喜怒哀楽だけでは語りきれない。日本犬流ツンでれサインを読み解く!

日本犬は素っ気ないけど一途に甘えるところもある。まさに〝ツンでれ〞。愛犬のしぐさに振り回されている飼い主も多いのでは?今回は日本犬のツンでれサインを読み解き、〝でれでれ〞にさせる方法を探っていこう!
 

 

そもそも“ツンでれ”とは?

15年ほど前から使われ始めたが、実は定義がちょっと曖昧な言葉だ。

人同士の場合、「人前では素っ気ないのに、二人だけになると甘える」「恥ずかしくて素直に甘えられない」などの解釈があるが、周囲や相手の目を気にして態度を変えることが特徴。

犬の場合、第三者の目を気にするかどうか? 犬に聞いてもわからなかったので、本特集では素っ気ないことを“ツン”、甘えることを“でれ”として、比較することにした。

 

ツンでれになりやすいのはどんな犬?

日本犬の飼い主へのアンケートを参考に、行動を〝ツン〞と〝でれ〞に分けてまとめた。ツンでれになりやすいのはどんな犬だろうか?

年齢で言えば、成犬や老犬。子犬は保護者に甘える態度をとるが、成長すると素っ気ない部分が出てくる。

性別だとオスは去勢手術をするとオスらしい主張が減って、でれがやや多くなる可能性がある。メスは不妊手術の影響をあまり受けないかもしれない。

また、育った環境の影響も大きい。日本犬は変化に対応するのが得意ではないので、住環境や生活パターンがたびたび変わったりしていると、不安が強くなってしまう。そんな状態では家族にアピー
ルをするどころではない。

逆に落ち着いた環境で育っていれば、安定した性格になり、自分のさまざまな気持ちをアピールできる犬に育つだろう。

ツンでれのサインには、犬が生まれつき持っている『ボディランゲージ』と、飼い主さんとの生活で身につけた『暮らしのサイン』がある。

ツンでれのサインは両方が混ざっていることも多い。ボディランゲージを読み取るのは難しいが、擬人化ではなく、犬の気持ちになって考えてみよう。

 

ボディランゲージと暮らしのサインとは?


・暮らしのサイン

犬が人との暮らしの中で学習で身につけたサイン。犬本来の行動や、試した行動に飼い主が良い反応を返したことで強化されたケースが多い。例えばひざにあごをのせる、オモチャをくわえて持ってくるなど。家庭ごとにオリジナルサインもある。犬に対しては使わない。

・ボディランゲージ
犬が生まれつき持っているしぐさによる感情表現のこと。仲間と共同生活を送るために必要なコミュニケーション方法。特に争いを避けるために役立っている。例えばあくびをする、顔を
そむける、背中を向けるなど。これらは犬だけでなく人に対しても使う。

 

ちょっと地味?日本犬あるある ツンでれサイン

日本犬は洋犬に比べて愛情表現が地味だが、豊かな感情の持ち主だ。飼い主だからこそさりげないサインを見逃さずに読み取ってあげよう。ボディランゲージも知っておきたい。

「でれ」で見られるサイン&ボディランゲージ

後ろ向きに背中を押しつける
後ろ向きに背中をぐいぐい押しつけて「撫でて」と言っている。

お腹を見せてアピール
ヘソ天になってお腹を見せ、マッサージを催促する。後ろ足を上げてチラッと見せるのもこのサインに含まれる。

お尻をくっつけてリラックス
人にお尻や背中などの体の一部をくっつけて休む。足先をつけることは少ない。

くねくねと体をすり寄せる
体をくねくねと曲げながら体をすり寄せてくる。尾を大きく振っていることもあ
る。やや興奮している時に見せるサイン。

期待してキラキラと見つめる
楽しいことが起きることを期待するかのように、目をキラキラと輝かせてアイコンタクト。

撫でられているうちにウトウト
撫でられているうちにウトウトしてきて、やがて眠ってしまう。体の一部をくっつけてくることもある。

呼んだ時に目を上げて尾を振る
呼んだら目線を上げ、うれしそうな顔になる。リラックスして尾を振っている。

人を踏む(足の上に座る)
人の足を踏んだり、足の上に座ったりする。無意識ではなく、意図的であればサインになる。

人の膝にあごをのせる
家族の膝にあごをのせて上目遣いでアピールする。暮らしのサインとして家庭犬が身につけていることが多い。

帰宅したら動かず尾を振っている
家族が帰宅した時、出迎えに行かずその場でゆるやかに尾を振っている。

 
ツンで見られるサイン&ボディランゲージ

名前を呼ばれても知らんぷり
名前を呼ばれても。聞こえていないかのように無反応。ただし知らんぷりして家族が来るのを待っている場合は、逆にでれのサインとなる。

家族より他人に愛想がいい
散歩中に会う近所の人や来客などに、飼い主そっちのけで愛想を振りまく。

人の手がギリギリ届かない
「オイデ」と呼んだ時もくつろぐ時に近づいてはくるものの、人の手がギリギリ届かない絶妙な距離を保って離れている。

飼い主の言うことを聞かない
飼い主が「オスワリ」などの指示を出しても言うことを聞かない。笑顔でごまかして終わることも。ところが近所の人や他の飼い主の言うことはよく聞く。

帰宅しても顔を上げず無反応
家族が帰宅しても出迎えに行かず、顔も上げないほど無反応。

遊びに誘っても無視する
オモチャを見せたり走ったりして遊びに誘っても、興味がなさそう。はしゃぐ飼い主を見つめているだけ。

撫でていると離れる
犬が近寄ってきたり体を押しつけてきたりしたから撫でたのに、すっと離れてしまう。

 

読み取れている?ツンのサインに潜む本当の気持ち

素っ気ないツンに見える行動には、犬の好みや飼い主との学習が大きく影響していることも少なくない。日本犬にありがちなツンサインから、本当の気持ちを考えてみよう。

撫でていると去っていく

・撫でてほしくなかった
・少し撫でられて満足した
・近くにいたいだけだった

【改善点】
犬が近寄ってきたから撫でたのに、迷惑そうな様子で去っていくことがある。家族の近くにいたいだけで撫でられたくない気持ちだったのかもしれない。あるいは少し撫でられただけで十分満足した可能性もある。近くに来た後の犬の様子を見て、撫でてほしいと思っているかどうか判断しよう。

飼い主より他の人の方が好き

・飼い主より近所の人の言うことをよく聞く
・家族よりも来客に愛想がいい
・散歩の時に会う他の飼い主に大喜びする

【改善点】
いつも一緒の飼い主より特別感があるのかもしれない。さらにオヤツをもらえる場合はなおさら。親しい人がいるのは良いこと。新しいもの好きで来客に興味津々でも、不安を感じていることがあるので、来客からごほうびを与えてもらおう。

帰宅しても出迎えに来ない

・帰宅時の服装などが苦手
・先に帰宅した家族がいた
・楽しくない人と思われている

【改善点】
帰宅した家族がいた場合、新鮮味がなくて出迎えないことも。もしくは、帰ってきた時の服装や、持ち物が苦手で近寄らない可能性も考えられる。「この人が帰ると楽しいことが起きる」と犬に教えるために、帰宅後にオヤツをあげたりオモチャで遊んだりするのも一案。関係づくりを心がけよう。

足拭きやブラシができない

・触られたくない
・念入りなケアが苦手
・押さえつけられたくない

【改善点】
犬は足先や鼻先などを体の末端を触られるのが苦手。無理に押さえて我慢させるより、ごほうびを与えながらケアの練習をした方がいい。足拭きは短時間の練習にとどめ、タオルの上を歩かせて汚れを取るようにするのも一つの方法です。

新しいオモチャで遊ばない

・オモチャが好みではない
・見慣れないものに用心
・遊びたい気分ではない

【改善点】
犬と数種類のオモチャで遊んでみて、嗜好性をチェックしてから購入しよう。日本犬は慎重なので、見慣れないものを受け入れるまで少し時間がかかることもある。部屋に置いて様子を見ることから始めて。遊びたい気分を逃さないことも大切。

散歩に行きたいのに逃げる

・リードが好きではない
・押さえられたくない
・追われるから逃げている

【改善点】
リードをつける時のカチャッという音や、つける時に押さえられるのが苦手な犬もいる。リードを持って迫ってくる飼い主に不安を感じているのかもしれない。散歩前は興奮しているので、いつもより慎重な対応を心がける。

散歩中には触られたくない

・周囲を探っている時に邪魔されたくない
・刺激の多い状況を処理するので手一杯
・撫でられたい気分ではない

【改善点】
安全な自宅と違い、犬にとって外はさまざまな刺激に満ちている。周囲を探ったり状況を処理したりすることに集中している場合、急に触られるとびっくりしてしまう。落ち着いて撫でられたい気分ではないことも。犬の気持ちを尊重しよう。

飼い主からオヤツを食べない

・そのオヤツが好みではない
・今まで食べたことがない
・焦らすばかりでもらえない

【改善点】
嗜好性の問題かもしれないので、まずは別のオヤツを試して。用心しているなら気の済むまでチェックさせるのも一案。オヤツを見せてもすぐに与えないと、犬は焦らされるばかりで嫌になってしまう。オヤツをすぐに与えることから始めよう。

一定の距離を保って近づかない

・急に接触されたくない

・くっつきたい気分ではない
・家族の存在を感じていたい

【改善点】
急に撫でられたり抱きしめられたりしたのが嫌だったのかもしれない。単に暑くてくっつきたくない場合もある。距離があってもその場にいるなら、家族の存在を近くで感じていたいと思っているので、その気持ちを尊重する。

 

学習による素っ気ない行動は飼い主の対応次第で変わる

 
日本犬はツンが多くなりがちな特性を備えている。しかし何でもかんでも「日本犬だから仕方がない」という一言で済ませてはいけない。単純に飼い主が犬のオヤツやオモチャの好みを見誤っている可能性もある。犬が飼い主の行いによって学習したことも多いという。

ここで紹介した素っ気ない態度は対応を間違えると心身の距離がどんどん広がって、犬に避けられるようになってしまいます。犬に逃げられるようになったら、ツンでれどころか〝ツン逃げ〞ですよね。さらに犬が追い詰められて歯を向くなどの危険なサインを出しているなら、それをからかうような態度もやめましょう。犬が本当に怒ったら〝ツンキレ〞になってしまう。

犬に冗談は通じない、ということだ。

 

放置は要注意のサイン


※写真はイメージです。

「日本犬はツンでれだから」と思い込み、本気で嫌がっているサインを見逃さないように気をつけて! 平和主義者の犬でも追い詰められると攻撃に転じることもあり、良いことは全くない。

我慢している
撫でられたりギュッと抱きしめられたりしても無抵抗だからといって、犬が喜んで甘えているとは思わないこと。実は抵抗しても無駄だと思ってあきらめている状態。犬に我慢を強いるばかりでは、関係にひびが入ってしまう。

嫌がって抵抗する
犬がくつかれるのを嫌がって、前足で押したり後ろ足で蹴ったりと抵抗する場合、無理強いは禁物だ。嫌なことから逃げる手段を封じられると、次の手段に出るかもしれない。攻撃の可能性もゼロではないので気をつけよう。

鼻にシワを寄せる
鼻にシワを寄せる表情は、「やめてほしい」という訴えや、怯えた気持ちを表しているサイン。変顔に見えておもしろいからと繰り返すのはNG。犬が鼻にシワを寄せるだけでは気持ちが通じないと思えば、次の手段に出るきっかけになる。

歯をむき出しにする
上唇を持ち上げて歯を見せる「ムキッ歯」とも呼ばれる表情は、鼻にシワを寄せるサインと同じ意味をもつ。歯を見せるだけで噛まない犬もいるが、それは攻撃に転じるのを我慢してくれている状態。関係に悪影響を及ぼすので控えること。

 

日本犬との距離の縮め方 Q&A

Q 日本犬のツンでれが役立つ時は?
A 留守番が得意で在宅の仕事も妨げない
自立心が強い犬種なので、留守番は洋犬に比べて苦手ではないだろう。ひとりで過ごすことがそれほど苦ではないので、リモートワーク中の飼い主さんを妨げることも少ないはず。ただしビデオ会議をしている飼い主さんを今まで見たことがない場合、パソコンに向かってしゃべっている状況に不安を抱くかもしれない。

Q 足拭きを嫌がるのもツンでれ?
A ケアができないのは練習不足かも
「ツンでれだから距離がある」と「足拭きやブラッシングができない」は別の話。日常のケアの練習不足。犬がケアを受け入れられるように少しずつ教えていこう。まずは犬が苦手なことを一旦やめて、次にごほうびを使ってそれらは怖いことではないと教える。

Q でれが少ないのに目立つような気がする
A 少ないからこそ際立つのでは
日本犬はもともとの気質が素っ気ないので、ツンサインが多くなりがち。だからこそ少ないでれサインが際立つのではないだろうか。振り幅が大きいからこそツンでれが目立つ。“ギャップ萌え”に似ている部分があるかもしれない。

Q ツンでれのサインを見分けるコツは?
A ボディランゲージを読み解くことが大切
飼い主さんが立ち上がった時に犬が目を向けたとする。「何するの? 楽しいことが起きそう」と思っているのか。それとも「何するの? 怖いことが起きそう」と思っているのか。これを見分けるためには犬のボディランゲージを読み解くことが大切。犬のしぐさと気持ちを照らし合わせて考えてみよう。

Q 特定の家族に対して犬が態度を変える
A 家庭内での役割分担による
遊んでくれる人、マッサージをしてくれる人など、役割分担のようなものができていると、犬もそれに合わせて態度を変えるかもしれない。家事を担当している人は日中に動き回っていることも多いので、犬が甘えるタイミングを逃していることもある。

Q 寝る時にくっついてくれるけど嫌そう
A 飼い主が寝たら逃げようと思っている
犬が抵抗するよりも、飼い主さんが寝るのを待ってから逃げようと思っているのかもしれない。嫌なことをされ続けると、何も反応しない方が早く終わることを学ぶ。大きな問題には発展しにくいが、犬にとっては嫌な状況。やがて別の場面でも逃げたり避けたりするようになるので控えたい。

Q 日本犬ならではのツンでれサインは?
A 好きと嫌の二面性があること
「人にくっつきたいけど、触られるのは嫌」といった二面性があることだろうか。くっついてきたから甘えたいのかと思って撫でると、立ち去っていくことも珍しくない。特に柴犬に多いような印象。

 

日本犬に好かれるには嫌なことをしないのが重要

ここまで日本犬のツンでれについて考察した結果、素っ気ないのはやむを得ないことがわかってきた。

とはいえ、でれサインをちょっとでも増やしたいのが飼い主ゴコロ。日本犬に甘えてもらうには、犬が安心して頼れる飼い主さんになるのが一番。

犬は好きなことをしてくれる人だけでなく、嫌なことをしない人を好む。日本犬の場合、『嫌なことをしない』というのがかなり重要なポイント。彼らはすごく賢くて、不穏な気配を察知したり危険を予測したりする能力も高い。陽気なゴールデン・レトリーバーと比べて日本犬は警戒心が強くなる学習能力も高いので、過去に嫌なことをされていると、警戒して甘えることができないのかもしれない。

愛犬の本当の気持ちを読み取って飼い主が対応を変えれば、距離がぐっと縮まってもっと仲良くなれるはずだ。

ツンが行きすぎると〝ツン逃げ〞や〝ツンキレ〞になるが、でれサインが増えて甘えん坊になっても問題は起きないのだろうか。

日本犬が甘えるようになっても、手が届かない距離から手の届く距離に移動するくらい。依存が強くなる洋犬系は分離不安傾向などの問題が起きるが、日本犬なら困ることは少ないだろう。むしろ〝でれでれ〞になるくらいの関係を目指してほしい。

ツンでれサインを読み解いて、〝ツン〞を減らして〝でれ〞を増やせる飼い主になろう!

 
人気のキーワード:
#しつけ #ごはん #シニア犬 #健康管理
#性格 #散歩 #気持ち #病気 #おでかけ
#ケア #子犬 #性別

監修:長谷川あや甫先生

Shi‐Ba vol.113『喜怒哀楽だけでは語りきれない 日本犬流ツンでれサインを読み解く!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

© 2021 TATSUMI PUBLISHING CO.,LTD