犬びより

何が違う?どう違う?犬と人の真・常識【トレーニング編】

2018/08/14

犬との暮らしで思っていることは動物種の違いが原因かもしれない。また、当たり前に思っていたことも見直してみよう。

 

暮らしとトレーニングに役立つこと

オスワリは大切

犬の訓練競技会などに参加しない家庭犬にしつけは不要、と思っている飼い主もいる。しかし、家庭犬にオスワリを教えた方がよい理由がある。「オスワリ」という号令は座った姿勢になること。するべきことが決まっているので犬にわかりやすいのだ。例えば、犬が飛びつくなどのいけないことをしようとした瞬間に、「ダメ」と禁止の指示を出した場合。指示の意味を理解していない犬はそのまま飛びついてしまう。指示を理解していても禁止されたことがわからない可能性もある。飛びついたらダメ? 飼い主を見たらダメ? うれしくなったらダメ? と混乱させてしまうかもしれない。「オスワリ」という号令は座ることを指示する言葉なので犬も迷うことがなく従えるので、結果的に飛びつくことを禁止できる。しつけの基本であるオスワリをしっかり教えることが大切だ。

スキンシップの違い

犬への愛情表現として、子供の頭をなでるように犬の頭をなでる飼い主は多いもの。これは擬人化といえるかもしれない。頭や背中をなでる動作は、人同士のスキンシップ。

犬は相手の口もとをなめることはあっても、頭や背中をなめることはなく、なでるという行動もない。柴犬の中には頭をなでようと手を伸ばすとよける犬や、頭上の手を振り払う犬もいる。とはいえ、人の手やスキンシップに対する最初の印象はプラスマイナスゼロ。

初めてなでられた時に、伸ばされた手が怖かった、しつこく触られて嫌だった、という経験をして、人の手にマイナスの印象を持ってしまうことがある。あるいは、飼い主が手を伸ばした時に、犬にうなられて触れなくなったケースもある。人が気持ちいいから犬も気持ちいいはず、と押しつけないように、犬の行動に合わせて少しずつ慣らしてあげたい。

犬は互いに口もとをなめ合うので、犬の行動に合わせてあごや首をなでることから始めると受け入れやすい。頭や背中へのスキンシップは人の行動なので、犬によっては受け入れにくいところだ。とはいえ、犬は背中を自分でなめてグルーミングできないので、なでられると気持ちよいもの。その時にほめられれば、なでられることが良いことだと学習して好きになっていく。

スキンシップと同じく、抱っこやハグも人の愛情表現の行動。犬が受け入れられるように、それらは気持ちよいことだと少しずつ教えてあげたい。

 
捕食行動と犬種の関係

オオカミを家畜化して犬になっていった。人が犬に求める作業に合わせて、オオカミのような捕食行動(本能的な行動)がない犬を選択繁殖してきた。犬の行動は家畜化の程度や犬種によって違いが現れる。

柴犬などの獣猟犬は食べる手前の仕留める行動で止められている。その他の犬種も人が求めた牧羊犬や鳥猟犬などの作業に合わせて、捕食行動を止められている。

加えて、外貌の特徴にも家畜化の影響が現れている。柴犬は捕食行動と同じく容姿もオオカミに似ている。家畜化の過程で捕食行動の部分が改良されていないので、ゲノムの解析でもオオカミから変化が少ないことがわかっている。

本能行動は学習に打ち勝つことがある

犬を理解してトレーニングを行っても、時には解決しない問題が起きる。本能的な行動をやめるように教えるのは難しい。生まれ持った行動のため、後から学習した行動よりも強いのだ。

柴犬の場合は、動いたものを追う本能を備えている。これは反射的な行動なので、トレーニングでは止められないかもしれない。『オスワリ』の号令と『追いかける』という本能を比較すると、本能の方が打ち勝つ。オスワリやフセなどの号令を教えるよりも、本能的な行動をやめさせる方が難しいことを知っておこう。根本的な解決にはなりませんが、なぜ言うことを聞かずに追いかけるのか、と悩まなくて済む。

柴犬は本能を強く受け継いでいる。学習で教えられることには限界があるかもしれないが、能力が劣っているわけではない。トレーニングに関してはやや飽きやすいことも特徴のひとつだろう。

獣猟犬は自分で獲物を仕留めることもあったので、危険を自分で判断しなくては命に関わります。頑固で自立心が強いといわれるが、それがなくては狩りができず、生き残ることもできなかった。日本犬、ハウンド系、テリア系は人づき合いが少々悪いので、しつこいトレーニングは嫌になってしまう。時間は短く、楽しい時に終わりにすることが重要。

日本犬は本能に関する行動に悩むことがあるかもしれないが、それも含めて理解してあげたい。

 

犬と人に共通していること

社会化は重要

社会化期は離乳して社会と関連を作っていく時期で、人は2~3歳、犬は3~16週齢。この時期に一緒に暮らしていた者が脳に記名されてフィルターがつくられる。同種の動物と離されて育つと、人の子供は母には懐いても他人が苦手になり、子犬も母犬以外の犬が苦手になる。人も犬もおとなになってから苦手なものに少しずつ慣れることはできる。しかし、社会化期にフィルターがつくられていないので、同種のすべてを仲間とは受け入れにくい。

社会化期の初期に母やきょうだいと離されてしまった子犬も同じである。同種と接触がないまま育ち、散歩デビューの時に犬を見て驚き、少しずつ慣れていく。しかし、人も犬も社会化期は取り返しがつかない重要な時期。適切な社会化期を過ごした者と同じようには慣れない。

このような問題を踏まえて、平成25年9月1日に改正動物愛護管理法が施行され、出生後56日を経過しない犬猫の販売が禁止された(施行後3年間は45日、その後49日)。

ボディランゲージ

ボディランゲージは、しぐさや視線を利用したコミュニケーションの手段である。犬は人のような言語がないため、ボディランゲージが発達したが、特異的に長けているわけではない。実は人も同じようにボディランゲージを行う。ただし、人は言語が発達しているのでコミュニケーションは言語に頼りがち。犬に話しかけることもコミュニケーションのひとつだが、一方的にならないように、犬のボディランゲージから意図を読み取れるように心がけたい。

群れではなく家族

人とオオカミはほ乳類の中ではまれな一夫一婦制。オオカミは父と母と子で構成された家族群をつくる。子は大人になってからも、パートナーをつくって違う家族をつくるまでは家族群に残る。父はリーダーやボスというより、お父さんのような存在。年齢も高く狩りの経験も多いので、父としてリスペクトされた。これらの関係性も人の家族と似ている。

人の祖先もオオカミも、獲物を獲るために危険をおかしていた。コミュニケーションを図れる信頼関係が重要だったので、家族群という構成が最も適していたと考えられる。

一方、人為的に集められたオオカミは群れで序列をつくった。これは人の会社と同じように、序列がなければ維持が難しかったためである。社会性の高い動物種だからこそ、本来の家族群とは異なる集団で群れをつくり、生活することができた。この人為的な群れの観察によってリーダーやボスなどの誤った知識が広まり、犬の訓練や飼い主との関係に影響を及ぼしている。動物行動学の発展により、今後正しい知識が広まっていくはずだ。

 

動物種が異なるから共存できる

人同士でも互いを理解することは難しい。ましてや動物種が異なる犬に人の常識を当てはめ、擬人化していれば、「なんで?」と疑問が湧くばかり。犬は人の常識を知らない。まずはそれを飼い主が理解するべきだ。

動物種が異なるからこそ、共に暮らせるともいえる。犬はくよくよしない、ねたまない。「隣の家のごはんの方がおいしそう」「飼い主を交換したい」と思わない。今を楽しく生きる犬と、家族としてこれからも暮らしていこう。
 
関連記事:何が違う?どう違う?犬と人の真・常識【基礎編】
 
Shi‐Ba vol.79『何が違う?どう違う? 犬と人の真・常識』より抜粋
掲載されている画像は全てイメージです。

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