合、少年院の鑑別所に送られた人の親を調査すると、放任しているか、過干渉かのどちらかだそう。
犬を育てる場合も同様で、放任された犬は人間社会に適応できず、少しの刺激にもストレスを感じてしまい、本能にもとづく行動、噛んだり吠えるといった行動をしやすくなる。
逆に飼い主が過干渉だと、犬はそれをストレスに感じ、犬が主導権を握るようになる可能性も。こうした犬も、外から受けるストレスに弱く、パニックになりやすい、
パニックを防ぐ上で、特に重要視したいのが、アイコンタクトとクレートのトレーニングだ。アイコンタクトをとれる状況なら、犬はパニックにならない。
また犬はクレートに入ることで安心できるし、飼い主さんはトレーニングを通して犬と向きあうことで、パニックになる前の犬のシグナルもわかるようになり、いざという時はクレートに入れることでパニックを回避できるメリットも。
2番の社会化で、先にも触れた通り、犬がストレスを感じることに対し、視覚、聴覚、触覚、臭覚などの刺激やそれらの組み合わせに慣らしていく。
3番の早期離乳については、すでに飼っている犬は対処できないが、これから飼う場合はぜひチェックしたい。マウスの実験では、早いうちに親から引き離した個体は、そうでない個体と比べて、ストレスに弱いという結果が。犬も早期離乳だとストレスに弱く、社会化に時間がかかる傾向がある。
ポイントをおさえて実行しても、犬が激しいパニックに陥るなら遺伝的な問題が原因かも。その場合は、早めに獣医行動学の専門家に相談をしよう。
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Shi‐Ba vol.87『社会化や事前の対策でより安全な暮らしができる 柴犬パニックで飼い主パニック!!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。