犬びより

もっとも多い基本色!より良い毛色と形を求めて……とことん赤柴!

2018/06/01

日本犬の中で多数を占める柴犬の中でも、最も多い毛色が赤毛である。今から100年以上前、どこにでもいた赤毛の犬が日本犬の危機を救い、繁栄に導いた。日本犬の代名詞ともいえる柴犬の赤毛に刮目せよ!

 

赤柴と他の犬種との比較

柴犬の毛色
柴犬の被毛色は4色。赤毛、黒毛、胡麻毛、白毛である。ごくまれに甲斐犬のような虎毛の犬が生まれることもある。日本犬保存会では、日本犬の小型と認めて被毛色に虎と記載した血統書を発行している。ただし、柴犬とは認めていない。

 
他の日本犬の赤との違い
日本犬種の被毛色の規定は柴犬と同じ色である。しかしながら、近年の秋田犬の中には、正面から見た場合、頭の上部にのみ色があり、下部はほぼ白い犬もいる。その他、蓑毛の部分が長く寝ている(開立不足)犬に違和感も覚えている人もいるようだ。

 
洋犬との赤との違い
日本犬も洋犬も赤みのある被毛色を「赤」や「レッド」と表現する。濁りがなく鮮明な色であることを表現したものであろうと推測される。柴犬の被毛色の特徴は、表毛と下毛からなる美しい濃淡である。この微妙な色合いが犬をより品良く、力強く見せている。

 

赤柴の歴史

柴犬の祖先と考えられている犬の歴史は、1万年以上前までさかのぼることができる。その頃から赤毛が存在していたのか、実は明らかになっていない。当時の犬骨から被毛は失われ、銅鐸に描かれた犬から被毛色は判別できない。

平安時代以降の絵巻物などに、赤毛をはじめさまざまな被毛色の犬が見られるようになる。赤毛は現在の柴犬の8割を占めるともいわれるが、かつてはバラエティに富んでいたようだ。

多くの被毛色の中から赤毛が優勢になった理由は、日本犬の保存活動が大きく関係している。明治時代に市井の日本の犬が激減したため、大正時代から保存活動が始まった。文明開化の影響で欧米の犬種がもてはやされたが、それが落ち着き、民族意識が芽生えたのだろう。内務省にいた渡瀬庄三郎氏が「日本犬」という言葉を初めて唱え、斉藤弘吉氏とともに保存活動を先導した。

彼らは江戸時代生まれの高齢者の記憶に残る犬の姿形や被毛色を頼りに、残った日本犬の小型を各地から集めた。彼らは主に山村で猟犬として用いられた犬たちで、赤毛が多かった。その理由は、猟師が山野で目立たぬ赤毛を特に好んだためといわれている。集められた赤毛は骨格や体質ともに優れた犬が多く、現在に続く柴犬の礎となった。
 

毛色のしくみ

・赤柴の尾

最も表毛が長い部位。尾は上部にあるが実は下部の腹から続く裏白のところ。かつて先端3分の1は色があっても許容されたが、現在は先端まで白い方が望ましい。

・赤柴の尻
尾と同じく腹部から続く裏白の部位。肛門は健全の目安である色素がわかりやすい。写真のように黒々とした犬は希少であり、他の部位にも濃さが現れている。

・赤柴の背中
最も赤毛が鮮明なところ。被毛質がしっかりしているものは開くように立つ。警戒した時に立つ表毛は蓑毛と呼ばれ、他よりも長い。

・赤柴の腹部
裏白の部位。被毛は短くてもしっかり生えている。被毛質が良い犬は下腹部や陰茎まで覆われている。被毛質が良い犬を選ぶ時には腹部がひとつの目安になる。

・赤柴の肉球
色素が現れる部位のひとつ。いずれの被毛色であっても黒もしくは薄いピンク。四肢を支える力強さと弾力性を備える。足裏の毛は裾ぼけから続く白に近い色。

・赤柴の爪
色素が現れる部位。日保では黒もしくは白と定めている。濁りがある飴色の爪は飴爪。異血の影響の現れとして好まれない傾向がある

・赤柴の差し毛
根白ではない一色の毛を差し毛あるいは飛び毛という。赤毛の場合は黒一色の毛であることが多い。少ない方が良いが、程度の問題で多すぎなければ許容される。

・赤柴の耳
耳の縁は赤毛で縁取られ、内側は白毛が生えている。内側の毛が長いものは異血の影響が考えられ、好ましくないとされている。

・赤柴の目

目縁は色素が現れるところ。黒くはっきりしたアイラインが良い。ただし、その周りの被毛目縁を際立たせるためにはうっすらと白い。

・赤柴の鼻
被毛色に合った鼻色と定められている。赤柴は黒が望ましいが、まれに赤みがかっていることもある。四角く張って大きい鼻は角鼻と呼ばれ、特に力強さがある。

・赤柴の口
唇は真一文字に黒い色素が現れる。いずれの被毛色も唇、歯ぐき、口蓋の部分も黒い方が良い。色素が濃い犬は被毛色も鮮明である。

・赤柴の頭

硬い表毛と綿のような下毛の二層で構成されている。赤く見える表毛は根白と呼ばれる色で、毛先は濃く根元は薄い。毛の一本に至るまで繊細な色を備えている。

・赤柴の足
体の下部に行くにしたがって、被毛色が薄くなり、足先ではほぼ白くなっている。裾に向かってぼけていく裾ぼけが望ましい。この濃淡は味わい深い魅力のひとつである。

・赤柴の被毛質
硬い表毛と綿毛の二層で構成されている。赤く見える表毛は根白と呼ばれる色で、毛先は濃く根本は薄い。毛の一本に至るまで繊細な色を備えていることに注目したい。
 
関連記事:裏白、根白、袴毛ってなに?知っておきたい犬の用語集・被毛編

 

芯の強さとたくましさを被毛で表現

赤柴は鮮明な赤毛と裏白のコントラストが重要。柴犬の赤毛は冴えみのある赤。黒ずんだレンガのような色や薄くぼけた色は、日本犬の赤毛にふさわしくないと思う者もいる。

しかし、時には差し毛が出ることもある。特に黒い差し毛は色素の濃さが影響している可能性もある。1本でも許容しないというのは狭量。ただし、被毛色が濁って見えるほど多い差し毛は、赤としては不完全、胡麻としては足りない。許容は程度問題と考えた方が良い。また、被毛色が優れていても、骨格や色素などの健全に関わるものに難があってはいけない。

健全な犬体に美しい被毛質と被毛色をまとった柴犬。日本犬の内面と外見の魅力、つまり芯の強さとたくましさを一体となって見せるために、被毛が大きな役割を果たしている。

 

もっと知りたい!赤柴Q&A


 
Q.被毛の手入れはどのように行うべき?

日々のブラッシングは新陳代謝を良くする効能があり、皮膚の血行が促進されて、本来の美しい被毛色が出るようになる。開立する被毛質を意識して、普段は獣毛ブラシで逆毛を立てるようにとかそう。春は換毛期と呼ばれ、下毛がほとんど抜け落ちる。被毛の風通しが良い状態で熱い夏を迎えるためだ。この時に古い下毛をしっかり抜いておくと、冬に向けて新たな良い下毛が生えてくる。スリッカーを使うと良い。

 
Q.被毛色が茶色い犬を赤毛と呼ぶ理由は?

茶色に見える被毛色を赤と呼ぶ習わしは、各国共通のものである。さまざまな犬種のスタンダードにも定められている。日本犬の場合、独自の和名色が関係している。

『鷹犬目利き』という古文書では『黄』と表現されているが、これは数ある和名色の中でも赤みがかった黄色を指すよう。段ボールのように濁った黄色と混同されないように、『赤』と表記したことが考えられる。

ラブラドール・レトリーバーなどの洋犬に見られるイエローと、日本犬の赤毛は異なる。被毛色の微妙な濃淡が、和名色のように独特で味わい深いことが特徴といえるだろう。日本犬は色合いを鑑賞できる犬種なのだ。

 

異血の影響を除き血統を守る

日本犬は被毛色と被毛質について大変厳しい規定がある。被毛には異血の影響が最も顕著に現れることが理由。日本犬を保存していくにあたって特に注意してみること、という先人の戒めだろう。美的感覚の問題ではなく、日本犬の純粋性に関わること。日本犬を末永く守るために、異血の影響は除かなければいけない。

かつて保存活動の過程で他犬種との交雑があった。その遺伝の影響は被毛に出やすいため、注意深く見ることが健全な日本犬の育成につながる。被毛に日本犬としての特質特徴を持つべし。この一文が柴犬を日本犬たらしめ、血統を守っている。

現在、赤柴は日本犬の代名詞ともいえる大勢力を築いている。古来、優れた素質を受け継いだ犬が多かったのだろう。日本犬の保存活動のから100年が経とうとしている今日、かつての危機は遠い昔である。日本犬の繁栄は赤柴なくして語れない。どこにでもいる赤毛の犬と向き合い、刮目して見よ。いつか極めたといえる日が来るかもしれない。

 
関連記事:柴犬の中で最も多い『赤柴』。毛色の変わり方や疑問を徹底追求!

 
Shi‐Ba vol.80『柴犬中でも最も多い基本色 赤柴を極める!』より

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