【誤飲・熱中症・感電】愛犬の命を救う。もしもの時の応急処置講座

いざという時、飼い主が行ったほうがよい応急処置について、症状別に詳しく解説!

 

呼吸と心拍がない

【犬の様子】
・呼吸をしていない
・心拍と脈拍が 確認できない

【応急処置に役立つモノ】
・手鏡、 コンパクトなど

心肺停止に陥ったら即座に蘇生処置を行って

何らかのアクシデントで心肺停止の状態に陥った時、飼い主がその場ですぐに心肺蘇生を行えば命が助かることがある。いざという時のために、心臓マッサージと人工呼吸をマスターしておくと安心だ。

心臓マッサージは犬の体を横にして行う。ある程度の圧迫で行わないと、血液が循環しないが、強く行うと肋骨が折れることがあるので、加減が大切。

男性の場合は心臓の下に手を入れて、片手で圧迫するとよいだろう。力のない女性は、両手で心臓を押してマッサージを行うこと。

心臓が動いていない犬は、呼吸も止まっているため、心臓マッサージと一緒に人工呼吸を行う必要がある。二人いれば、それぞれ心臓マッサージと人工呼吸を、息を吹き返すまで続ける。一人しかいない場合は、心臓マッサージと人工呼吸を15秒おきに交互に繰り返そう。

心臓が動いていて呼吸がない場合は、人工呼吸を一分ほどやって、それでも自発呼吸をしない場合はもう一度繰り返す。その時にまだ心拍があるか確認し、止まっていたら心臓マッサージも一緒に行う。心肺停止状態になったら、一刻も早く蘇生措置を行わないと手遅れとなるので、躊躇せず行えるように心がけておきたい。

呼吸を確認

手や鏡をかざしてCHECKを!
呼吸の有無は、胸の動きや、口元で呼吸音が聞こえるかどうかで確認できる。口元に手をかざして、息をしているかをチェックしてもOK。ただし、微弱な呼吸だとわかりにくいので、その場合は鏡などガラスを鼻の近くに当てて、表面が曇れば息があるのがわかる。

心臓マッサージと人工呼吸

両方しっかり行おう!
犬を横向きで寝かせて心臓マッサージを行う。男性は心臓の下に左手を当て、右手で心臓を上から押していき、力のない女性は両手で上から心臓を押していく。心臓マッサージは10秒間に10~15回が目安。人工呼吸は鼻を口でくわえて息を吹き込み、1分間に15~10回が目安。心臓マッサージと人工呼吸を交互に行う。

人間用の救急講座がオススメ
ペット用の応急処置の講座を探すのは大変だが、人間の救急救命の講座は全国の自治体で定期的に行われている。まずは人間の講座に通って心臓マッサージや人工呼吸など、応急処置の基礎を身につけておけば、自分の家族に何かあった時に役立つだけでなく、ペットの救命にも応用することができる。興味を持ったら消防署のHPをチェックしてみよう。

 

熱中症

【犬の様子】
・グッタリしている
・パンティング(舌を出してハアハア)している
・体温が高い

【応急処置に役立つモノ】
・体温計
・水
・扇風機や団扇

気化熱でゆっくり熱を下げて

犬の体が熱くなっていたら、熱中症にかかっているかもしれない。まずは熱を測り、体温が高い時は、熱中症なのか発熱なのかを見極めることが大切だ。

感染症にかかって発熱している場合は、あまりパンティングをしない。熱中症の場合はパンティングをしている。感染症の場合はあまり体を冷やさないほうがいいが、熱中症は外気の影響によって体温が上昇しているので、熱を下げる必要がある。

犬がハァハァとパンティングをしていて、明らかに熱中症の症状であるなら、体温を下げる処置を行うこと。

意識がある時は、体を濡らして扇風機を当てたり、団扇で仰ぐなどして、気化熱で体温を下げるのがベスト。比較的元気なら、保冷材を首に巻くのもおすすめ。

絶対にやってはいけない方法としては、いきなり冷たい水風呂に入れたり、氷水をかけて冷やす行為。急激に体を冷やして体温が下がると、血管が収縮して多臓器不全を起こすことがある。その結果、犬がショック状態に陥り、死に至るケースもある。急激に体を冷やすのではなく、水で濡らしたあと、気化熱で熱を下げるようにしたい。

体温を測る

ペット用体温計を常備しておこう
熱中症にかかると、体温が上昇し、激しくパンティングを行うようになる。日頃から愛犬の体温を測っておき、健康なときの体温を知っておくことが重要。通常、検温は肛門で行う。普段より熱が高ければ、熱中症にかかっている可能性があるので要注意。

気化熱で熱を下げる

扇風機や団扇を活用しよう
冷水をずっとかけて熱を下げると、犬がショック状態に陥る危険性あり。熱中症にかかったら、体を水で濡らした後、扇風機や団扇を使って気化熱でゆっくりと熱を下げていく。意識がしっかりしているなら、保冷材をタオルで包み、首に巻くのも効果的。

 

何もせずに動物病院へ行くべきケース

応急処置が困難で、何もせずにすぐさま動物病院へ連れて行ったほうがいいケースを紹介。速やかに獣医師に適切な処置をしてもらおう。

(1)耳に異物が入った
普段から耳に触れ慣れているおとなしい犬で、耳の入り口付近にある場合はピンセットなどで取るのはOK。ただし、異物が耳に入ると痛さのあまり犬が暴れることがあり、その状況で異物を取ろうとするのは危険。異物を取ろうとして逆に奥に押し込んでしまうおそれがある。耳に異物が入っても緊急性は低いため、できる限り動物病院で処置を行う。耳鏡でどこに何が入っているか確認したうえで、適切な方法で異物を除去してもらおう。

(2)激しい下痢と嘔吐
犬の意識がなくて嘔吐している状況であれば、窒息したり誤嚥する危険性があるため、吐物を取り除くことが必要となる。ただし、意識がある状況で嘔吐しているのであれば、何もせずにすぐに動物病院へ連れて行くこと。下痢も応急処置で止めることができないため、直ちに動物病院へ行くしかない。基本的に薬など内科治療で回復していくため、激しい下痢をしていたら、すぐに動物病院で治療を始めよう。

(3)薬物や毒物を誤飲した
殺虫剤や洗剤など、犬が口にすると危険な毒は山ほどある。人間用の薬も犬には量が多すぎて、中毒症状を起こすおそれが。家の中だけでなく、外にも除草剤などの毒が潜んでおり、寒い地方では不凍液も危険だ。毒の種類によって犬が泡を吹いたり、痙攣をおこしたり、症状はさまざま。誤飲をしたら、すぐに吐かせる処置が必要となるため、一刻も早く動物病院へ連れて行こう。

(4)痙攣や発作を起こした
犬が突然痙攣したり、発作を起こしたら、すぐに動物病院へ連れて行くこと。犬を強く揺さぶることで発作を助長したり、泡を吹いている時に口に手を入れると噛まれる危険性があるためNG。なるべく犬を刺激しないようにして、病院へ連れて行こう。てんかんと他の痙攣や発作を区別するのは難しいが、てんかんと診断されたら薬で症状をコントロールできる。発作中に高い場所から落ちるなどの2次被害に気をつけ、病気と上手く付き合っていこう。

(5)交通事故に遭った
交通事故で心肺停止状態になっていたら、蘇生を行ってから動物病院へ連れていく。心臓が動いていて、息をしていれば、そのまますぐに動物病院へ。特に外傷がなくて元気そうでも、全身打撲や内臓を痛めている可能性があるため、動物病院に連れて行きレントゲン等の検査を行って異常がなかどうか調べておきたい。診断で特に異常がなくても、数日後に具合が悪くなる可能性もあるため、1週間は油断しないようにしたい。

 

虫に刺された、ヘビに噛まれた

【犬の様子】
・虫は傷跡が1つ、ヘビは傷跡が2つ、時に出血が見られる
・刺された場所が腫れる

【応急処置に役立つモノ】
・ステロイド入りの塗り薬

外用薬を塗る

刺されたところに外用薬を塗っておこう
ハチに刺されると、皮膚が腫れてくる。消炎系の塗り薬があれば、取り急ぎ刺された箇所に塗っておくと◎。山など自然が多い場所に行く時は、消炎系の外用薬を携帯しておくと安心だ。

毒ヘビはかなり危険だが、ミツバチも集団で刺されるとショック死することがあるため、様子見せずにすぐに動物病院へ連れていこう。

レジャーで自然の多い場所に出かけると、虫に刺されるケースも多い。ダニやノミは事前に予防しておくことが重要となってくるが、ハチに出くわして刺されてしまう危険もある。

ミツバチなどに刺された場合は、消炎剤系の外用薬を塗るとよいだろう。リンデロンなど、ステロイドが入っているものがおすすめ。動物用の外用薬がなければ、人間用を塗っても問題ない。

また、山ではヘビに遭遇することも。毒ヘビに噛まれたら命にかかわり、応急処置も難しい。ヘビが出るような危険な場所になるべく近寄らないように心がけたい。

 

感電した

【犬の様子】
・突然倒れる
・意識がない

【応急処置に役立つモノ】
・ゴム手袋
・静電気除去グッズ

飼い主の安全を確保してから応急処置を行うこと

犬がコードを齧って感電する事故は時折発生する。感電すると、電気は体を通って抜けていく。

例えば、コードを噛んで感電し、電気が前足から抜けた場合は、口や前足をヤケドしても、命に関わることはない。しかし、後ろ脚から抜けると心臓を通るので、ショックで心臓が止まってしまう。その時、飼い主が犬の体を触ると、感電してしまう危険がある。

また、犬が失禁した場合、おしっこに触れても感電する恐れが。まずはブレーカーを落として電気を断ち、ゴム手袋をはめてから心臓マッサージなど応急処置を行おう。

感電時に行うこと

電気を断ち、安全な状況を確保する
犬が感電した時、すぐ体に触れるのは危険。まずはブレーカーを落とし、犬が噛んでいたコードのコンセントを抜いて、電気を断つことが重要。犬の体に帯電している可能性があるので、直には触れずにゴム手袋をはめたり、静電気除去グッズを使って応急処置を。

 

誤飲をした

食道や気管につかえて呼吸困難な時は緊急事態!

異物を飲み込んでも、喉につかえずに胃まで落ちている状況であればまずは動物病院へ連れていく。状況に応じて動物病院で吐かせる処置を行ったり、場合によっては内視鏡や胃切開で取り除く。しかし、横隔膜より手前の食道や気管で詰まった場合は、呼吸が圧迫されて窒息死する危険性がある。このような緊急事態では、逆さづりにして異物を吐かせる応急処置で命が助かることも。

【犬の様子】

◇食道の場合
・えずいて苦しそうに首をのけぞらせる
・泡を吹く
・吐く

◇気管の場合
・泡を吹く
・もがき苦しみのたうちまわる
・舌の色が紫色になる
・意識がなくなる
・白目をむく

サイドを押す

逆さにして体の横側を押す
食道や気管に異物が詰まって呼吸困難に陥り、意識がなかったり、意識が薄らいでいる状況であれば、逆さにして体のサイドを押す。肺を圧迫されることによって、食道も圧迫されて異物が口から出てくることがある。

逆さづりにする

下半身を持って上下に振ってみる
呼吸困難で意識がない状況の時は、逆さづりにして犬の体を振ってみる。ただし、逆さづりは落下するおそれがあるので、あくまで自己責任で行う。意識がある場合は犬が暴れて危険なので行わないこと。

 

緊急時には焦らず冷静に応急処置を行いたい

愛犬の身に何かトラブルが起こった際は、すぐ動物病院へ連れていくことが大切。しかし、一刻を争う緊急事態では飼い主の応急処置が、犬の生死を左右することになる。

そんな時、飼い主がパニックに陥ってしまうと、上手に応急処置ができなかったり、犬に噛まれるなど二次被害を被る危険がある。焦る気持ちはわかるが、愛犬の命を救うためには、どれだけ冷静に状況を観察し、適切な処置ができるかにかかっている。

今回は応急処置の基礎を紹介したが、いざという時のために信頼できる獣医師を見つけておくことも必要だ。かかりつけの獣医師であれば、緊急の電話をした時に、電話口で応急処置のアドバイスをしてくれるかもしれない。

また、人間には119番があるが、動物の場合はないため、かかりつけの動物病院だけでなく、24時間必ず繋がる緊急時の動物病院を調べておくとさらに安心だ。動物病院に連れていった際は、愛犬の身に何が起こったか、どんな応急処置を行ったか獣医師に正確な情報を伝えることが、適切な処置をしてもらうためには重要である。

緊急時に落ち着いていられるためには、日頃からシミュレーションを行っておくのが理想的。応急処置のトレーニング自体は難しくても、日頃から心拍を測ったり、心臓の位置を把握しておくだけでも、いざという時に心強いはず。

【外傷・ヤケド・骨折】愛犬の命を救う。もしもの時の応急処置講座

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PE・CHA vol.19『いざという時のために知っておきたい救急・病気・医療のこと ピンチの愛犬を救え!』より抜粋
※掲載されている写真はすべてイメージです。

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